新車試乗レポート
更新日:2022.04.01 / 掲載日:2021.11.22
【新型ランドクルーザー】過酷オフロードテスト
ガレ場でもクラウン!
過酷なオフロード走行でわかった!
TOYOTA 新型ランドクルーザー トンデモ進化、そのスゴさ!!
大人気ですでに納期2年待ちの公式アナウンスとなっている新型ランドクルーザー。前回のオンロード試乗に続いてオフロード走行を試す機会に恵まれた。
試乗コースは“さなげアドベンチャーフィールド”。
過酷な環境でその進化を確認しよう!
●文:山本シンヤ ●写真:トヨタ自動車(株)

どんな道でも快適に駆け抜ける、世界最強のマルチパフォーマンスカー


伝統の技術と最新技術を
バランス良く融合させた
ランドクルーザー(以下ランクル)と名乗る全てのモデルの開発思想は、世界中のあらゆる地域・道で使われることを想定し、最も厳しい基準を持ってクルマ作りを行なうことだ。そのポイントは極めてシンプルで次の3つだ。
「道なき道でも自由に走れる」
「命・荷物を運ぶために壊れない」
「もし壊れても何とかして必ず帰ってくることができる」
実はこれ、全てのクルマ作りの基本だが、歴代ランクルはそれを愚直に実現してきたからこそ世界で絶大な信頼と支持を集めた。
様々な用途やニーズに合わせ進化をしてきたランクルシリーズだが、14年に亘り販売されてきた200系が300系へと世代交代。
ランクルのキーワードは『耐久』、『信頼』、『悪路走破性』だが、それが故に他の部分に課題があったのも事実だ。更により厳しくなる環境規制や衝突要件も無視できない。それらを全てクリアするために選んだ道は全面的刷新だった。
300系はランクル伝統の「フレーム構造」と80系からの黄金比と言われる「2850㎜のホイールベース」を継承しながら、TNGAに基づいたプラットフォーム、パワートレーン、そしてフラッグシップに見合う内外装デザインを新しく採用した。長年に渡る技術の組み合わせと最新技術がバランスよく融合されている。
その一部をざっくりと説明すると、車体(ボディ+フレーム)は約200kgの軽量化、重量配分の適正化、サスペンションの配置の見直し、更には機能性を追求したエクステリア/インテリアの採用など大きく進化。その上で、オフロード走行をサポートする制御アイテムやオン/オフの走りを高次元でバランスさせるために前後スタビライザーを独立して電子制御する「E-KDSS(GRスポーツ)」などを採用する。
エンジンはガソリンがLS譲りながらもランクルの用途に合わせて60%近くを専用設計した3・5ℓV6ツインターボ、ディーゼルは新開発の3・3ℓV6ツインターボを用意。どちらもランクル流のカーボンニュートラルの実現のためにダウンサイジング化された高効率ユニットである。
すでに本誌でもオンロードの実力は紹介済みだが、やはりランクルの本質はオフロードを体験しないと始まらない。今回、「ランクルの聖地」と呼ばれる「さなげアドベンチャーフィールド(豊田市)」にある様々なオフロード路面を走らせたので報告したいと思う。
1ランク上の走りを
見せるGRスポーツ
今回走ったコースは急こう配/コブセクション/岩石直登路/V字谷などで構成される「テクニカルコース」と、急こう配、岩石路面のS字、沢登りなどで構成される「林間コース」の二つだ。
まず200系で走る。これだけ乗ると「さすがランクル!!」と感心するが、300系に乗り換えると「上には上がある」を実感。
さなげの急こう配には途中に大きな凸凹が存在する。200系では頭が揺すられるほど動くが、300系は「道が変わった?」と錯覚するくらい揺れが少ない上に、体に伝わるショックや路面からのキックバックも少ない。更に勾配の強い道はクロールコントロールを使用。200系での機能は同じだが、速度調整やブレーキの掛け方は300系のほうが緻密だ。基本素性の刷新による接地性向上と制御の進化が効いており、タイヤの性能をより効果的に使えるようになった証拠だ。
コブセクションは「こんなに伸び縮みするの?」と言うサスペンションストロークに加えて緻密なアクティブトラクションコントロールの相乗効果で、大きなコブがちょっとした凸凹に思えてしまうくらい簡単に走破できた。岩石路面では、駆動力/サスペンション/ブレーキ油圧を統合制御するマルチテレインセレクトを「ロック」で走行。「ここもクルマで行くの?」と言うような岩場だが、感覚的にはちょっと凹凸の多い急な坂道を上るくらいのイメージで走れてしまった。とにかくクルマが安定しており、スリップ検知→駆動力配分までのロスがほとんどないので、クルマに対する信頼度は200系とは雲泥の差だ。
ノーマルでも十分な性能を持つが、GRスポーツはそのレベルが1ランク上だ。それはオフロードではノーマル系よりも足がより柔軟に伸びるので接地性がより高く、路面を掴む感覚は強いと感じた。これはスタビライザーをオンロードではロック、オフロードではフリーにできるE-KDSSとそれに合わせて最適化された専用サスの効果による物である。
そろそろ結論に行こう。300系の凄さは、200系を超える性能を「誰でも」、「安心して」、「快適に」走る事ができることにある。更にオンロード性能の進化も踏まえると、まさに世界最強の「マルチパフォーマンスカー」だ。




















主要諸元/主要装備
主要諸元(GR SPORT 7人乗り)
●全長×全幅×全高(㎜):4965×1990×1925 ●ホイールベース(㎜):2850 ●車両重量(㎏):2520 ●駆動方式:4WD ●パワートレーン:3444㏄V6気筒DOHCツインターボ(415PS/66.3㎏・m) ●トランスミッション:10速AT ●WLTCモード燃費(㎞/ℓ):7.9 ●燃料タンク容量(ℓ):80(無鉛プレミアム) ●最小回転半径(m):5.9 ●サスペンション前/後:ダブルウィッシュボーン式独立懸架コイルスプリング/トレーリングリンク車軸式コイルスプリング ●ブレーキ前/後:ベンチレーテッドディスク/ベンチレーテッドディスク ●タイヤサイズ:265/65R18
主要装備(GR SPORT 7人乗り)
マットグレー塗装18インチアルミホイール、GR専用チューニングサスペンション、E-KDSS(エレクトロ キネティック ダイナミック サスペンションシステム)、電動デフロック(フロント・リヤ)、マルチテレインセレクト、ドライブモードセレクト、プロジェクター式LEDヘッドランプ+LEDターンランプ、LEDサイドターンランプ付オート電動格納式リモコンドアミラー(ブラック塗装)、トヨタセーフティセンス、GR専用ラジエーターグリル、スマートエントリー&スタートシステム、GRエンブレム付フロントシート、盗難防止システム+指紋認証スタートスイッチほか
ランクル兄弟・オフロードの実力は!?【プラド/70】
ランドクルーザー プラド

日本人の使い方に最も合ったランドクルーザー
シリーズの中ではライト系に属するプラドだが、ランクルの名に恥じない性能を持つ。現行モデルの登場は2009年なのでステアリングの重さや制御系の粗さなどに時代を感じる部分がないと言えば嘘になるが、300系よりも軽快なクルマの動きとコンパクトなボディによる機動性の高さは魅力的。エンジンは2.8ℓディーゼルターボ。300系よりも軽量ボディに対して十分なパフォーマンスを備える。個人的には日本人の使い方に最も合うランクルと呼べる存在だ。
ランドクルーザー70

ドライバーの腕が問われる
まるでスポーツカー
シリーズの中ではヘビーデューティ系に属する70系。単純構造で必要最小限の機能/装備で、タフな走りを身上とするモデルだ。今回はオーストラリア仕様の4.5ℓV8ディーゼルターボに試乗。オンロードではトラックのように緩く、ハードだが、オフロードでは水を得た魚のように走る。ABS/VSCは装備されるも、300系のようなお助け制御は一切ないのでドライバーの腕が問われる。しかし、それを克服しながら路面と対話をしながら走る感覚はスポーツカーのそれに近い。