新車試乗レポート
更新日:2022.03.16 / 掲載日:2022.02.17

【試乗レポート BMW iX3】電気自動車であることを主張しすぎないところに美点がある

文●大音安弘 写真●澤田和久、内藤敬仁

 BMWの電動サブブランド「BMW i」の第二章の幕が開けた。新たなフラグシップとなる「iX」は、第一章のフルオリジナルモデル「i3」や「i8」の流れを汲むフルオリジナルモデルとして開発されている。その一方で、最新のBMW iには、普及型といえる新モデルラインが用意されている。その第一弾となるのが、ミッドサイズSUV「iX3」だ。その名とスタイリングが示すように、これは第3世代となる現行型「X3」と基本を共有する新型EVなのだ。

いい意味で「EVらしさ」を控えめにしたスタイリング

 まずはビジュアル的な違いに注目してみると、内外装デザインはX3との共通性が極めて高い。もしあなたがiX3でドライブに出かける際、スターターボタンを押すまでEVと気が付かなくとも決して不思議ではない。そのくらいの感覚なのだ。具体的な違いを挙げると、BMWを象徴するキドニーグリルがブラックパネル仕様となり、エアインテークを縮小。さらにグリルとフロントバンパーには、ブルーのアクセントが加わる。テールエンドでの大きな変化は、X3のようにテールパイプが存在せず、そのエリアがブルーのパネルで塞がれているくらい。インテリアのビジュアル面の差別化は、より限定的。スタートボタンやシフトまわりに、ブルーのアクセントが取り入れたくらいのものだ。BMWらしいのは、iX3がMスポーツ仕様のみとなること。EVでもBMWの「駆け抜ける歓び」が持続可能であることを示したいのだろう。

EV化によるネガを感じさせない秀逸なパッケージング

 メカニズムでは、BMW iX3が後輪駆動車となるのが大きな特徴となる。モーターやシングルギアのトランスミッションなどを一体化させた駆動系をリヤアクスル上に配置し、電動システムと必要となる補機類は、かつてのエンジンルーム内に。そして、最大の重量物となる駆動用バッテリーは、キャビン下に収めている。BMWでは、リチウムイオンバッテリーの形状の最適化を図ることで、キャビンへの影響を抑制。前後席共に、着座位置は違和感のないものに仕上げている。この点は、既存のプラットフォームをEV化したモデルとしては優秀だ。事実、ラゲッジスペースも標準時510L~最大1560Lを確保。X3が、標準時550L~最大1600Lなので同等と言っても良いだろう。何しろPHEVのxDrive30eではラゲッジ容量はiX3の標準時と最大時のいずれも‐100Lとなる。もっともPHEVは、エンジンとモーターのデュアルパワー仕様となるので責めることは出来ないが、iX3のSUVとしての使い勝手の良さを示す一つの指標にはなるはずだ。

 心臓部となるモータースペックは、最高出力210kW(286ps)、最大トルク400Nmを発揮。2.0Lディーゼルエンジン車「20d」と最大トルクは同じ。しかしEVは発進時から最大トルクを発揮できるのが強み。航続距離を左右する駆動用リチウムイオンバッテリーは、80kWhの大容量となり、フル充電時は、WLTCモードで508kmと公表されている。もちろん、実走値は、環境や走行状況で異なるが、遠出でも無充電で往復できる事が多いはずだ。充電方式については、150kWの高出力の急速充電に対応。200Vの普通充電も最大9.6kWまで対応可能な性能を備えている。

 運転操作は、基本的にはエンジン車と同様だが、アクセルワークは、ワンペダル仕様なので、クリープレス。アクセルオフ時の回生ブレーキの強さは、3段階+自動調整の4モードを用意。走行中の減速量の調整と完全停止は、基本的にはフットブレーキで行うが、シフトレバーのBモードでは、完全なワンペダル走行もできるようになっているのも進化のポイントだ。静かさが売りのEVだが、BMWでは「BMWアイコニックサウンド エレクトリック」という機能があり、ONにすると、走行状況に合わせて独自の駆動音が奏でられる。

強力な加速とシャープなハンドリング

 短時間の試乗であったが、iX3を試すことができた。その第一印象は、X3と別物であるという意識だ。まずは、モーターの特有のレスポンスの良さが生む加速の良さ。シングルギアなので、目指す速度まで一気に加速する。この味わいは、EVならではのものだ。そして、EVサウンド機能がオフにできるので、走行中の静かで、疲れの低減につながるはずだ。しかし、iX3にBMWらしさがあるかという問いは、大きく評価が分かれるだろう。ステアリングを含め、動きはかなりクイック。しかも、シャシーと上屋の動きにも、少しズレを感じる。エアサスならば、上手く往なすこともできるだろうが、アダプティブダンパーでは、加減速やコーナーでの重心の移動で生じる動きがシャープに表現されすぎると思う。また段差を越えた際のショックも大きめだ。EVスポーツカーと受け取れば良いが、SUVならではの魅力を求めると少し違う。そして、運転面では、パドルレス及びシフトのマニュアルモードレスのため、走行中の回生ブレーキの調整できないのが残念だった。

 X3のEVモデル「iX3」は、強力な加速とシャープなハンドリングが生む刺激的な走りを意識的に与えることで、電動車らしさとBMWらしさの両立を目指しているのだろう。しかし、そのキャラクターは、4ドアクーペの「iX4」がマッチするはず。ここまで尖った味つけを、BMWらしいと捉えられるかで評価は変わる。商品としてのEVの魅力を評価するならば、ミッドクラスの高級車としては、現実的な価格の提示といえる。何しろ、Mスポ仕様に加え、ヴァーネスカレザーの内装、電動パノラマガラスサンルーフ、電動テールゲート、アダクティブLEDヘッドライト、464W16スピーカーのハーマン/カードンサラウンドサウンドシステム、スポーツシート、20インチアルミホイールなどフルオプションに迫る内容なのだ。実際に、PHEVの「X3 xDrive Mスポーツ」とは、2駆と4駆の違いなどもあれど、2万円高に収めている。その価格には、ハーマン/カードン、サンルーフ、20インチアルミは含まれず、同等装備となるPHEVの方が高くなるため、かなり戦略的な価格といえるだろう。ただSUVらしさを含めると、X3の方が魅力的に思えるし、EVならば、無理をして「iX」に手を伸ばした方が欲求を満たしてくれるだろう。ただ電動化に向けた現実的な提案の第一歩であることは間違いはなく、今はiX3の熟成と今後の展開に注目したい。

BMW iX3 Mスポーツ(電子式CVT)

  • ■全長×全幅×全高:4740×1890×1670mm
  • ■ホイールベース:2865mm
  • ■車両重量:2200kg
  • ■バッテリー総電力量:80kWh
  • ■モーター定格出力 後:286ps/6000rpm
  • ■モーター最大トルク前/後:40.8kgm/0-4500rpm
  • ■ブレーキ前/後:Vディスク
  • ■タイヤ前後:245/45R20・275/40R20
  • ■新車価格:862万円
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大音安弘(おおと やすひろ)

ライタープロフィール

大音安弘(おおと やすひろ)

1980年生まれ。埼玉県出身。クルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者に転身。現在はフリーランスの自動車ライターとして、自動車雑誌やWEBを中心に執筆を行う。歴代の愛車は全てMT車という大のMT好き。

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1980年生まれ。埼玉県出身。クルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者に転身。現在はフリーランスの自動車ライターとして、自動車雑誌やWEBを中心に執筆を行う。歴代の愛車は全てMT車という大のMT好き。

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