アウトドア人気により、キャンピングカーを所有したい方も増えています。しかし、キャンピングカーは高額なので、乗用車や貨物車をキャンピングカー仕様にDIYで改造するというケースも珍しくありません。
キャンピングカーをDIYする場合、車検に通るかどうかが問題となってきます。そこでキャンピングカーをDIYした場合、車検に通る仕様の条件や車検の手続き、依頼先など知っておくと便利な情報を教えますので、参考にしてみてください。
車のナンバー分類
車のナンバープレートは、車種によって分類番号があります。
普通乗用車は3ナンバーで、3もしくは30~39、300~399のどれかがナンバーに割り当てられており、一部の人気ナンバープレートの場合はアルファベットが用いられていることもあります。
普通貨物車は1ナンバー、軽乗用車や小型乗用車は5もしくは7ナンバーです。軽貨物車や小型貨物車は4もしくは6ナンバーとなります。
一般的なキャンピングカーはと言うと、8ナンバーになっていることが多いです。8ナンバーは特殊用途自動車に分類されており、救急車やパトカーなどの緊急自動車、給水車や消防車、自動車教習所で使われる教習車といた法律で規定された用途で用いられている自動車が含まれます。
キャンピングカーは宿泊できる施設を備えた車なので、この特種用途自動車に含まれています。
8ナンバーのキャンピングカーは大掛かりな改造が施してあり、構造用要件を満たし特種用途自動車と認められた車です。8ナンバー以外にも車体の大きさや排気量により、キャンピングカーとしてナンバーが次の通り分類されています。
車体の長さ4.7m、幅1.7mで高さ2m以下、排気量2,000㏄のうち、どれかを超えている車は1もしくは3ナンバーです。これらの値の全てが基準以下の場合は4または5ナンバーとなります。
キャンピングカーと言うと、かなり大きな重装備の車をイメージする方が多いかもしれません。しかし、小型の軽自動車でも仕様によってはキャンピングカーとして登録し、使用することが可能です。
登録ナンバーが異なると、自動車税や自動車重量税、自賠責保険料などのいわゆる法定費用に金額差が生じます。8ナンバーのキャンピングカーの方が優遇され、乗用車や貨物車をDIYしてキャンピングカー仕様にするよりも法定費用が安い傾向にあります。
ただし、法定点検に出すとキャンピングカーは点検箇所や整備箇所も多くなり、実質乗用車などと比べるとメンテナンス費用が割高になることが多いです。また、任意保険に加入できたとしても保険料が高いため、トータルで考えると8ナンバーのキャンピングカーの方が維持費が安くなるというわけではありません。
キャンピングカーが8ナンバーを取得するには、構造要件を満たし特種用途自動車として認められる必要があります。
構造要件は他にも細かな要件が決まっており、全てをクリアしていないといけません。
キャンピングカーの車検では、エンジンルームなど通常の車検内容で検査が進められます。それに加えて、車内の設備がキャンピングカーの構造要件をきちんと満たしているか厳しくチェックされていきます。
8ナンバー以外のキャンピングカーに関しては、車検内容は一般的な乗用車や貨物車などと同じです。キャンピングカー仕様となっていても、車の構造が保安基準を満たしていれば問題ありません。
エンジンルームやブレーキ、灯火類やタイヤなどのチェックを順次行います。自家用車の場合、車検は新車購入から3年目に初回、以降2年ごとです。
しかし、キャンピングカー仕様の貨物車の場合は車検の頻度が違います。普通貨物車の1ナンバーと小型貨物車の4ナンバーは新車購入から2年で初回車検、以降1年ごとに車検を受けることになるので間違えないようにしましょう。
DIYしたキャンピングカーも条件を満たせば車検に通る
普通貨物車などをキャンピングカー仕様にDIYした場合、問題となるのが車検です。車検は国が定める保安基準を満たしていなければ、不合格となってしまいます。
また、8ナンバーに登録されたキャンピングカーをDIYする場合も、構造要件を満たさなければ車検を通すことができません。8ナンバーのキャンピングカーの構造要件は、就寝設備の数やや広さ、水道、炊事設備の広さなどが細かく決められています。
来るべき車検に備えて、キャンピングカーをDIYする前に8ナンバーのキャンピングカーの構造要件などをきちんと把握しておくことが大事です。
8ナンバーのキャンピングカーの構造要件として挙げられるのが、就寝設備の数です。乗車定員人数の、3分の1以上の寝床が備えられていなければなりません。
計算上の端数は切り上げとなる点にも注意が必要です。例えば乗車定員が最大10名の場合、就寝定員は3.33人となり、小数点以下は切り上げになるので寝床は4人分は確保されていなけければならないのです。
乗車定員が3名以下の車であっても、大人用の就寝設備はすくなくとも2人分以上は必要とされています。ただし、就寝設備に関しては子供と大人でスペースの広さに関する規定が違ってくるので、注意しましょう。
備え付けられた就寝設備の状態や広さなど構造にも条件があります。ベットの上部は水平かつ平らでなければならず、大人が十分寝られるような耐久性のある作りになっていなければなりません。
ベットの長さに関しても、1人につき1.8m以上で幅0.5m以上は平面が連続している必要があります。また、ベットの上部から上に0.5m以上の空間がなければなりません。
この空間はそれぞれのベットにおいて必要です。ベットの上部に寝返りできる位の空間を作っておけば、より快適な睡眠が得られるという理由だとされています。
そして、ベットの短い方の辺から長い方の辺にかけて0.9mの範囲内なら、0.3m以上の空間があればよいとも決められています。
就寝設備の広さなどは大人用となっており、子供用の就寝設備として設置する場合は広さの制限が違うので注意しましょう。子供は大人よりも体が小さいので、省スペースで可能です。
就寝スペースは1人につき長さ1.5m以上、幅は0.4m以上と大人よりもやや狭い作りでOKとなっています。ベットの上部から上は0.4m以上の空間が必要です。
この空間は、大人用と同様にそれぞれのベットに必要となります。平らな面が連続していることという就寝設備の要件は、大人と同じです。
そして、ベットの短い方の辺から長い方の辺にかけて0.8mの範囲内なら、0.3m以上の空間があればよいとも決められています。
キャンピングカーと言っても車なので、就寝設備はもちろんのこと座席も必要です。基本的に、乗車装置の座席と就寝設備は一緒のものを使えないと決まっています。
ただし、条件を満たせば一緒にしてもよいとされています。それは、座席の座面や背あて部分を就寝設備とする予定で作られた場合です。
そしてもう一つ、座席の座面や背あて部分を就寝設備として使うとき、座面などの上部に平らな面が連続していることの2つの条件をクリアすればOKとなります。つまり、座席を最大にまで倒した際に、背面などがまっ平のフラットな状態になればよいということです。
通常の車の座席では背面が180℃にまで倒れない場合が多いので、フラットになる専用の座席を取り付ければ問題ないと言えるでしょう。
洗面台などの水回り設備に関しても構造要件があります。まず、10ℓ以上の水を溜めておくことができるタンクと洗面台などを設置していることです。
タンクから洗面台に水が流れるように設計されていなければなりません。つまり、シンクや蛇口、タンクから水を吸い上げるポンプが必要となります。
使った水を排水するためのタンクも必要です。排水タンクには歯磨きや調理などで使用した水を溜めておくため、水垢や食べかすなどが付着し不衛生な状態になって臭いが気になることもあり得ます。
こまめに洗う、殺菌するなどして衛生的に保つことも大事です。また、洗面台等は車内に設置してあり、外に出なくても使用できる場所、位置に備わっていなければなりません。
高さにも規定があり、車の床面から上に1,600㎜以上の空間が必要です。
料理を作るための炊事設備に関しても、広さや高さなどの規定があります。調理台として使うスペースは0.3m以上×0.2m以上の平らな面でなければなりません。
調理には火や刃物を使うので、火事やケガを防止するためにもスペースの確保が重要です。また、火を使うスペースの近くに燃えやすい素材があると危険です。
耐熱性や耐火性を有した作りになっている必要があります。また、近くに窓があるもしくは換気扇を配置し、すぐに換気できる環境を整えておかなければなりません。
炊事設備は洗面台と同世に車内の使いやすい場所に設置し、床面から天井まで高さ1,600㎜以上のスペースも必要となります。炊事設備に関しては車内という狭い空間に設置するため、車検でも厳しくチェックされます。
車検で不合格とならないように、要件をきちんと理解した上で設置することが大事です。
洗面台などの水道設備や調理台やコンロといった炊事設備と、水道設備や炊事設備を使うスペースは、上からの投影面積は0.5㎠以上は必要となります。投影面積というのは、この場合該当するスペースに対し、真上から光を当てたときにできる影の面積のことです。
また、水道設備の場合は水のタンク、炊事設備の調理台が座席や就寝設備などの他のスペースとはっきり分けられる構造になっていれば、取り外せるものでもよいとなっています。つまり、タンクや調理台は脱着可能なタイプでも問題ないというわけです。
車内のスペースが狭い場合は、調理台などを設置したままだと動きにくく、不便さを感じるでしょう。脱着可能なものなら、必要なときに取り付けて不要になったら外して収納すれば車内スペースを有効活用できるので効率的とも言えます。
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普通車や貨物車をDIYした場合、構造変更申請が必要
普通貨物車や軽貨物車などをDIYして改造し、キャンピングカーとして使うというケースもあります。
例えば、普通乗用車で乗車定員が7名の車で、キャンピングカー仕様のするために後部座席を取り外し就寝設備などを備えるなど改造を加えることもあるでしょう。
そうなると、本来の乗車定員7名が車に乗車できなくなります。車内の構造が変わってしまうため、「構造変更申請」をして車検における保安基準に適合させなければ車検は通りません。
構造変更申請は、運輸支局や軽自動車検査協会に車検証や構造変更申請書を提出し、1週間程度書類審査に時間がかかります。書類が通れば今度は車を検査場に持ち込み、保安基準を満たすかを検査します。合格なら車検証に「改」と付記されるので、公道を走行することが可能です。
キャンピングカーの場合、大規模な改造を行い改造変更車両として新たに登録し直すという方法もあります。ただし、改造変更を認めるために審査はかなりシビアなので難しいとされています。
普通乗用車などをDIYして、キャンピングカーとしての設備を備えるとします。座席を外してベットを備え付け構造を変えてしまっても、構造変更申請をせずに済む場合があります。
それは、ベットやテーブルなどを取り外し可能なものにしたケースです。通常は普通の乗用車として決められた乗車定員が乗車できる車として使い、必要なときに座席を取り外してベットをセッティングするといった使い方です。取り外しができれば、車検前に座席を戻せば車内の構造は変わりません。
一般的にベットやテーブルなどは車内に設置する際に固定すれば構造品とみなされるので、車内構造が変わった、つまり構造変更申請が必要になるというわけです。
簡易的なキャンピングカーでよいという場合は、脱着可能なDIYに留めておけば手続きなども楽です。ただし、走行中の振動などで、移動したり外れたりしないように確実に収納、固定しておかなければならないので注意しましょう。
キャンピングカーの車検依頼先
キャンピングカーの車検はディーラーやカー用品店など、通常車検を依頼する業者でも引き受けてもらえる場合があります。ただし、対応していない業者もあるので、近場で見つからない場合もあるでしょう。
また、引き受けてもらったとしても、キャンピングカーは構造が特殊であり、キャンピングカーの点検や修理などに慣れていない業者だと、DIYで改造した車両が保安基準を満たすか判断しづらい可能性もあります。
整備や検査自体にミスがあるとせっかく高いお金を払っても車検に通らなかったり、結局車検を通せないまま時間だけが経過してしまったりということにもなりかねません。
そのため、キャンピングカーの点検や整備、車検は専門店に依頼するのが無難だと言えます。専門店なら車検を通せる基準がわかり、かつ安全に使用、走行できるように整備してもらえるので安心だからです。
自作のキャンピングカーは車検に通る仕様にすることが大事
キャンピングカーをDIYする場合、まずは車検に通るような構造にすることが大事です。公道を走行する車両は車検に合格していないと法律違反となり、罰則が科せられます。
何より安全性が確保されていないので、思わぬ交通事故を引き起こすことも考えられます。特に8ナンバーのキャンピングカーの場合、構造要件が細かく決まっているのできちんと把握しておくと安心です。
DIYはしてみたいけれど車検に通るか不安な場合、事前にDIYの内容を専門業者に相談して、要件を満たすかどうかをチェックしてもらうといいでしょう。
普通車をDIYしてキャンピングカー仕様に変える場合、構造そのものを変えると構造変更申請が必要で手続きも複雑であり、素人では検査に通らない可能性もあります。必要なときに取り外して元の構造に戻せる作りにすれば、車検前に大掛かりな改修をしなくても済みます。
また、カスタマイズされた中古のキャンピングカーを購入するという方もいるかもしれません。この場合、構造変更が必要な作りなのか、必要な場合届け出がなされ検査に合格しているかも確認しておくべきです。
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