愛車に好きなイラストやデザインを施すことができる「カーラッピング」は、とても人気があります。
しかし、車の見た目が大きく変わることから、車検に通るのか不安になる方もいるでしょう。
カーラッピング自体は車検を受ける上で特に問題はなく、道路交通法にも引っかかりません。
しかし、ラッピングのやり方や内容によっては、違法改造と見なされたり著作権法に引っかかったりする恐れがありますので、事前に確認が必要です。
カーラッピングしても車検は通る
カーラッピングそのものは通常なら車検にも通ります。ただし、内容によっては「違法改造車」と見なされたり、その他の法律に引っかかったりする恐れがあります。
違法改造車と見なされる可能性があるのは、フロントガラスにステッカーを貼ったり、透過性が落ちるような貼り方をしたりした場合です。
このように保安基準を満たさない形でラッピングをすると、車検にも通らないでしょう。
また、引っかかる恐れがあるその他の法律としては、刑法175条や著作権法のほか、広告・宣伝に関する各自治体のルールなどが考えられます。
ラッピングする際はこれらのルールに違反していないか確認しましょう。
カーラッピングとは?
はじめにカーラッピングについて説明します。
カーラッピングとは、インクジェットプリンターで専用のフィルムに色や図柄などをプリントし、ファッションや宣伝・広告を目的に車のボディへ貼りつけるというものです。
塗装だけでは細かい装飾・加工は困難ですが、ラッピングフィルムを使うことによって、好みのアニメキャラクターのような細やかなイラストを車体にデザインすることも可能になりました。これは車の一部分だけでも可能ですし、車全体を丸ごとでも可能です。
また、ラッピングフィルムには様々な種類があり、好みのカラーや質感を選ぶことができます。基本的には装飾用なので、ボディを保護する効果はきちんとしたコーティングに比べると劣りますが、中には飛び石等による傷程度なら防げる素材もあります。
飽きたり失敗したりしたら、フィルムを剥がすことで簡単に元に戻すこともできます。このような手軽さがカーラッピングの何よりの魅力です。
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カーラッピングの種類
主なカーラッピングの種類は以下の3つです。
- 車体の一部に施す「パーツラッピング」
- 全体に施す「フルラッピング」
- キャラクターや商品広告などを貼る「デザインラッピング」
それぞれの内容を以下で詳しく説明します。
車体の一部にフィルムを貼る「パーツラッピング」は、ボンネットやルーフトップなどを部分的に装飾することで、アクセントを付けたり雰囲気を変えたりするものです。貼る面積が小さいので、気軽かつお手頃に行うことができます。
パーツラッピングなら施工に時間がかからず、部位によっては初心者がDIYで行うこともできます。ちょっとしたアクセントによるイメージチェンジや他の車との違いを強調することを考えている場合には、おすすめの手法です。
「フルラッピング」は、好みの色やデザインのフィルムで車のボディ全体を覆うものです。ドアノブからミラーに至るまで施工可能で、ボディ全体を塗装する代わりにラッピングすると考えればいいでしょう。
例えば、車のカラーに飽きたり気に入らなかったりした場合などにおすすめです。全体の色を変えることで「車を生まれ変わらせる」効果が期待できます。
フルラッピング用のフィルムは厚みがあるため、ボディの保護効果も多少はあります。
3つめの「デザインラッピング」は、イラストや図柄などがプリントされたフィルムを車体に貼るものです。商品広告を貼りつけて、会社や店舗独自の宣伝用カーに仕上げることなどが可能です。
また芸術性を強調したものとして、アニメや、いわゆる萌えキャラなどのキャラクターのイラストを貼る「痛車」があります。カラーを変えるだけにとどまらず、車の雰囲気や個性を前面に押し出しつつ、車体を保護する効果も期待できます。
道路交通法上の問題はない
派手なデザインラッピングを施した車は、人の目を引くものです。
特に奇抜で大胆なイラストなどが貼られていると、「違法改造車ではないのか?」「何かの違反になるのではないか?」と考える方もいるかもしれません。
まず前提として、公道を走る車が取り締まりの対象になるかどうかは、国交省が定める「道路運送車両の保安基準」に反していないかが基準になります。
この保安基準を満たしてさえいれば、どんなに派手で奇抜なデザインのカーラッピングでも、道路交通法上の違反になることはありません。
ただし、後述しますが、フロントガラスなどにはみ出す形でフィルムを貼ってしまうと、違法改造車と見なされて道路交通法上に引っかかる恐れがあるので注意が必要です。
道路運送車両法上の問題もない(車検に通る)
カーラッピングを施した車で公道を走ってもなんら問題はありません。また、こうした車を車検に出しても、ラッピングそのものが原因で通らないということはないでしょう。
ただし、車検には通っても運転の仕方によっては取り締まりの対象になるのと同じように、デザインの内容などによって別の法律に引っかかることがあります。カーラッピングを施した車の合法性や違法性を考える場合は、他の法律との関連も知っておくべきでしょう。
また、ラッピングのやり方によっては「違法改造車」と見なされることもあります。車検ではなく道路交通法の管轄になりますが、車検の段階で注意や指示・改善が行われることがあるかもしれません。
また、ラッピングのやり方によっては「違法改造車」と見なされることもあります。この場合、道路交通法上の取り締まりの対象になる恐れがあるので、車検の段階で注意や指示・改善がなされるかも知れません。
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「改造車」として引っかかるケースがある
カーラッピングそのものは違法ではありませんが、ラッピングのやり方によっては「違法改造車」として道路交通法に引っかかることがあります。
取り締まりの対象となるケースや、自動車保険との兼ね合いなどについて説明します。
車には、場所ごとに貼ってはいけないものがあります。例えば、ステッカーなどをフロントガラスに貼ったりすると「違法改造車」と見なされて取り締まりの対象となります。カーラッピングで注意が必要なのはこの点です。
車の後部の窓ガラスなら問題ありませんが、フロントガラスや運転席・助手席のサイドウインドウにはみ出す形でラッピングすると、違法改造車と見なされ道路運送車両法違反になります。
また、これらの窓ガラスの透過性が70%未満になるような、濃いカーフィルムも違反です。
車のフロントガラスと運転席・助手席のサイドウインドウは、サンシェードやカーテンも含め、視界を妨げるものの設置が禁止されています。
改造車といっても、全てが違法になるというわけではありません。法律で認められた指定部品を使ってカスタマイズしたものや、構造変更の申請・登録を行ったものは違反にはなりません。
しかし、カーラッピングによって、前項で挙げたようにフロントガラスや運転席・助手席のサイドウインドウにステッカーなどを貼ったものは違法となります。こうなると取り締まりの対象になりますし車検も通らないでしょう。
車の違法改造については民事・行政上の処分はありません。ただ、6ヶ月以下の懲役か300,000円以下の罰金、さらに場合によっては改善措置を求められる「整備命令」、ナンバープレートや車検証の没収などの処分を受けることになります。
基本的に「違法改造車」は、保険会社が扱う自動車保険には加入できません。もし加入できたとしても、事故を起こした後で違法改造車だと判明すれば補償対象外となり、保険金が支払われない可能性があります。
カーラッピングについて言えば、普通のラッピングを施した車は問題ありません。しかし前項までで説明したような法律違反になるラッピングが行われていれば、やはり保険に入れないか補償対象外となる恐れがあります。
カーラッピングしただけの車なら違法ではないので、自動車保険に問題なく加入できます。
また、保険の加入は基本的に車検証などの書類手続きだけで済むので、違法改造車でも加入できることはあります。
ただし、事故などを起こしてその後の手続きの段階で違法改造車だったとバレれば、保険金が下りないこともあります。
保険会社によっては合法的な改造車でもこのような扱いになることがあるので、加入時は注意が必要です。
違法改造車と見なされるものでない限り、カーラッピングを施した車は自動車保険に入れますし、補償対象にもなります。
しかし、保険の商品内容によっては、ラッピングのフィルムやステッカーだけが損傷した場合は補償されないこともあります。
そのため、カーラッピングした車はどこまで補償してもらえるのか、詳しく確認しておきましょう。
車の付属品とは違い、ラッピングは装飾品にあたるので取り扱いはケースバイケースです。
カーラッピングで注意が必要な法律
カーラッピング自体は合法的なものですし、基本的に車検も通ります。
しかし、ラッピングのやり方によっては、車に関する法律とは別のルールに引っかかってしまったり、罪に問われたりしてしまう可能性もあります。
ここからは、カーラッピングで注意が必要な法律について紹介します。
先述したように、道路交通法や道路運送車両法の保安基準に違反するようなラッピングをしてはいけません。
ラッピングに限らず違法改造車と見なされうる形でカスタマイズすると、取り締まりの対象になる上、車検も通りません。
「わいせつ物」に該当する画像をラッピングすると、刑法175条に引っかかる可能性があります。
この場合のわいせつ物とはポルノ画像にあたるイラストや写真のことで、2年以下の懲役もしくは250万円以下の罰金が科されます。
わいせつ物と見なされるのは、基本的に「陰部」がはっきり認識できるデザインのものです。実際の「痛車」にもこの点に非常に気を使っているものが多くあり、そうしたものは車の窓やパーツによってうまく隠すといった方法を取っています。
また要件として、わいせつなラッピングを施した車で「公道を走ったかどうか」は関係ありません。そのような車を、青空駐車場など不特定多数の人の目につくところに駐車しているだけでアウトです。
次に、カーラッピングをする上で注意を要するのが「著作権法」です。
著作権とは、キャラクターなどの著作物からもたらされる報酬が、その著作者に適正に与えられることを目的に定められた法律上の権利となります。
そしてその著作権を守るための法律が著作権法です。以下で説明する通り、カーラッピングで特定のキャラクターの図柄などを無断使用すると、著作権侵害と見なされる可能性があり、もしそう認定されれば刑事罰を受けることもあります。
では、ラッピング用のフィルムを印刷しただけで違反となるのか、それとも車を運転した段階で違反になるのか疑問に思うかもしれません。
また、いわゆる「著作物の私的使用」についてはどう考えるといいのでしょう。詳しく説明します。
ゲームやアニメのキャラクターをデザインしてカーラッピングを施す場合は、著作権法に注意が必要です。こうしたキャラクターの著作権は制作会社や製作者に属するので、権利侵害となる可能性があります。
実際のところ、こうした「痛車」が著作権違反で訴えられたケースはほとんどありませんが、痛車を制作した業者が摘発されたという事例は存在します。
もし著作権の侵害が認められると、民事・刑事の両方でペナルティが課せられるでしょう。具体的には、民事では侵害行為の差し止めや損害賠償などの義務が発生します。また刑事では10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金など、とても重い罰則となっているので注意が必要です。
著作権侵害となるのは、著作物を無断使用してステッカーやフィルムを作成する行為です。
ステッカーやフィルムを使って車にラッピングを施すことや、完成した車で公道を走ることは著作権侵害とは関係ありません。
つまり、著作物を無断使用したステッカーやフィルムを制作しただけでアウトですし、またイラストに改変を加えてもいけません。
前述した、痛車の制作者が摘発された例があるというのは、「制作」について罪を問われたということでしょう。
また、著作物の取り扱いについては、「私的使用のための複製なら著作権侵害にならない」とよく言われます。実際その通りですし、痛車などは個人が楽しむものだと言えるのですが、公道を走っていることで私的使用とは判断されない可能性もあります。
好きなキャラクターや図柄をラッピング用に使用したい場合、著作権の侵害にあたらないか事前に調べておきましょう。
こうした著作物の利用についてのガイドラインは一律ではなく、著作権者によってその内容や線引きも様々です。
まずはそのキャラクター・図柄に関わるWebサイトや著作権者のホームページを確認してください。場合によっては、カーラッピングの作成を許可していたり、痛車に使う場合のガイドラインが示されていたりすることがあります。
痛車の作成のためには、こうしたガイドラインに沿ってキャラクター画像の使用許可を得る必要があります。例えば運転免許証など身分証明書の呈出を求められたり、完成した痛車への著作権表記が必要になったりすることもあるかもしれません。このあたりの手続きは様々です。
完成した痛車の写真の送付を求められるといったこともあるかもしれないので、事前に確認しましょう。
各自治体のルール
カーラッピングを施した車の利用にあたり、各自治体のルールに従わなければいけないこともあります。
宣伝・広告を目的とする場合は、まず各自治体へ問い合わせて宣伝に関する規則を確認しましょう。
カーラッピングを活用した車体広告を作成する場合は、実際に宣伝・広告を行う市区町村のルールに従うことになります。
地域の役場や役所で、車での広告について手続きを知りたいと問い合わせれば、すぐに教えてくれるでしょう。
例えば、東京都の会社がカーラッピングによる車体広告を活用した宣伝を行いたいとします。もしも、本社は東京だが支社は全国各地にあるという場合は、実際に宣伝や広告を行う支社の住所を管轄する自治体のルールに従うことになります。
許可を得られたとしても、さらに細かい条件が決まっていることもあります。一例として、カーラッピングは問題ないが車の屋根に看板などを設置してはいけない、などのケースです。
許可を得た自治体の中で、カーラッピングを活用した宣伝や広告が認められてています。そのため、他の自治体では通用されません。
宣伝の許可を得た自治体の外に出る場合は、別途その地域でも改めて許可を得る必要があります。
そして、こうしたルールは自治体ごとに異なるので注意が必要です。例えば、ある地域で車体広告に使うことができたカラーが、他の自治体では消防車や救急車と見間違えるような色はいけない、というルールに引っかかって使えないということもあります。
また、地域によっては、非営利目的の場合は許可申請はいらない場合もあるなど、規則上の線引きが困難なケースも存在します。
自力で判断することが難しい場合は、まずは役所などで確かめてください。