新車試乗レポート
更新日:2019.05.22 / 掲載日:2018.07.27

【試乗レポート・マツダ新型アテンザ】インテリアを大幅一新。現行モデル集大成とも言える完成度

マツダ アテンザセダン XD L Package・4WD

文と写真●ユニット・コンパス

 改めて美しいクルマだと思う。
 夏の日差しを浴びて深いコントラストを見せるアテンザを前に、そう強く感じた。
 とくにその流麗なフォルムは、デビューから年月を重ねたいまでも魅力にいささかの衰えを感じさせない傑作デザインだと思う。そして、この度の改良で変わった顔つきは、人間に例えれば成長と年齢を重ねたような印象で、表情に落ち着きと威厳が増している。凛々しく、強い意志を持って前を見据えるフロントフェイスだ。
 新しい商品がつぎからつぎへと登場する一方、猛スピードで消費され陳腐化していく昨今において、このアテンザのような存在は貴重だ。変化のための変化ではなく、本質的な価値に向き合い、大切に育てていくマツダの姿勢は嬉しい。

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自動ブレーキが夜間の歩行者検知にも対応するなど安全性能も着実に進化

 一方で、新型アテンザは、日々進化する安全テクノロジーについては積極的にこれを取り入れている。
 とくに新型では、危険を未然に防ぐための機能が充実した。具体的には、「アドバンスト・スマート・シティ・ブレーキ・サポート」に夜間歩行者検知機能を新たに加え、「アダプティブ・LED・ヘッドライト」についても照射範囲を広げ、様々な走行シーンに合わせて最適な配光を提供してくれるよう進化させた。ドライバーの知覚を拡張する「360°ビュー・モニター」の採用も、日常生活でのリスクを確実に低減してくれる。

改良モデルのハイライトが上質さを大幅に高めたインテリア

 見えるところ以上に見えない部分のアップデートが多い今回の改良。ハイライトになるのはインテリアだろう。

 セダン・ワゴンに限ったことではないが、運転中もっとも長く目にする室内の出来栄えは、満足度に大きな影響を与えるのは間違いない。アテンザは2014年にもダッシュボードを改良しているが、今回の改良でも一新というほどの改良が加えられた。といっても、従来の路線を否定するようなものではなく、当初からの理想に近づけたと理解するのがいいだろう。
 とくに見所となるのが、ダッシュボードからドア内張りまで大胆に繋がる水平基調の造形。従来モデルではインパネトリムはダッシュボードの端で一度途切れる形だったが、新型ではドア内張りにまで連続する形で左右に広がることで、まさに包み込まれるような空間を提供している。
 各所の素材が上質になったことで、写真映えだけでなく、ドライバーが感じるクオリティ感も一気に高まった。インパネトリム表面を覆う「ウルトラスウェードヌー」という素材は、手触りの気持ちよさはもちろん、光の反射が非常に上品だ。
 エンジニアによれば、ハンドクラフト的な温かみ、自然なゆらぎを表現したかったということだが、なるほど目に優しく、リラックスできる空間に仕上がっている。

 また、今回の改良にあたっては、社内の基準を見直し、より厳しい目でひとつひとつのパーツを見直した。
 たとえばセンターコンソールの継ぎ目がなくなっていたり、製造上の都合で見えてしまう部品を露出させないようにしたりといった、細やかなところの作り込みだ。
 アテンザはマツダにとってフラッグシップであり、性能や機能が優れているだけではだめで、クルマづくりの意識を根本から高める必要があるという考えからそれは行われたという。

走行中にも会話がしやすく、市街地シーンでの乗り心地も改善された

マツダ アテンザワゴン 25S L Package・2WD

 では、走りの印象はどうだったか。サスペンションを改良し、ボディ剛性、静粛性についても手当てを施したという新型には、着実な進化を感じた。

 とくに好印象だったのは静粛性の向上。今回は市街地域を中心に都市高速を含めたテストコースをとったが、全域で明らかに静かになった。入ってきた音がスーっと減衰するタイプの静かさで、透過する音そのもののボリュームも低くなった。
 そしてシート。ベンチレーション機能が加わったことがニュースだが、座り心地がよく適切なポジションをキープしやすいことも報告しておきたい。
 乗り心地もよくなった。ちょっとした路面の継ぎ目や車道から歩道に入るときに段差を乗り上げるようなシチュエーションでも、新型は車体がゆすられることなくスマートに振る舞う。低い速度域からサスペンションが仕事をするようになったということだろう。
 あとこれは機能的に大きなアップデートではないが、「アクティブ・ドライビング・ディスプレイ」がフロントウインドウに照射する方式に変わったことで、目の前がすっきりしてより運転に集中しやすくなった。

最新スペックにアップデートされたパワートレーン

 エンジン関係のアップデートについては、すでに発表されているCX-5などと同様で、2.5Lガソリンエンジンに気筒休止を追加、ディーゼルは出力を15馬力、3.1kgm高めている。
 アクセルやステアリング操作に対するクルマの反応が素直で正確なのはマツダ車全体に共通する美点だが、新型アテンザのそれはさらに一歩先に進んだ印象だ。意のまま感は高く、結果的に疲労は軽減される。
 電動パーキングブレーキに採用されたオートホールド機能も従来型ユーザーにとっては羨ましいだろう。このクラスのクルマを購入するのは、普段からクルマ移動が多いユーザーだろうから、その恩恵は大きい。

 今回の試乗はセダンがディーゼルの4WD、ワゴンがガソリンの2WDという組み合わせで行った。セダンの4WD化+ディーゼルというメカの組み合わせは重く、フィーリング面では不利なはずだが、そこは上手に抑えられており納得の出来。一方で、ワゴンのガソリン+2WDという組み合わせにも、トルクの不足や出足の鈍さのようなデメリットは認められなかった。アテンザの2WDを北海道の雪上で試した経験によれば、スタッドレスタイヤさえ履いていれば、冬場スキー場に行く程度の使い方であればまったく問題なし。価格的に手頃となるこの組み合わせはアリだと思う。

洗練され、クルマとしての本質を磨き上げたことで熟成の域に到達

 新しいアテンザは、自らのチャームポイントをしっかりと意識し、それを磨き上げながら、上級車に求められる安全性、快適性、使い勝手を着実にレベルアップさせた。従来型アテンザに乗っているユーザーならば、その進化のほどをきっと深く実感できるだろう。
 そして、これまで他ブランドの同クラスモデルを所有しているユーザーにも、一度試乗してみることをお勧めしたい。アテンザならではの世界観がしっかりと表現されているからだ。
 改良型の仕上がりは、まさに現行モデルの集大成とも言える域にある。

マツダ アテンザセダン XD L Package・2WD(6速AT)

全長×全幅×全高 4865×1840×1450mm
ホイールベース 2830mm
トレッド前/後 1595/1585mm
車両重量 1600kg
エンジン 直列4気筒DOHCディーゼルターボ
総排気量 2188cc
最高出力 190ps/4500rpm
最大トルク 45.9kgm/2000rpm
サスペンション前/後 ストラット/ダブルウィッシュボーン
ブレーキ前/後 Vディスク/ディスク
タイヤ前後 225/45R19

販売価格 282万9600円~419万400円(全グレード)




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グーネットマガジン編集部

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