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2024年01月12日 14:18ブレーキパッドの残量・交換基準について

今回は自動車の制動装置、つまりブレーキに関するお話です。
現在流通している普通乗用車には厳しい衝突安全基準が課されており、ヤリスやフィットといったコンパクトカークラスでさえも1トン前後の重量を誇ります。そんな重量物が30~60km/hの速度で市街地を走り回っているというのは冷静に考えれば恐ろしいことであると思いますが、その強大な慣性を確実に殺し減速・停止させる、自動車を安全に運行する上で欠かせない装置が制動装置です。
「なぁ~~~にを当たり前のことを!!」と仰るかもしれませんが、既に普通自動車の運転免許を所持していて日常的に路上に出ているドライバーであってもその仕組みに関しては理解してない・関心がないという方が恐らく多数派で、「踏めば車が止まる装置」程度に思われているのが現実かと思われます。
ドライバーというのは路上にいる全ての命に対して責任を持たねばならない立場ですから、その命を守るための装置について詳しく知っておくことも重要でしょう。

ブレーキパッドの残量・交換基準について

上の写真は新品のブレーキパッド。
金色に塗装されメーカーロゴの入った黒いシムが付いてる側が裏金などと呼ばれる台座の部分で、これに摩擦材(アスファルトのようにザラザラしているグレーの部分)が貼り付けられている構造です。

ブレーキパッドの残量・交換基準について

上の写真はブレーキパッドが付いた状態の右後輪のブレーキシステム(パッドは交換前のもの)。
ドライバーがブレーキペダルを踏むとマスターシリンダーから油圧が発生、各輪のブレーキキャリパーにブレーキフルードが送り込まれピストンがせり出し、ブレーキパッドの摩擦材面をタイヤと一緒に回転するブレーキローターに押し付けます。簡単に言えば高速で回転する円盤を掴んで止めるとか挟み込んで止めるといった感じでそれだけでもブレーキは次第に磨り減っていくものだというのが漠然とわかるかと思いますが、もっと厳密な言い方をすれば自動車のブレーキは運動エネルギーを摩擦によって熱エネルギーに変換する所謂熱交換によって制動力を生み出しています。

変換して生まれた熱エネルギーの全てを即座に大気に放出できる優れた熱交換装置があればいいのですが、現実にそんなものは無いのでパッドやローター、キャリパーといったブレーキシステムに一度熱を蓄積したあと徐々に大気へ放出していくのを待つしかありません。当然サーキット等でのスポーツ走行では高い速度域からのブレーキングによって大きな熱エネルギーが発生しますし、コーナーが連続すれば冷却が間に合う前に次のブレーキングが始まり更に熱エネルギーが蓄積されてしまいます。そしてブレーキの蓄積できる熱が飽和・即ちオーバーヒート状態になればパッドの摩擦材から発生するガスによるフェード現象やパッド表面の炭化、ブレーキフルードの沸騰によるベーパーロック、ローターの微細なヒートクラック(ひび割れ)や完全なる割れの発生、キャリパーの開きやピストンのダストブーツ/シールの溶け等といったあらゆる異常を引き起こし、最悪の場合ブレーキが全く制動力を発揮しない状態に陥ります。下り坂でのブレーキの多用が危険なのも、冷える間もなく熱が加わり続けるからなんですね。

これらの熱害対策の為に高温対応のスポーツブレーキパッドやフェードの原因となるガスを逃がすスリット/ドリルドローターに交換したり、走行風を直接ブレーキシステムに当たるよう引き込み冷却効率を上げるブレーキダクト等を装備したり、場合によってはローターやキャリパーのサイズ自体をより大きなものに換えて熱容量を上げる等のチューニングを行うわけです。
ここまで来て察しのいい方はお気づきでしょう。パッドやローターの減りというのは即ち体積の減少なので、制動力に大きく関わる熱容量の低下に繋がるのです。その為、パッド/ローターの残厚が新品の状態とある程度減っている状態では発揮できる制動力も減りの早さも異なってきます。
では実際のところどの程度の残量になったらパッドを交換すればいいのか?
実は単に車検の基準だけの話をすればブレーキパッドやローターの残厚に関する基準は存在せず、ブレーキテスターで規定の制動力が出てしまえば摩擦材の残厚が1mmを切っていようが車検を通過できてしまうのです。

当然ながらそのような状態で車検を取得できてしまった車は何時何処でブレーキが効かなくなるかわかったものじゃない非常に危険な状態なわけで、個人的にはこれは非常におかしな話だと思うのですが、それでも現状はこのようなことがまかり通ってしまう現実があるわけです。
となれば車のユーザー様自身がブレーキの残量に常に気を配るか、我々整備士がご入庫頂いたお車のブレーキのコンディションをしっかり見極め危険な状態になるより早くお客様に交換をお勧めするかしかありません。前者は当然ながら一定以上の車に関する知識が必要になる関係上全てのドライバーに要求するのは酷な話で、やはり我々整備士がしっかりする他ないということでしょう。

ブレーキパッドの残量・交換基準について

というわけで私の主観も入るのですが、理想を言えばブレーキパッドは新品の半分ほどの残量になったところで交換するのが好ましいと言えます。前述の熱容量の関係もあり摩擦材が無くなるギリギリまでパッドを使い切るのは危険が伴いますし、もし摩擦材が無くなり裏金がローターに接触してしまうようなことになればローターの摩擦面も使い物にならない程に荒れてしまい、残厚的には問題がなかったローターまでも同時交換しなければならない事態に発展しかねません。
国産車であれば新品パッドの摩擦材は10mm前後ですので、私の場合4mm前後の残量であれば必ず交換のお見積りを出させて頂いております。また、年間の走行距離や過去のブレーキの減りのペース等から判断し次回の点検までブレーキパッドが持ちそうにない場合にはそれ以上の残量でも交換をお勧めさせて頂く場合もあります。
ブレーキはタイヤと並ぶドライバーの命綱ですから、使い切るという考え方はお勧めしておりません。どうかご理解頂けたらと思います。

ブレーキパッドの残量・交換基準について

対象車両情報

初年度登録年月平成24年メーカー・ブランドメルセデス・ベンツ
車種SクラスグレードS350 ブルーエフィシェンシー
型式RBA-221057

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