最近の車は電装品が多く、利便性の高まりを見せていますが、気をつけたいのは「バッテリー上がり」です。特にハイブリッド車は、異常がわかりにくく、ある日突然エンジンがかからなくなるケースも少なくありません。

しかも、従来のガソリン車と違い、ハイブリッド車はセルモーターを使わずにエンジンを始動するため、バッテリーの劣化に気づきにくいという特徴があります。そのため、気づかないうちに補機用バッテリーが弱り、突然のトラブルにつながることもあるでしょう。

この記事では、ハイブリッド車のバッテリー上がりに備えて知っておきたい「対処法」や「予防法」について解説します。

ハイブリッド車の補機用バッテリーはバッテリー上がりする

ハイブリッド車の補機用バッテリーはバッテリー上がりする
ハイブリッド車の補機用バッテリーには、鉛バッテリーが使用されているため、バッテリー上がりが起きるのです。鉛バッテリーの寿命は、一般的に2〜3年ほどとされています。

使用環境や頻度によっても変わりますが、「ハイブリッド車だから大丈夫」と油断せず、定期的な点検や交換を心がけましょう。

ハイブリッド車のバッテリーは2種類ある

ハイブリッド車には「駆動用バッテリー」と「補機用バッテリー」の2種類が搭載されています。

ここでは、それぞれの特徴について解説します。

駆動用バッテリー

モーター駆動やエンジンの始動を担うのが「駆動用バッテリー」です。このバッテリーには、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池が採用されており、高電圧・大容量・長寿命といった特性があります。

基本的に、日常的な走行で自然に充電される構造になっており、減速時のエネルギーを利用する「回生充電」によって効率的に充電されます。そのため、特別な充電器を用意して充電する必要はなく、一般的な使い方であれば交換もほとんど不要です。

ただし、プラグインハイブリッド車は外部充電が必要になるため、例外となります。

補機用バッテリー

一方、ハイブリッドシステムの起動や電装品に電力への供給を担うのが、補機用バッテリーです。こちらはガソリン車と同様の12Vの鉛蓄電池が使用されており、ハイブリッドシステムの起動、電装品の電力供給、駐車時のバックアップメモリーなどを担当しています。

この補機用バッテリーは、駆動用と違って寿命が短く、一般的には3〜5年ほどで交換が必要です。

搭載場所によってバッテリーの種類は異なっており、トランクルームや後部座席下などの車内に設置される場合には、酸霧やガスの発生を抑える「VRLA(制御弁式タイプ)」のバッテリーが使われます。

一方、エンジンルームなど車室外に搭載されるケースでは、従来のガソリン車同様、開放式バッテリーが採用されています。

駆動用バッテリーと補機用バッテリーに相互性はないの?
「バッテリーが2つあるなら、どちらかが上がっても、もう片方で助けられるのではないか」と考える人もいるかもしれません。しかし、残念ながらそれはできません。
駆動用バッテリーと補機用バッテリーでは、電圧が大きく異なり、互いに充電し合うことはできない構造になっているのです。そのため、どちらかが弱っていたとしても、もう一方が助けることはできません。
両者はそれぞれの役割を持って動作しているため、どちらか一方が機能しなくなると車全体の動作に支障をきたすこともあります。安心して車に乗るためには、定期的な点検が欠かせません。

ハイブリッド車もバッテリー上がりは起きる

ハイブリッド車もバッテリー上がりは起きる
「電気の力で動くから、バッテリー上がりとは無縁」と思うかもしれませんが、実はそうではありません。ハイブリッド車にも「補機用バッテリー」が搭載されており、これはガソリン車と同じ鉛バッテリーを使用しているため、バッテリー上がりが起きるのです。電気で動くからといって油断せず、定期的な点検や交換を心がけることが大切です。

ハイブリッド車でバッテリーが上がるとどうなる?
もし補機用バッテリーが上がってしまった場合、エンジンが始動しなくなる場合があります。
代表的な車種としてはトヨタのプリウスが思い浮かびますが、最近では多くのメーカーが独自の仕組みを持つハイブリッド車を販売しています。しかし、その多くの車は、補機用バッテリーの寿命を知らせてはくれません。その中で共通していえるのは、「補機用バッテリーの劣化は突然やってくる」ということです。
ガソリン車の場合、バッテリーが弱くなるとセルモーターの音が弱々しくなるなど、劣化の兆候に気づきやすい特徴があります。しかし、ハイブリッド車の多くはセルモーターを搭載しておらず、エンジンの始動は駆動用バッテリーを使ってモータージェネレーターを作動させる仕組みです。
一方で補機用バッテリーは、このハイブリッドシステムを起動させるために使われ、エンジン始動のセルモーターを作動させるものではありません。セルモーターがないため、セルの回り方の変化を察知できず、ドライバーはバッテリーの弱まりを察知しにくいのです。異変を察知しにくいため、「昨日まで普通に走っていたのに、今朝いきなりエンジンがかからない」といった事態が起こることもあります。
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ハイブリッド車のアイドリング充電とは?

ハイブリッド車のアイドリング充電とは?
アイドリング充電とは、エンジンをアイドリング状態で回しながらバッテリーを充電する方法で、バッテリー上がりを防ぐのに有用です。これは、バイクや軽自動車、ハイブリッド車にも適用されます。

キャンピングカーなどの場合、特に外出時のバッテリーの充電に気をつける必要があるでしょう。

目安としては、1時間ほどアイドリングさせるのが理想です。ただし、住宅街などでは騒音や排ガスに配慮する必要があります。

アイドリング充電の方法

バッテリー上がりを未然に防ぐための手段として「アイドリング充電」が有効です。ただし、正しい手順で行わないと、充電効果が十分に得られないばかりか、かえってバッテリーに負担をかけて劣化を早めてしまうこともあります。

ここでは、アイドリング充電を安全かつ効果的に行うための基本的な方法と注意点について解説します。

外気が十分に通る場所を選ぶ

まず重要なのが、充電を行う場所選びです。アイドリング中は、排気ガスや騒音で周囲に迷惑をかけないようにしましょう。

アイドリングにより排気ガスやエンジン音が発生するため、換気の良い屋外や、周囲に住宅がない場所を選ぶのが理想的です。

また、地域によってはアイドリングが禁止されているケースもあります。周囲への配慮はもちろん、事前のルール確認も忘れずに行いましょう。

エアコンなどの電装品をオフにする

アイドリング充電中は、エアコン、ヘッドライトなどの電装品をオフにしておくことで、消費電力を防ぎ、効率的に充電できます。

また、アイドリング中にエンジンの回転数を少し高めに保つと、より多くの電気を発生させられるため、充電効率が上がることもあります。

無駄な電力消費を避け、充電効率を最大限に高めるためにも、電装品の使用には注意が必要です。

1時間程度を目安に実施する

アイドリングによる充電は、状況に応じて必要な時間が異なりますが、一般的には1時間程度が一つの目安とされています。

ただし、バッテリーの状態によっては、1〜2時間アイドリングしてもあまり回復しない場合もあります。そのようなときは、充電器の使用や専門業者による点検・交換など、別の手段を検討することが必要です。

アイドリング充電の注意点

アイドリング充電の注意点
効果的なアイドリング充電のためには、いくつかの注意点を押さえておく必要があります。不適切な時間や方法で行うとバッテリーを傷める原因になる可能性があるため、注意しましょう。

まず、充電中に室内灯やカーオーディオなどがついたままの状態になっていると、充電が無駄になってしまいます。

また、バッテリーに触れるようなメンテナンス作業を行う場合は、安全対策が必須です。耐酸性の手袋や保護メガネを着用し、必ず換気の良い場所で作業を行うようにしてください。

アイドリング充電に頼りすぎるのではなく、日頃からバッテリーをいたわる使い方を心がけることも大切です。例えば、不要な電気機器の使用を控える、こまめに車を動かす、定期的にバッテリーチェックを行うといった小さな積み重ねが、バッテリーの寿命を延ばすことにつながるでしょう。

バッテリーが上がってしまったときの対処法

バッテリーが上がってしまったときの対処法
突然、車のエンジンがかからなくなった場合には、バッテリーが上がっている可能性があります。特にハイブリッド車の場合、セルモーターがないため兆候に気づきにくく、「突然エンジンがかからない」というケースが多いのです。

ここからは、バッテリーが上がってしまったときに取るべき対処法をわかりやすくご紹介します。

救援を呼ぶ

もっとも一般的な方法が、ブースターケーブルを使って他の車から電力をもらう方法です。

ハイブリッド車の場合は、取扱説明書にしたがってブースターケーブルをつなぐ必要があり、車種によってはエンジンルームに救援用端子が設けられていることもあるため、事前に確認しておくと、いざというとき安心でしょう。

ただし、この方法は「近くに救援車がいないと成り立たない」というデメリットもあります。急いでいるときや夜間、山道などでは助けを呼ぶのが難しいこともあるため、あくまで一つの選択肢として覚えておきましょう。

ジャンプスターターを使用する

「もしものときの安心アイテム」として注目を集めているのが、ジャンプスターターです。スマホのモバイルバッテリーのようなコンパクトなサイズでありながら、車のバッテリー上がりに対応できる頼もしい存在です。

ハイブリッド車の場合、ハイブリッドシステムが立ち上がれば良いため、ガソリン車ほど大容量のジャンプスターターを選ぶ必要はありません。日常的に車に積んでおけば、救援車が見つからないときでも自力でエンジンをかけられるため、備えておくと便利でしょう。

補機用バッテリーを充電する

放電が原因でバッテリーが上がってしまった場合は、充電することで復活するケースもあります。

ハイブリッド車に使われる補機用バッテリーは、多くがVRLA(制御弁式)タイプです。そのため、対応した充電器を使えば、充電での回復が可能です。

ただし、ガソリン車のようにエンジンルームにバッテリーがあるとは限らず、トランクや後部座席の下に設置されていることも多いため、不慣れな方には難しく感じるかもしれません。

補機用バッテリーを交換する

補機用バッテリーを交換する
バッテリーが突然上がった場合、寿命を迎えている可能性も考えられます。特に電装品の消し忘れなどがないのに上がってしまった場合は、バッテリーの劣化が進んでいるかもしれません。

ハイブリッド車でも補機用バッテリーの交換は可能ですが、近年の車は各種メモリー機能が搭載されており、端子を外しただけでリセットされることがあります。そのため、交換作業はディーラーや専門ショップに任せるのが安心でしょう。

自分で交換したい場合は、OBDⅡやシガーソケットなど、メモリーを保護できるバックアップ用品を準備するようにしましょう。

補機用バッテリーの交換時期の目安は?
補機用バッテリーの寿命は一般的に3~5年とされています。バッテリーは、使い続けるうちに徐々に劣化していきます。特に3年以上使用している場合は、バッテリー上がりが起きやすくなるため、早めの交換を検討することが大切です。
劣化したバッテリーは充電を繰り返しても回復しづらく、突然のトラブルを招くリスクが高まります。安全で快適なカーライフを続けるためにも、定期的な点検と交換を心がけましょう。

バッテリー上がりを事前に防ぐ方法

バッテリー上がりは突然起きることが多く、特にハイブリッド車では兆候に気づきにくいという特徴があります。ただし、日頃の小さな心がけで未然に防ぐことも可能なのです。

ここでは、補機用バッテリーのトラブルを回避するための予防策をご紹介します。

こまめに車を動かす

こまめに車を動かす
バッテリー上がりを防ぐ基本は、車を定期的に動かすことです。1週間に1回、20分~30分程度走行させるのが理想です。

車は停めているだけでも自然に放電してしまうため、定期的に走行してバッテリーへ充電する必要があります。ただし、気をつけたいのは短時間の走行を繰り返すことです。

短時間の走行だけでは、エンジンをかけるときに使った電力を補いきれず、逆にバッテリーを消耗させてしまうことがあります。さらに、アイドリング中や信号待ちの際にエアコンやナビなどの電装品を多用すると、消費電力が発電量を上回ってしまうことも考えられます。

つまり、車をただ動かせばよいというわけではなく、ある程度エンジン回転数を上げる「走行」が必要なのです。週に1回、20〜30分程度のドライブの習慣をつけることで、バッテリーの健康を保ちやすくなるでしょう。

ソーラーチャージャーを取り付ける

こまめに車に乗れない人は、ソーラーチャージャーを取り付けるのも効果的です。

いくらこまめに車を動かすのが大切とはいえ、現実的に難しいこともあるでしょう。

ガソリン車であれば、バッテリーのマイナス端子を外しておくことで放電を抑えられましたが、その方法は通用しません。複数のシステムが動作しているため、バッテリーを外すと逆に不具合を招く可能性があります。

そこで、活躍するのがソーラーチャージャーや市販の充電器です。また、家庭用100Vから充電できる市販の充電器もおすすめです。

バッテリーが弱ってきたと感じたとき、自宅で簡単にメンテナンスできるのは大きな安心材料となるでしょう。

日常点検をする

日常点検をする
バッテリー上がりのトラブルを防ぐためには、「今のバッテリーの状態を知る」ことも大切なポイントです。特にハイブリッド車は、セルモーターを作動させる車が少ないため、バッテリーの劣化に気づきにくい傾向があります。

「急にエンジンがかからない」というトラブルを防ぐためには、日常的にバッテリーをチェックしてくれるサービスを利用するのが有効でしょう。

セルフチェックに必要な機器を揃えるのもよいですが、もっと手軽なのはガソリンスタンドなどでの点検サービスです。オイル交換やタイヤ点検のついでにバッテリーのチェックもお願いしてみましょう。

セルモーターが回るマイルドハイブリッド車では、補機用バッテリーを多く使う設計になっており、劣化が進んでいると突然エンジンがかからないことがあります。気づかないうちに進行するバッテリーの劣化を早期に見つけるためにも、「ついでの点検」を習慣にすることが、トラブル回避のポイントとなるでしょう。

まとめ

①補機用バッテリーが上がると、ハイブリッドシステムが起動せず、エンジンも始動できなくなる。セルモーターがなく前兆がわかりにくいため、定期的な確認が不可欠
②アイドリング充電を行う場合は、安全で迷惑にならない環境を選び、1時間程度実施する。通気性の良い場所で実施し、ヘッドライトやエアコンをオフにしておくと発電効率が高まる
③バッテリー上がり時は、ブースターケーブルやジャンプスターターの使用、または補機用バッテリーの充電・交換で対処できる。救援車がいない状況も想定し、いざというときのために備えておくと安心
④補機用バッテリーの寿命は3〜5年が目安で、劣化を感じたら早めの交換が望ましい。突然のトラブルを避けるためにも定期的な交換を検討する必要がある
⑤バッテリー上がりを防ぐには、定期的な運転・ソーラーチャージャーの活用・日常点検の実施が重要。普段あまり乗らない人ほど、自然放電によるバッテリー消耗に注意が必要

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