新車試乗レポート
更新日:2022.01.25 / 掲載日:2021.12.06
新型アウトランダーPHEV〜進化の全て〜その1:先行試乗インプレッション
ミツビシ初のPHEVがデビュー9年でフルチェン!
先に発表された北米仕様はガソリン車だったが、国内仕様はPHEV。
サーキットでの先行試乗会でその素性を探った。
●文:川島茂夫 ●写真:澤田和久
新世代PHEV搭載! その実力は!?

主要諸元(P) ※オプションを含まず
●全長×全幅×全高(㎜):4710×1860×1745 ●ホイールベース(㎜):2705 ●最低地上高(㎜):200 ●車両重量(㎏):2110 ●パワーユニット:2359㏄直列4気筒DOHC(98kW[133PS]/195N・m[19.9㎏・m]+フロントモーター(85kW/255N・m)+リヤモーター(100KW/195N・m) ●WLTCモード総合燃費:16.2㎞/ℓ ●使用燃料・タンク容量(ℓ):レギュラー・56 ●タイヤサイズ:255/45R20
先行試乗インプレッション
動力性能も操縦性も
間違いなく新次元
ルノー・日産との協業によって開発された新型プラットフォーム、従来型と同じ方式のPHEVシステムを採用しているが、ハードウェアを一新するとともに制御も改良。従来型ではガソリン車にのみ設定されていた3列シート仕様をPHEVに設定し、ガソリン車を廃止。マイパイロットはノートに採用されているカメラ/ミリ波レーダー併用型の最新プロパイロットと同等にグレードアップ。すべてを進化させたFMCである。
PHEV初の3列シートのサードシートは男性が座るにはヘッドルームが狭すぎる。対応できる最大身長は160㎝くらいであり、補助席程度の機能である。もっとも、先代のサードシートの居住性も常用するには窮屈なので、適応用途に影響するほどではなく、乗り換えのウイークポイントにはならないだろう。
注目は走り。まずは動力性能だ。先代も全開加速や高速域での余裕は相当なものだったが、新型はそれを上回る。駆動用モーターの出力を考慮すれば当然の結果だが、速くなっても荒くならないのが新型のミソ。唐突に踏み込んでも滑らかに大きな駆動力を持続し、トルク変動が小さい。瞬発力と加速の滑らかさの両立はノートを思わせ、日産との協業とのたまものかとも想像したが、ミツビシが独自に開発した制御とのこと。いずれにしても速さと質の両面で従来型から向上。電動が可能とした緻密な制御を活かした特性である。
次にフットワーク。トルクベクタリング等の4輪制御技術を統合して能動的に運動性を制御するS-AWCは駆動用モーターの出力アップで前後出力比が後輪寄りとなり、トルクベクタリングのブレーキ制御を前後輪にしたことでステージアップしていた。
適切な速度と舵角を与えればその通りのコーナリングラインを描く。応答遅れも過剰反応も極めて少ない。限界に近いコーナリング速度で深めの舵角を与えれば後輪が滑り出すが、舵角なりのスリップアングルで収束する。ならばと減速と深切りを合わせて振り込むようにアプローチすれば、スリップアングルが大きくなっても舵角を抑えるくらいで収まってしまう。もっと振り込んで、と気張っていると最終的にはASCが介入して姿勢の乱れを抑え込む。
ASCの介入タイミングや回頭性はドライブモードによって異なるのだが、ターマック(舗装)とグラベル(ダート)では本格スポーツカーもかくやと思わせる操縦性を示した。もちろん、高い車高や重心などの物理的な条件は如何ともしがたく、オーバースピードならばコーナリングラインを絞るには減速しか手立てはないが、力学の限界を超えない限り自由自在。ヘビー級SUVを忘れてサーキット走行を堪能できた。
PHEVの特徴のひとつである巡航用エンジン直動機構のチェックは、70㎞/h以上で穏やかに走行できる距離が短く、バッテリー蓄電量にも余裕があったためにできず。進化型マイパイロットも使える状況ではなく、この辺りは公道試乗を待つしかないが、動力性能でも操縦性でも、前後独立した電動4WDがもたらした走りは、いささか大袈裟かもしれないが、次元が違っている。SUVにそこまでの操縦性が必要かどうかの論議は別として、操った者を感嘆させるには十分であり、またS-AWCの狙いも直感的に理解できる。
誤解されそうなので付け加えるが、オンロードの限界走行がアウトランダーPHEVの走りの本質ではない。後輪を大としたモーター出力設定は悪路踏破性向上の要点のひとつであり、S-AWCもダートや雪道での操安性向上が実用走行での主目的。SUVらしさを抑えてなおSUVの枠を超えたファントゥドライブを味わえる。オン&オフロードを楽しく過ごすためのプレミアムSUVなのだ。
プロフィール
MITSUBISHI新型アウトランダーPHEV

ロングセラーが最新技術で全面刷新
ミツビシの独自開発だった先代とは異なり、新型はルノー・日産との協業を活用。プラットフォームは北米日産のSUV・ローグと共用する一方、エンジンは旧アウトランダーがベースで、型式も同じ4B12型だ。日産・プロパイロットと同様のマイパイロットの搭載により、フラッグシップにふさわしい装備内容ともなった。
