ハイブリッド車といえば新車というイメージを持つ方も多いかもしれませんが、実は中古車であっても一定の条件を満たせばエコカー減税の対象になります。
対象となるかどうかは新車か中古車かではなく、その車が「環境性能の基準を満たしているかどうか」がポイントです。
この記事では、エコカー減税の基本から、中古のハイブリッド車の条件、減税率の詳細、他の減税制度との併用の可否について解説します。
中古のハイブリッド車でもエコカー減税の対象になる!
エコカー減税は「排出ガス性能」や「燃費性能」の良い車に対して適用されるため、新車時に基準を満たしていた車両であれば、その性能を維持している限り中古車でも対象となります。
車購入時にしっかり確認しておけば、中古でお得に車を手に入れられるでしょう。
エコカー減税とは?
エコカー減税とは、排出ガス性能や燃費性能が優れた自動車に対して与えられる税制上の優遇措置のことです。2009年4月から始まり、現在も継続されています。対象となるのは、排出ガスが少なく、燃費の良い車です。
国土交通省によれば、性能に応じて「自動車重量税」が免税または軽減される仕組みとなっています。車購入時や車検のたびにかかるコストを軽減できるため、家計の負担が減るうえ、環境にもやさしい選択ができるでしょう。
エコカー減税では、主に「自動車重量税」の軽減・免除が行われます。対象車であれば、車検時にこの税金が安くなる、または免除されるのが大きな特徴です。
自動車は購入時だけでなく維持費も高くつくため、少しでも負担を減らしたいと考える人は少なくありません。そこで、環境性能に優れた車に対して減税というメリットを設けることで、エコカーの普及を後押ししようというのがこの制度の内容です。
つまり、燃費の良い車を選ぶことが、経済的にも環境的にも賢い選択になるということなのです。
エコカー減税の目的は、地球温暖化対策のために環境にやさしい車への買い替えを促進することです。背景には、地球温暖化という大きな環境問題があります。
自動車の排気ガスに含まれるCO2(二酸化炭素)は、温室効果ガスといわれ、気候変動の原因の一つです。そこで、国は環境性能の高い車への買い替えを促進することで、排出ガスを減らす狙いがあります。
特にBEV(電気自動車)やPHEV(プラグインハイブリッド車)といった次世代自動車へのシフトを後押ししています。
このような制度を通じて、環境意識の向上や、技術革新の加速も期待されているのです。
エコカー減税が適用される税金は、自動車重量税です。これは、車の重量に応じて課される税金で、重い車ほど税額が高くなります。
しかし、対象車両であれば、排出ガス性能や燃費性能によって、この税金が軽減または免除されるのです。
なお、以前は「自動車取得税」も減税対象でしたが、これは2019年に廃止されました。現在は「環境性能割」という制度が代わりに導入されています。
減税が受けられるのは2026年4月末までとされていますが、延長する可能性も考えられます。もともとは2023年4月で終了する予定でしたが、令和5年度の税制改正により延長されました。
ただし、年を追うごとに対象車の基準が厳しくなっている点には注意が必要です。今後登録される車両では、これまで以上に高い環境性能が求められるでしょう。
将来的にはさらに厳格化される可能性もあるため、エコカー購入を検討している方は、タイミングをよく見極めることが大切です。
エコカー減税の対象になる車種
対象となるのは、排出ガスや燃費性能が優れた「環境にやさしい車」です。
代表的なものには、電気自動車やハイブリッド車、クリーンディーゼル車、天然ガス車、燃料電池自動車などが挙げられます。これらの車種は、地球環境への負荷を抑える目的から税制面で優遇されています。
ここからは、それぞれの車種について詳しく見ていきましょう。
ハイブリッド車は、エンジンとモーターという2つの動力源を備えた自動車です。走行時は、速度や走行状況に応じて動力源を使い分けるのが特徴です。
例えば、低速走行時にはモーターが働き、静かで燃費効率の良い走行ができます。一方、スピードが上がるとエンジンが作動し、パワフルな走行をサポートします。こうした仕組みにより、燃費性能が向上し、CO₂や排気ガスの排出も抑えることが可能です。
燃料消費を抑えられることで、ガソリン代の節約にもつながるため、家計にも環境にもやさしい車として人気があります。
電気自動車は、バッテリーに蓄えた電気エネルギーを使ってモーターで走行する車で、ガソリンを使用しないのが大きな特徴です。
走行中にCO₂を排出せず、エンジン音がないため静かで振動も少ない快適な運転ができます。また、ガソリン代がかからず維持費が抑えられる点も魅力です。
その反面、充電に時間がかかる、充電ステーションの整備が不十分、車両価格が高めといった課題もあります。
電気自動車は、ハイブリッド車や燃料電池自動車などと同じく「電動車」の一種です。環境への配慮を重視する人や静かな走行を重視する人に適した車種といえるでしょう。
燃料電池自動車は、燃料電池で発電した電気エネルギーで走る自動車です。水素と酸素の化学反応によって発電し、その電気でモーターを回して走る次世代のエコカーです。
走行中に排出されるのは水だけで、CO₂(二酸化炭素)などの温室効果ガスを出さないため、非常にクリーンな環境性能を持っています。
充電の必要がないのも大きな魅力ですが、現在は水素ステーションの数がまだ少ないこと、車両価格が高めである点から、一般への普及はこれからという段階です。
天然ガス自動車は、名前の通り天然ガスを燃料として走る自動車です。SOx(硫黄酸化物)や粒子状物質をほとんど出さず、NOx(窒素酸化物)やCO₂(二酸化炭素)も少ないため、非常に環境性能の高い車といえます。
構造は基本的にガソリン車やディーゼル車と同じで、異なるのは燃料系統です。天然ガスは高圧(約20MPa)に圧縮され、車載のガス容器に充填されます。そこから配管と減圧装置を通じてエンジンに供給される仕組みです。
海外ではすでに導入が進んでいますが、日本ではエコステーション(天然ガスの供給設備)の数が少ないため、普及は限定的です。ただし、将来的には環境負荷の低さが評価され、さらに注目される可能性があります。
クリーンディーゼル車は、有害物質の排出量が少ないディーゼル車のことです。
2009年に導入された「ポスト新長期規制」に適合するもので、排出ガス中の粒子状物質や窒素酸化物を減らすための浄化システムが搭載されています。代表的な技術には、尿素SCRシステムや、NOx吸蔵還元触媒があります。
コモンレールシステムが採用されており、高圧で燃料を噴射することで燃焼効率を高め、ススの発生を抑えることが可能です。このような技術によって排出ガスがクリーンになっており、エコカー減税の対象となっています。
さらに、燃費性能にも優れており、ガソリン車に比べて燃料費を抑えられる点も魅力です。
ただし、車両価格やメンテナンスコストがやや高めな点には注意が必要です。
プラグインハイブリッド車は、エンジンとモーターの両方を搭載し、外部からの充電が可能なハイブリッド車です。充電されたバッテリーを使って電気だけで走行でき、ガソリンを使わずに短距離移動を済ませることが可能です。
バッテリーの残量が少なくなると自動的にエンジンが作動し、ハイブリッド走行に切り替わるため、長距離移動にも対応できます。
電気とガソリンのメリットを両立しているため、燃費の良さと利便性のバランスに優れており、人気を集めています。
HEVは外部からの充電ができませんが、PHEVは外部からの充電が可能です。そのため、短距離であればPHEVはモーター走行のみで済むことも多く、ガソリン代をさらに抑えられるでしょう。
エコカー減税は中古車も対象になる
「エコカー減税は新車にしか使えない」と思っている方も多いかもしれません。しかし実際には、中古車であっても一定の条件を満たしていれば対象になります。
排出ガス性能や燃費性能に優れた環境性能の高い車であれば、たとえ中古車であっても自動車重量税の軽減を受けることが可能です。ただし、新車とは軽減を受けるタイミングが異なるため、その違いを正しく理解しておくことが重要です。
ここからは、中古車に関する条件について詳しく見ていきます。
減税のタイミングは、新車と中古車で異なるタイミングが設定されています。新車の場合は「新規登録」のタイミングで減税が適用されますが、中古車は「初回継続検査」のタイミングでの適用です。
したがって、中古車でも減税を受けたい場合は、「初回継続検査前」の車両を選ぶことがポイントです。このタイミングを見極めることで、余計な税負担を避けられるでしょう。
中古車にエコカー減税を適用するためには、車の性能や購入した年度によって細かく条件が設定されています。
例えば、ガソリン車やLPG車(ハイブリッド車を含む)の場合、2020年度(令和2年度)の燃費基準を達成していることが条件となっています。クリーンディーゼル車の場合は、2021年4月30日までに新車登録されていて、初回継続検査であることが減税の要件です。
また、上記の時期に当てはまらない場合でも、2020年度燃費基準を満たしていれば、減税できるケースがあります。(※2024年3月時点)
このように、細かい条件が存在するため、購入前には対象条件をよく確認しておくことが大切です。
また、中古車は「新規登録時」には減税されず、「初回継続検査時」に適用される点には注意しましょう。そのため、中古車を選ぶ際には「新車登録から3年以内」の車を選ぶことで、減税のチャンスを逃さずに済むでしょう。
エコカー減税の減税率
エコカー減税は、環境性能の高い車に対して、自動車重量税の負担を軽くする制度です。その減税率は、車の種類や燃費基準の達成度合いによって異なります。
また、時期によっても減税率の基準が変わるため、購入や車検のタイミングが非常に重要です。ここでは、2024年1月~2026年4月末までに新車新規登録または初回車検を受けた場合の減税率について、時期ごとに解説します。
この期間に新車の登録や初回継続車検を受けた車については、以下のように自動車重量税の減免措置が取られます。
以下の車種は、自動車重量税が全額免除(免税)されます。(中古車でも初回継続車検であれば対象)
- 電気自動車
- 燃料電池自動車
- 天然ガス自動車(平成30年排出ガス規制に適合しているもの)
- プラグインハイブリッド自動車
ガソリン車・LPG車・クリーンディーゼル車は、2030年度燃費基準の達成度に応じて段階的に減税されます。
基準達成70% | 25%軽減 |
---|---|
基準達成80% | 50%軽減 |
基準達成90% | 免税 |
基準達成120% | 免税(初回継続車検時も対象) |
この期間においては、基準がより厳しく設定されています。燃費性能や環境性能の高い車ほど優遇される仕組みは変わりませんが、燃費基準の達成水準が引き上げられています。
以下の車種は、引き続き免税対象です。
- 電気自動車
- 燃料電池自動車
- 天然ガス自動車(平成30年排出ガス規制適合)
- プラグインハイブリッド車
ガソリン車・LPG車・クリーンディーゼル車においては、2030年度燃費基準の達成率に応じて段階的に軽減措置が取られます。
基準達成80% | 25%軽減 |
---|---|
基準達成90% | 50%軽減 |
基準達成100% | 免税 |
基準達成125% | 免税(初回継続車検時も対象) |
知っておきたいその他の減税制度
エコカー減税の他にも、環境性能の高い車に対して適用される減税制度がいくつか存在します。車の購入や保有にかかる税金は多岐にわたりますが、それぞれの制度を理解しておくことで、よりお得に車を持てるでしょう。
ここでは、代表的な「グリーン化特例」と「環境性能割」についてご紹介します。
グリーン化特例は、環境性能の高い車に対して自動車税(種別割)や軽自動車税(種別割)を軽減する制度です。この制度では、環境性能が優れた車に対し、概ね最大で75%の減税されます。中古車も対象となっており、2026年3月31日までの期間とされています。
ただし、減税されるのは購入翌年度分のみであること、対象となるのは一部のエコカーに限られることに注意が必要です。さらに、自家用車は対象外となり、営業用乗用車のみが該当となっているため、中古車市場では該当車種が少ないのが実情です。
環境性能割は、廃止された「自動車取得税」に代わって2019年に導入された制度で、自動車を取得したときにかかる税金が減税されるものです。車を取得した際に課される税金で、その税率は車の環境性能に応じて0~3%に設定されています。
新車だけでなく中古車にも適用され、一定の環境基準を満たした車で、かつ取得価額が50万円を超える場合に減税が受けられます。段階的に基準の見直しが行われているため、購入時には最新の制度内容を確認しておきましょう。
このように、複数の制度をうまく活用することで、車にかかるトータルコストを大きく抑えることが可能です。購入前には、対象車種や減税時期などをしっかりチェックし、賢く制度を活用していきましょう。