新車試乗レポート
更新日:2022.03.19 / 掲載日:2022.03.19

真冬のテスラ モデル3を試す【石井昌道の自動車テクノロジー最前線】

文●石井昌道 写真●ユニット・コンパス

 最近は暖かい日が多くすっかり春めいてきているが、つい1ヶ月ほど前のこと、アップデートを受けたモデル3を試乗する機会に恵まれた。1泊2日でどこかを目指そうとしたのだが、スタッドレスタイヤを履いていたので、せっかくなら雪のあるところがいい。そういえば、ちょうどスバル・ソルテラのプロトタイプ試乗会が群馬サイクルスポーツセンターで行われる時だったので、その往復に使わせてもらうことにした。いつもは東京と箱根を往復するEVテスト(自分が担当する当Web内の連載)の番外編といった気分で、電費の計測や急速充電器の使用レポートを兼ねてのドライブだ。雪道を目指すのだから、当然ヒーターの負荷は大きく、電費は不利になるだろうが、それもまたリアルワールドのテストになる。

 試乗車はAWDのロングレンジで一充電走行距離は689km(WLTCモード)。以前のモデルは580kmだったので大幅に進化した。また、ユーザーインターフェースの進化、音声コマンドの採用、ウインカー作動時に死角の映像がモニターに映し出されるなどが主なアップデートの内容。また、AWDロングレンジは19インチのタイヤ&ホイールを標準装着しているが、今回は18インチのスタッドレスタイヤ(YOKOHAMA ice GUARD iG70)&RWDのスタンダード用ホイールだった。

テストカーには冬季ということで、スタッドレスタイヤ(YOKOHAMA ice GUARD iG70)が装着されていた

 東京出発時はバッテリー残量86%、航続可能距離495kmの表示。ほとんど混雑のない都内の街中を普通に走ったときの航続可能距離表示なので、高速道路の走行、目的地付近の寒さによるヒーターの負荷、出発地に対して目的地の標高が約900m高いことなどを考慮すれば、少し落ち込むことは予想していた。それでも片道160kmほどであり、無充電でも往復が可能であろう。

 出発地から高速道路入口までの一般道は16km。多少の渋滞はありつつも平均速度19.2km/hだったので平均的な流れよりもちょっと遅いといったところで、電費は6.9km/kWhだった。

 関越自動車道の練馬ICから月夜野ICまでの134kmは電費が5.44km/kWh。

CHAdeMO用の専用アダプター(オプション)を利用することで、公共施設に多い急速充電器も活用可能

 充電の必要はなかったが、急速充電器の使用レポートをしたかったので赤城高原SAで出力40kWのCHAdeMOを30分間使用して18.7kWhを充電(充電器の表示)。バッテリー残量52%、航続可能距離298kmから72%、406kmになった。

 月夜野ICから目的地の群馬サイクルスポーツセンターまでは13km。きつい登り区間が続き、電費は1.86km/kWhにまで落ち込んだ。

 出発地から目的地までのトータルは走行距離165km、電費は5.18km/kWhだった。ちなみに外気温は出発地点が8℃、赤城高原SAが3℃、群馬サイクルスポーツセンターが0℃でヒーターの負荷はそれなり大きかった。

 ソルテラの試乗を終えた夕方には気温は-5℃まで下がっていて、そこから復路となる。宿泊地の高崎のホテルまでは62kmの距離で電費は10.33km/kWh。下りなので寒いのにずいぶんと良かった。

 翌日はテスラ・スーパーチャージャーがある道の駅 玉村宿を目指す。ホテルから12kmほどだが高速道路ということもあって電費は5.61km/kWh。このときのバッテリー残量は47%、航続可能距離は272kmだった。スーパーチャージャーは出力120kW。充電開始直後は90kW以上で充電されていったが、70%を超えると60kW台後半、85%では41kW、90%では35kWと上限に近づくにつれて落ちていった。32分間の使用で33kWhを充電。平均的に60kW程度の出力だったことになる。バッテリー残量は90%、航続距離は515kmとなった。

 そこからの復路は高速道路の電費が6.77km/kWhと好調。一般道はひどい渋滞で3.5km/kWhとなってしまった。

 トータルでは334kmを走って電費が5.9km/kWhとなった。往路は5.18km/kWh、復路は7.78km/kWhとけっこうな差があるのは標高差の影響がほとんどだろう。一般的にスタッドレスタイヤは電費が落ちる傾向にあるが、今回はサイズダウンしているので19インチのサマータイヤとの差はわからない。おそらく大差はないだろう。乗り味としては、サマータイヤに比べればややソフトな印象があり、ロードノイズは多少なりとも大きくなっていたが、ドライの高速道路でも快適かつ不満のない操縦安定性だった。

 雪道ではタイヤのグリップが良く、デュアルモーターAWDの威力が発揮されて頼もしい走りを楽しめた。

 電費が落ちる傾向がある冬場の試乗だったが、バッテリー残量を気にせずに走れるのはモデル3の強みだ。今回は急速充電器の使い勝手を試すべく2度の充電をしているが、無充電だったとしても計算するとバッテリー残量23%、航続可能距離132km程度と表示されただろう。モデル3ロングレンジならば、スキー場に向かうロングドライブでも心配はいらないということだ。

自動車ジャーナリストの石井昌道氏
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石井昌道(いしい まさみち)

ライタープロフィール

石井昌道(いしい まさみち)

自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

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自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

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