新車試乗レポート
更新日:2021.04.02 / 掲載日:2021.04.02
【試乗レポート 日産 ノート】日産復活の狼煙となるか!? 「e-POWER」の進化に迫る
日産 新型ノート
まさに気合い十分。新しくなったノートに触れると、日産がやろうとしていること、やりたいこと、できることがひしひしと伝わってきます。
新型ノートの魅力は、高い総合力にあります。デザイン、品質、走行性能、先進安全装備、燃費性能といったクルマの魅力を構成する要素が、どれも高いレベルで備わっているのです。
新型ノートの特徴は、純粋なガソリンエンジン搭載モデルがなくなり、「e-POWER」のみとなったことです。先代ノートが大ヒットモデルとなったのは、改良モデルで「e-POWER」が追加されてから。従来のガソリン車では味わえないスムーズな加速と静粛性の高さがたくさんのファンを生み出しました。新型ノートは、パワートレインを初めから「e-POWER」1本に絞り込むことで、クルマとしての作りを「e-POWER」に最適化しています。
第2世代「e-POWER」とライバルのパワートレインを比較
新型ノート パワートレイン
2019年から2020年にかけて、くしくもヤリス、フィット、ノートと日本を代表するコンパクトカーが相次いでフルモデルチェンジしましたが、それぞれ個性的で力の入ったパワートレインを採用しています。
まずノートが搭載する「e-POWER」。日産はノートを電気自動車とカテゴライズしていますが、リーフのような純粋なBEV(バッテリーEV)とは仕組みが異なります。
BEVがバッテリーの電力でモーターを駆動するのに対して、「e-POWER」には、発電機としてのエンジンが搭載されています。そのため、充電プラグも存在せず、スタンドでレギュラーガソリンを給油する必要があります。そして、必要に応じてエンジンが始動し発電を行い、バッテリーに電力を貯め、モーターの力だけでタイヤを駆動します。
なぜそのような一見すると複雑な仕組みにしたかというと、搭載するバッテリーの容量が小さくて済むから。新型ノートが202万9500円から276万3200円という価格帯なのに対して、ボディがひとまわり大きいとはいえ、電気自動車のリーフは、332万6400円から499万8400円とかなりの価格差があります。リーフには最大で80万円の補助金が国から交付されるため、実際のユーザー負担は抑えられていますが、まだまだEVはリーズナブルな存在とは言い難い。日産も、当面はEVと「e-POWER」をモデルによって使い分ける戦略をとっています。
「e-POWER」の魅力は、なめらかな加速感と静粛性の高さ。エンジン車で言えば2ランクくらい上のクルマに乗っているようなスムーズさが特徴です。
対するヤリスは、1Lと1.5Lのガソリンエンジンに加えて、おなじみのTHS IIハイブリッドを小型化しさらに磨き上げた1.5Lの新型パワートレインを搭載。燃費性能を高めつつ、走行性能にもこだわり、EV走行の最高速度を130km/hまで引き上げました。いずれのグレードでも、コンパクトカーらしいキビキビとした元気のいい走りが楽しめます。 一方のフィットは、ガソリン車が1.3Lと「e:HEV」と名乗る1.5Lハイブリッドの2本立て。ベーシックながらも上手に調律された1.3Lに対して、全域でゆとりの「e:HEV」というキャラクター設定です。「e:HEV」の仕組みは「e-POWER」とよく似ていますが、高速巡航時にはエンジンの力でタイヤを駆動させるユニークなシステムとなっています。「e:HEV」のフィーリングは、あえてエンジン車に似せられており、アクセルを踏み込んで加速するときなどは、まるでトランスミッションが変速するような段付き感も意図的に再現しています。
シャープで先進的なイメージのスタイリング
新型ノート エクステリア
新型ノートのデザインコンセプトは、「タイムレス・ジャパニーズ・フューチャリズム」というもので、日産の次世代デザインをいち早く採用しています。そのせいもあって印象はひときわ先進的で、とくにフロントマスクの精緻な仕上がりには、クラスを超えた質感を感じます。近年ではコンパクトカーの実力が上がったこともあり、より大きなクルマから乗り換えるユーザーも多くなってきましたが、そういうニーズにも新型ノートはしっかり応えてくれそう。簡単にいうと、クルマが高そうに見えるのです。
新型ノート エクステリア
機能的でシンプルにまとめられたインテリアデザイン
新型ノート インテリア
インテリアもシンプルかつ機能的にまとめられていています。とくにメーターとインフォテインメント用モニターが一体化した処理は印象的で、多機能なボタンをすっきりと収めたステアリングデザインと相まって、新しいクルマに触れているワクワク感があります。インフォテインメント用モニターが手前側にあるのもタッチ操作のためで、デザインのためのデザインではなく、機能的に意味があるところも嬉しい。
操作系も、関連する機能が上手にエリア分けされているのが好印象。たとえばクルマを動かすことに関連する機能はシフト周辺にまとまっているので、走行中でも気をそらすことなく操作することができました。
また、新型ノートではクルマから発する「情報提供音」を刷新しています。「情報提供音」とは、ウインカー作動時や後退時に流れる音や、シートベルト未装着時になる警告や注意喚起を示す音などを総称したもの。これが新型ではバンダイナムコ研究所と共同開発した新しい「音」に切り替わっているのです。これが新しいクルマに乗っている実感を高めてくれるのです。
新型ノート 電子制御シフト
新型ノート フロントシート
新型ノート リアシート
新型ノート ラゲッジルーム
新型ノート ラゲッジルーム
新型ノート ラゲッジルーム
走らせた印象も従来型と比較して大きな進化を感じることができました。とくに静粛性はまるで別物! 従来型がガソリン車ベースに開発されたところに「e-POWER」を投入したため、もうひとつと感じる瞬間がありましたが、新型は「e-POWER」オンリーで開発を最適化していることに加え、「e-POWER」自体も第2世代に進化していて、別物のように洗練されました。
たとえばスタートボタンを押してクルマを発進させるときに、先代モデルはエンジンがブルンと始動してしまったのが、新型ではするするとすべるように発進していきます。ブレーキを離すとクルマが動くクリープ機能が備わったのも大きな違いで、駐車などのシチュエーションでもガソリン車から乗り換えても違和感がなくなりました。
従来型との違いでもうひとつ大きなものが、加減速のときに乗員が感じる感覚です。従来型では、アクセルを踏み込むとグッとクルマが加速する感覚があり、減速時にもアクセルを離してすぐに減速Gが立ち上がりました。それをメリハリのあるスポーティなフィーリングと好意的に受け止めることもできましたが、助手席や後席に乗るひとからすれば、もう少していねいに運転してほしいと感じることもあったのです。一方の新型では、加速、減速ともにスペック上では従来型を上まわっています。しかし試乗すると、とてもおだやかであまり迫力がないように感じるのです。じつはそこが開発チームが力を入れたところで、緻密なモーター制御と新しく採用した「CMF-B」プラットフォームなどによって、より自然な加減速を実現しています。
また、新型ノートでは、運転支援技術である「プロパイロット」にナビゲーション連動機能を追加するなど、コンパクトカーであっても、ロングドライブにも出掛けたくなるスペックになっています。走りの進化は目に見えませんが、実際に購入してからの満足度に大きく影響するでしょう。
ライバルと比較すると、新型ノートとフィット「e:HEV」のパワートレインは、目指している方向性が似ていて、どちらも自然な加速感、上質さのようなものを大切にしています。
そのなかでも新型ノートはエンジンからのノイズを聞かせないようにこだわっているように思えました。それらに対してヤリスはいい意味でも悪い意味でもエンジンの存在感があります。前席を優先したパッケージングやシャープなルックスと合わせて、小さくても走りを楽しめるクルマとして、非常にキャラが立っていると言えるでしょう。まさに三者三様、出来のいいコンパクトカーがたくさん登場したのは、消費者としてはうれしい状況です。
グレード選びのアドバイス
グレード選びは「プロパイロット」が必要かどうかで大きく変わってくる
日産にとってひさしぶりの国内向け新規開発車となった新型ノートは、コンパクトカーのサイズに最新技術をギュッと凝縮したところが魅力です。
最後にグレード選びについてのアドバイスとなります。新型ノートには、エントリーモデルの「F」、量販グレードの「S」、上級グレードの「X」、オーテック仕様がカスタムした「AUTECH」が用意されています。
メーカーオプションの「プロパイロット」を選ぶためには、上級グレードの「X」または「X FOUR」、「AUTECH」を選択する必要があります。ですので、まず「プロパイロット」がほしいなら、選択肢は自動的に「X」系以上になります。
では、「プロパイロット」を装着しない場合は? じつは「S」と「X」の違いは加飾以外あまり大きくなく、代表的なものとしては、ルーフアンテナがシャークフィンタイプになることや合皮アームレストの有無、そして後席シートのリクライニング機能くらいとなります。ですから、後席の快適性を重視したり「小さな高級車」的にこだわりたいなら「X」、コストパフォーマンスを考えるなら「S」がオススメのグレードとなります。燃費スペシャル的な「F」を別とすれば、第2世代に進化した「e-POWER」のうま味は「S」でも「X」でも変わりません。
コンパクトカーにいろいろな意味で上質さを求めるひとにとって、間違いなく新型ノートは注目の1台といえるでしょう。
日産 ノート X(電気式CVT)
■全長×全幅×全高:4045×1695×1520mm
■ホイールベース:2580mm
■トレッド前/後:1490/1490mm
■車両重量:1220kg
■エンジン:直3DOHC
■総排気量:1198cc
■モーター最高出力:116ps/2900-10341rpm
■モーター最大トルク:28.6kgm/0-2900rpm
■サスペンション前/後:ストラット/トーションビーム
■ブレーキ前/後:Vディスク/リーディングトレーリング
■タイヤ前後:185/60R16