新車試乗レポート
更新日:2021.08.31 / 掲載日:2021.08.31
【試乗レポート BMW M440i】セレブ感あふれるパワフルなオープンモデル
M440i xDrive カブリオレ
文●九島辰也 写真●ユニット・コンパス
BMWのラインナップが多種多様化しているのはご存知の通り。ちょっと目を離した隙に新たなグレードが生まれ、最新のパワーソースを搭載したりする。100年に一度の過渡期なだけに、その変化は激しい。
今回ステアリングを握ったM440i xDrive カブリオレもその中のひとつ。今年2月国内での販売が開始され、3月以降デリバリーを開始している。BMWの“偶数系モデル”の中でもエッジの立ったモデルだ。
ベースモデルよりも「M」に近いキャラクター
M440i xDrive カブリオレ
その証拠は“M”の文字にある。要するにM社が手がけたモデルだ。エンジン、シャシーのセッティングを彼らの英知で仕上げている。現在“M”はMハイパフォーマンスモデルとMパフォーマンスモデルの2種類がある。どちらも高性能であることは変わらない。M440i xDrive カブリオレは後者に位置づけられるが、生半可なクルマでないことは確か。最高出力387psを5800rpmという高回転域で発生させるのだから頼もしい。「上までしっかり回して走りたい」というBMWに対する期待をそのまま実現させてくれる一台だ。
3リッター直6ツインパワーターボは、馬力はもちろん500Nmという大トルクの持ち主。大排気量エンジンのようなキャラも見せる。それに0-100km/h加速は4.9秒というから恐れ入る。先にリリースされたM340i xDriveでも立証されているが、クラスを超えたパフォーマンスを感じ取れる。あのドーンと爆発するような加速は4気筒エンジンとは別次元のシロモノだ。よく、M340i xDriveをスタンダードモデルとM3の間のモデルと称するが、個人的にはそうは思わない。かなりM3よりの性格といっていいだろう。よってこのM440i xDrive カブリオレもM4よりと位置付けられる。
オープントップの爽快感は格別。一方クローズド時の静粛性も高い
M440i xDrive カブリオレ
実際走らせるとそれは一目瞭然で、スタートの加速Gからエキゾーストサウンドまで只者じゃない。特にドライブモードを“スポーツ”にすれば期待通りの走りを提供してくれる。太いグリップのステアリングをグイッと握ってアクセルを踏み込めば、景色はおもしろい様に流れていく。と同時に、ブレーキも強烈。大径ローターのディスクブレーキがガツンとストッピングパワーを生み出す。これだけ踏みこたえがあれば、アクセルも自由に踏めるってもんだ。
もちろん、その時のボディの一体感も不満はない。屋根がなくなれば剛性が落ちるのは仕方がないかもしれないが、イマドキはそれが顕著に現れることはない。サーキットへ持ち込んでピーキーな走りでもしない限り、コーナーでボディのヨレが気になってアクセルを戻すなんてことはないだろう。 さらにいえば、ソフトトップを閉めていればオープントップであることを忘れさせるほど静か。この堅牢な骨組みと機密性は今更ながら感心する。
その幌の開閉はセンターコンソールのスイッチひとつでOK。約18秒で頭の上に青空が広がる。しかも風の巻き込みは少なく、法定速度内であれば高速道路もずっと開けていられる。風を浴びて身体が疲れるなんてことも無さそうだ。
3シリーズより格上となった4シリーズ
M440i xDrive カブリオレ
そんなM440i xDrive カブリオレだが、個人的に驚いたのは他にもある。それはドライバーシートに座った時の助手席との間隔の広さ。思いのほか広く、クラス以上のゆったりさを感じた。思うに、6シリーズが8シリーズに格上げされたことで、4シリーズをアップグレードしたのだろう。実際スペックを見ると、全幅は3シリーズより若干ではあるが広くなっている。2ドアモデルとしての走りのパフォーマンス向上と格上げを同時に行なっているのかもしれない。そもそも3シリーズの2ドア版として登場した4シリーズだが、独自性が求められるようになったようだ。
この他では、高性能3眼カメラとレーダーを使った安全装備&運転支援システム“ドライビング・アシスト・プラス”やスマホのアプリを使った“BMWコネクテッド・ドライブ”なんかも使える。イマドキ感万歳だ。そうそう、それに「OK BMW!」で音声操作できる“インテリジェント・パーソナル・アシスタント”も。しかも、話しかけるワードは任意で設定できるそうだからユニーク。自分だったらナニにしようかと考えると楽しくなる。
といったのがM440i xDrive カブリオレの概要だが、やはりその魅力はフロリダあたりのセレブ感。これだけのパフォーマンスを持った4シーターカブリオレはけっして多くないだけに、所有する満足度は高い。もはやSUVでは目立ちませんから、このクラスのクルマで日々のストレスを発散しちゃってください。
執筆者プロフィール:九島辰也(くしま たつや)
自動車ジャーナリストの九島辰也氏
外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。
BMW M440i xDrive カブリオレ(8速AT)
■全長×全幅×全高:4775×1850×1395mm
■ホイールベース:2850mm
■車両重量:1880kg
■エンジン:直6DOHCターボ
■総排気量:2997cc
■最高出力:387ps/5800rpm
■最大トルク:51.0kgm/1800-5000rpm
■サスペンション前/後:ストラット/マルチリンク
■ブレーキ前後:Vディスク
■タイヤ前後:225/40R19・255/35R19
■新車価格:1089万9900円(M440i)