新車試乗レポート
更新日:2020.12.25 / 掲載日:2020.12.25

【試乗レポート 日産 ノート】新型e-POWERの進化度合いをチェック!

日産 ノート

日産 ノート

文●大音安弘 写真●ユニット・コンパス

 コンパクトカーのスタイルに革命を起こした初代フィットの対抗馬として登場した日産ノートは、今や日産の看板車種までに成長。特にシリーズハイブリッドである「e-POWER」の投入は、ノートを新しい時代の実用車へと成長させた。それはモデル末期でありながら、2019年で最も売れた日産車がノートだったことが裏付ける。そんなノートが、ついに第3世代へと進化。全面刷新に加え、パワートレインをe-POWERに一本化するなど、日産の美味しいところを凝縮した。まさに経営再建を目指す日産にとっては絶対に失敗できない一台なのだ。

電気自動車アリアとの関連性を感じさせる未来的なデザイン

全幅と全高はそのままに全長を55mm短縮。プロポーションの変化を未来的なデザインでおぎなった

全幅と全高はそのままに全長を55mm短縮。プロポーションの変化を未来的なデザインでおぎなった

 そんな意気込みは、スタイルにも表れる。従来型のハイトなワゴン調スタイルをやや抑えただけでなく、都市型コンパクトに相応しい未来的なスタイルに仕上げてきた。従来型と比べると、クルマらしさも弱まり、ちょっとSF映画に登場するシティコミューターのようにも映る。2021年登場予定の新クロスオーバーEV「アリア」の面影も強く反映されており、今後の日産車のデザインは、デジタル感が増すことを意図しているようだ。大胆なことに全長を55mm縮めた4045mmにシェイプアップ。ただし、全幅と全高はキープしているので、そのままだともっとずんぐりしたスタイルになりそうだが、ワイド感ある前後マスクやルーフラインなどボディワークのテクニックでカバーしているようだ。

一新されたインテリアは質感高く、操作系も洗練された

ノート インテリア

ノート インテリア

 インテリアも従来型とは一変となる、まさに未来感にあふれたもの。デジタルメーターやフローティングセンターコンソールなどが新鮮に映るが、同時にシックさもあり、質感にも気を配ったことを感じさせる。これも脱お手頃コンパクトの意気込みか。新しいシフトレバーもユニークで、リーフ式のセレクターではなく、アリアと同じ仕様のものを採用。このマウスのようなシフトは、通常のATシフトと同様に「N」の下に「D(ドライブ)」、上に「R(リバース)」が配置されているので、前後動作が変わらず、シフトを間違いにくいのがポイント。試してみると、操作性も良かった。またレバー類やスイッチなどの操作感にもこだわっており、従来型のコンサバ感とはお別れできたように思えたのは好ましい。シートもクッションに厚みがあり、座り心地も良かった。ただワゴンスタイルを捨てたことで、ラゲッジスペースは縮小されたようであり、ハッチバック的となったことは賛否が分かれるだろう。

新型はパワートレインとプラットフォームを刷新

パワートレインに加えてプラットフォームも新型に切り替わった

パワートレインに加えてプラットフォームも新型に切り替わった

 ノート最大の注目点は、e-POWERに絞られたパワートレインだろう。第1世代のe-POWERは、リーフで得た技術と手持ちの材料を最大限活用することでコストを抑えた一方、オーバースペックの部分も有り、最適な仕様とは言い難い部分もあった。しかし、新型ノートは、従来型ノートだけでなく、セレナやキックスの経験も活かすことで、最適で最良なシステムが目指された。

 モーターやインバーターを新開発することで効率の向上はもちろんのこと、軽量化と高性能化まで実現した。リーフの派生ではなく、正真正銘のe-POWERの姿を目指したといっても良いかもしれない。発電エンジンは、従来型同様に1.2Lの3気筒エンジンだが、こちらも大幅に改良が加えられている。その結果、モーター最高出力116馬力、最大トルク280Nmまで性能が向上されている。いうまでもなく、燃費性能は飛躍的に高められ、29.5km/L~28.4km/L(WLTCモード)と優秀だ。

 もちろん変わったのはデザインやe-POWERだけではない。次世代コンパクトカー向けのプラットフォーム「CMF-B」を採用する。これは日産とルノーの共同開発によるもので、既にルノーではBセグコンパクトのルーテシアで使用されているものだ。軽量高剛性なだけでなく、電動車にも適した高遮音パッケージとなっているのもポイントだ。

新世代e-POWERは静粛性が大幅にレベルアップ

新しいプラットフォームの実力は高く、e-POWERの進化と相まって快適性が大きく向上した

新しいプラットフォームの実力は高く、e-POWERの進化と相まって快適性が大きく向上した

 さて期待の新型e-POWERの走りはどうなのか。今回の試乗コースは、日産自動車のテストコースということもあり、短時間の試乗となったが、そのわずかな時間でもe-POWERの進化を知るには十分であった。

 特筆すべきは静かな走り。これは発電エンジンの作動プログラムの変更が大きい。これまでの知見により、小型の駆動用バッテリーを最大限に活用することを可能とし、小まめな発電を止めた。逆に、巡航速度が上がり、走行音が高まるタイミングを狙って発電をする。メリハリの効いた制御に進化したのだ。そのために車速と路面状態をセンシングし、ロードノイズが発生しやすい状況下では、積極的に発電。電気を使う急な加速では、伸びやかなエンジン音を響かせる。ただ加速とエンジン音がシンクロしているので、違和感もない。まるで忍者のような発電エンジンなのだ。

 高いボディ剛性と綿密なモーター制御のタッグは、滑らかな走りを実現する。テストコース上の道の悪いところもしっかりと衝撃を受け止め、すこぶる乗り心地は良く、しかも静粛性も高い。e-POWERの強みがしっかりと活かされているなと感心した。e-POWERといえば、ワンペダルによる加減速も特徴のひとつだが、この機能も受け継がれる。ただ減速度は少し弱められたようにも感じた。ただ、これによってガソリン車からの乗り換えの違和感がより薄まったともいえるので、テストコースだけでの判断は、早計だろう。またハンドリングについても、個人的にはもう少しシャープでも良いのではと思った。ゆったりとした操作性を意識したのか、ステアリングに対する車両の動きは、ややスローなのだ。これではモーターと小さなボディを活かしたキビキビした走りをイメージすると、ちょっと不釣り合いだ。しかし、街中や高速巡行時での安心感には繋がるだろう。最終的な結論は、公道試乗の機会までお預けとしたいが、お手軽ハイブリッドともいえたe-POWERを、日産の技術者が大切に育み、新たな価値へと磨き上げていることを実感させられた。

デザイン、機能ともにつかみはOK。まだ見ぬNISMO仕様にも期待が膨らむ

競合ぞろいのコンパクトカー市場に、e-POWERを武器に勝負するノート

競合ぞろいのコンパクトカー市場に、e-POWERを武器に勝負するノート

 実用車で、法人ユーザーも多いノートをe-POWERに一本化することは大きな決断だったに違いない。ただ仕様を増やせば、結果的にも価格の上昇にもつながる。将来的な電動化車がスタンダードとなることを見据えた冷静な判断だったのだろう。確かにエントリー価格は上昇したが、e-POWERだけを切り取れば、先進安全運支援機能などの装備の進化を考慮すると、価格帯を維持している点は評価できる。強豪ぞろいのBセグコンパクト市場に、再び挑むノート。デザインや機能には新しさがあり、掴みはOKといったところか。新生活様式でクルマの存在も見直される中、従来型同様に存在感を示し、新日産の屋台骨となって欲しい。既に上級仕様の「オーテック」は投入済みだが、従来型の隠れたヒット作「NISMO」は、まだ非公開。ぜひ身近なNISMOとしても、新たな世界観を披露して欲しいものだ。

日産 ノート X(電気式CVT)

■全長×全幅×全高:4045×1695×1520mm
■ホイールベース:2580mm
■トレッド前/後:1490/1490mm
■車両重量:1220kg
■エンジン:直3DOHC+モーター
■総排気量:1198cc
■モーター最高出力:116ps/2900-10341rpm
■モーター最大トルク:28.6kgm/0-2900rpm
■サスペンション前/後:ストラット/トーションビーム
■ブレーキ前後:Vディスク/リーディングトレーリング
■タイヤ前・後:185/60R16

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グーネットマガジン編集部

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