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2023年06月07日 19:37自動車・モータースポーツ雑記 第三回「ル・マン24時間耐久レース2023 LMHクラス参戦チームについて」

1923年に第一回大会が開催され、今年で記念すべき100周年を迎えるル・マン24時間耐久レース。その名の通りフランスのル・マン市で行われるこのレースはACO(フランス西部自動車クラブ)がオーガナイザーを務め、現在はWEC(FIA World Endurance Championship:FIA世界耐久選手権)の一戦に組み込まれています。
コースは殆どの区間が公道を閉鎖したもので、スタート/フィニッシュの僅かな区間だけパーマネントサーキットであるブガッティサーキットの一部を使用。13㎞程の全長を誇るコースは、最高峰クラスの速いマシンでも1週するのに3分以上を要します。
モナコGP、インディ500と並び「世界三大レース」に数えられる他、北米のデイトナ24時間、ベルギーのスパ・フランコルシャン24時間と並び「世界三大耐久レース」にも数えられます。

2016年にアウディが、2017年にポルシェが撤退して以降花形である最高峰クラスにはトヨタに比肩するライバルが存在しなかったWECですが、今シーズンは多くのエントラントが最高峰クラスに殴り込んできました。その中には60年代前半にル・マンを支配したフェラーリやかつての耐久王・ポルシェの姿もあります。無論、ライバル不在の中でも継続してきたトヨタとブランクのある他のエントラントとの間ではまだ地力に大きな開きがありますが、それでも分からないのがル・マンというレース。かつては下位クラスであるLMP2があわや総合優勝?という事態もありました。
というわけで今回の自動車・モータースポーツ雑記は目前に控えた今年度のル・マン24時間耐久レースの最高峰、ル・マン・ハイパーカー(LMH)クラスを戦うチームにフォーカスしていきたいと思います。

まず最初にご紹介するのは我らが日本を代表するエントラント、ディフェンディングチャンピオンにして今年六連覇の掛かる現在の絶対王者・トヨタGAZOO Racing。前述の通り、この5年間はライバル不在…と言っては他のエントラントに少々失礼かもしれませんが、事実上そのような状況の中ずっとWECを、ル・マンを戦ってきたチームです。2021年に規定がLMP1-HからLMHに切り替わってからもその強さは衰えることなく、また理不尽と言っても過言ではない性能調整を食らいながらも勝ち続けてきました。しかし、彼らはまだ強豪揃いの中でル・マンの勝利を手にしたことがありません。2016年には終始ポルシェとアウディを凌駕したものの、残り6分でトラブルに見舞われスローダウン。その間にポルシェに逆転されたのみならず、最後の周回を規定時間内に終えることができず失格の裁定を受け辛酸を舐めました。多くのファンがあの時の雪辱を望む以上に、彼ら自身が最も「誰にも文句を言わせない勝利」を渇望していることでしょう。

マシンはLMH規定の始まりから投入され早三年目となるGR010。先代のTS050からのノウハウも多分に生かされ開発されたこのマシンは、速さもさることながら24時間を戦い抜く“強さ”の面で圧倒的なアドバンテージを持っていると言えるでしょう。

続いてご紹介するのはイタリアからの紅い刺客、実に50年ぶりにル・マンに、スポーツカーレースにワークス復帰するフェラーリ。実働部隊を運営するのはGTカーレースに於けるフェラーリのセミワークスチーム的存在で、WECでも下位クラスに当たるLM-GTE Proで多くの経験値と実績を持つAFコルセ。今シーズンのWEC開幕から三戦を終えた現時点ではトヨタに土を付けることができる最有力候補のチームと目されています。そのスピードは確かなもので、復帰初戦の予選からいきなりトヨタの二台を下しポールポジションを奪取。多くのファンの度肝を抜きました。とはいえ現状は一発の速さだけで、レースペースに関してはまだまだトヨタに大きく水をあけられています。トヨタが何事もなく走り切ってしまえばまず勝ち目はないでしょうが、その何事もなく走り切るというのが非常に難しいのが耐久レースでありル・マンというレースなので彼等もまた諦めることなく虎視眈々と勝利を狙って走ることでしょう。

マシンはトヨタと同じくLMH規定の499P。ワークスマシンとしては312PBから数えて52年振り、カスタマー向けだった333SPから数えても29年振りに開発された「フェラーリのスポーツプロトタイプ」です。

続いてご紹介するのはグループC時代に二度、LMP1時代に一度と計三度ル・マンを制した経験のある地元フランスの英雄、プジョーです。
プジョーは昨年の途中からWECに参戦しており今年完全新規参戦となるエントラントより多少のアドバンテージを持って2023年に臨んだはずですが、その新規参戦チームに後れを取るほどに成績は低迷。攻めすぎたマシンコンセプトが大きな仇となっているようです。ル・マン本番までに劇的な改善は難しいでしょうが、地元のファン達の為にも頑張ってほしいところ。

マシンはLMH規定の9X8。現代のスポーツプロトでありながらリアウイングを持たないスタイリングは、発表当初多くのファンや関係者の度肝を抜きました。というのも、LMH規定では車体を地面に押し付けるダウンフォースと空気抵抗(ドラッグ)からなる空力効率(L/D)の値が厳格に決められているため、グラウンドエフェクトのみでダウンフォースを稼ぎドラッグの発生源となるウイングを廃したそうな。しかし先述の通り、この攻めすぎたコンセプトが多くの問題を生み出しているのが現状の成績不振の最大の原因と言っても過言ではないでしょう。とはいえこのコンセプトは当初から長いストレートを持つル・マンのコースに焦点を絞ったものとも言われており、コンセプトが上手く機能すればル・マン上位入賞の可能性も…あるんでしょうか?望みは薄いように見受けられます。

続いてご紹介するのはカムバックを果たしたドイツの“耐久王”、ル・マン通算19勝の圧倒的な記録を持つポルシェ。フェラーリ同様ワークスチームの実働部隊は外部委託。インディやNASCARを主戦場に大活躍、F1参戦経験もありスポーツカーレースでも実績のある北米の名門・チーム・ペンスキーが指揮を執ります。現状では戦闘力でトヨタやフェラーリに大きく後れを取っていますが、第二戦ポルティマオ6時間では三位表彰台を獲得、前戦スパ6時間でも最終ラップまでフェラーリと三位争いを展開する等活躍。ル・マンでもレース展開次第では上位進出を狙える可能性はあるでしょう。

マシンはかつてIMSA GTP/グループCカーレースを席巻した962/962Cと連番を与えられた963。LMH規定ではなく、今年からLMHクラスへの参戦が認められたル・マン・デイトナ・h(LMDh)規定に準拠して作られたマシンです。この規定は同じく今年からIMSAスポーツカー選手権・GTPクラスに於いてデイトナ・プロト・インターナショナル(DPi)規定の後継として採用されたものですが、予てよりWECのLMHクラスに参戦可能な共通規定として企画されたものでした。4社の決められたメーカーから供給されるLMP2用の量産シャシー(ポルシェの場合マルチマティック製)をベースとし、トランスミッションやハイブリッドシステムも共通のものを義務付けられた本規定は設計・開発の自由度に関してはLMHに大幅に劣る分、開発費やマシン自体の価格をより低コストに抑えることができます。

多くのプライベーターに愛された962ように、この963もまたカスタマー供給を前提として企画・開発されたのです。事実、今年のル・マンにはワークスであるペンスキーの三台の他にJotaスポーツからも一台の963がエントリー。962の時代とは違いプライベーターが独自の改良を…というのは現在の規定上難しいでしょうが、それでも多くのプライベーターに愛されるマシンになってほしい一台です。もしかしたら、963というネーミングもそういった願いが込められたものなのかもしれませんね。

続いてご紹介するのはIMSAからの刺客。キャディはお好き?結構。ではますます好きになりますよ。
北米・ビッグ3の一つであるゼネラル・モータース(GM)の高級車ブランドであるキャデラックですが、2017年からはシボレーブランドのコルベットに代わってこのキャデラックがIMSAのスポーツカー選手権を戦ってきました。そしてWECとIMSAの規定統一が果たされた今季、晴れてWECの最高峰に殴り込んできたのです。実働部隊はこれまたインディ/NASCARの名門、チップガナッシ・レーシングが務めます。開幕から三戦、安定感はあったものの一度も表彰台に上がれていないキャデラック。ル・マンでは是が非でも結果が欲しいところでしょう。前戦のスパでは一台が超高速のオールージュで大クラッシュを喫し大破した為、急遽IMSA用のシャシーをル・マンに投入することが発表されています。また、ル・マンではチップガナッシの二台の他にアクション・エクスプレス・レーシングが三台目のキャデラックとして参戦することが発表されており、物量作戦と持ち前の信頼性で上位入賞を果たすことができるのかが注目ポイントです。

マシンはポルシェ同様LMDh規定下で製作されたVシリーズ.R。モノコックはダラーラ製を使用します。エンジンはクロスプレーンのV8を採用、近代的なプロトタイプのルックスからドロドロとアメリカンなサウンドが奏でられる光景はなかなかに異様と言えます。

この他、車体の設計から自力で行う完全なるプライベーター体制で参戦するのがグリッケンハウス(SCG)とヴァンウォールの2チーム。

映画監督であるジェームス・グリッケンハウス氏が立ち上げたレーシングカーコンストラクター/少量生産スポーツカーメーカーであるSCGは、LMH規定初年度である2021年からル・マンに参戦。メーカー直系のワークスチームとは歴然とした開発力の差がありますが非常に野心的なチームであり、2022年のル・マンでは特認でLMP1車両で参戦していたアルピーヌを負かし三位表彰台を獲得しています。
マシンはSCG007 LMH。メーカー直系ワークスチームとは違い内燃機関のみを動力源とするノンハイブリッドの車両です。ローラT70をオマージュしたというややクラシカルなルックスは非常に個性的で、WECのグリッドに華を添えます。当初はアルファロメオ製V6ターボを搭載予定でしたが、アストンマーティンが駄々を捏ね規定変更に振り回された結果ピポ・モチュールに依頼し新たに開発したV8ツインターボを搭載する流れとなりました。ちなみに当のアストンマーティンは結局参戦すらしていません。迷惑なもんです。

もう一方のプライベーター、ヴァンウォールはF1に於いて史上初のコンストラクターズチャンピオンを獲得したチームの名を冠していますが、その実態は2020年までLMP1クラスに参戦していたバイコレスです。代表を務めるのは何かと黒い噂の絶えない男、本業は歯医者のコリン・コレス。昨年はエントリーを却下されてしまった為、今年は待望のWEC復帰となります。ドライバーラインナップに97年F1チャンピオンでインディ500ウィナーでもあるジャック・ヴィルヌーヴを擁する等して話題を作りましたが、当のヴィルヌーヴはル・マン直前に事実上の解雇の憂き目に遭っています。
マシンはグリッケンハウス同様ノンハイブリッドのLMH規定車両、ヴァンダーヴェル680。ブリティッシュレーシンググリーンを纏ったこのマシン、見た目は非常にイカしていますがその実力は…

さて、今年のル・マンを戦うLMHクラス参戦各チームの簡単な紹介をしてきましたが、いかがでしたでしょうか?お気に入りのチームは見つけられましたか?“推し”を作って観戦すると、レースをより楽しく観戦できるかもしれないのでお勧めです。
ル・マンのそのものの動向としては、直前にBoP(性能調整)でLMHクラスのうち競争力のある四台にウェイトハンデが課され、トヨタはその中でも最も重い37㎏増のハンデを背負うこととなりました。近年はWECに限らず多くのカテゴリでBoPによる性能の均整を図ることが多くなりましたが、純粋なコンペティションを望むファン層からは不満の声が上がっていますし勝つために必死に速いマシンを開発しているチームからしてもたまったものではないでしょう。
とはいえ、詳しい事情を知らないファン層からすれば接戦の方が面白く映るのも事実。大きなハンデを課されたトヨタがどのようにル・マンを戦うのか?今年も目が離せない24時間が始まろうとしています。

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