新車試乗レポート
更新日:2020.12.25 / 掲載日:2020.12.25
SUBARU最新モデルイッキ乗り!
BRZ、レヴォーグだけでなく、その他のSUBARUラインナップもバージョンアップ! それら改良後のモデルに、一気に試乗する機会を得た。各車の走りを、レポート!
インプレッサ スポーツ STIスポーツ【一部改良】
●発売日:’20年10月8日 ●価格帯:200万2000~292万6000円
STIスポーツの2WDはFF版レヴォーグとも 呼べる走り!
スバルファンならずとも要チェックと言える1台だ
スバルと言えば4WDスポーツ。インプレッサにSTIスポーツを設定となれば当然4WD車を想像するが、試乗車はFF。もちろん4WD車もラインナップするのだが、媒体露出のため、いわば看板になる試乗車にFF車が選択されていたのは驚かされた。
しかし、試乗して納得した。インプレッサSTIスポーツ2WDはFF版レヴォーグとも言えるモデルだったのだ。
周波数応答型ダンパーの採用とSTIの手によるサスチューニングはFMCしたばかりのレヴォーグを彷彿させる。ロールの入りはスムーズだが、すぐにロール速度は抑制され、さりとて抑え込むわけでもなく、比較的大きめのロールを使う。ロールに逃がして初期回頭反応を大きめに取るのはこれまでと同じだが、車両旋回力が早めに立ち上がるのでターンインから定常円旋回への移行が滑らかになっている。スバル流ファントゥドライブと滑らかな操縦感覚の両立手法がレヴォーグ的でもある。リヤサスが締まった感じの前後ロール配分がFF車を意識させるが、ツーリングに適した扱いやすさとファントゥドライブがうまく融合していた。
パワートレーン関連は従来と変更ない。巡航時の余力感と加速への滑らかな移行、加速時のエンジン回転数と車速の一致感にインプレッサとeボクサーの相性のよさを実感。STIスポーツのイメージからすればもう少しパワーが欲しくなるが、そこまで高性能にのめり込まずにバランスよく纏めるのがインプレッサであり、FF初のSTIスポーツが成立したという訳である。
マニア視点ならちょっと中途半端にも思えるが、長距離ツーリングを主体にスポーティドライビングも楽しめる大人っぽいプレミアムコンパクトを求めるには価格も含めて魅力的。レヴォーグではスポーツ味が濃すぎるし、経済性も気になるというユーザーは当然として、ツーリング性能におけるコスパを重視するならスバルファンでなくても要チェックの一車だ。
SUBARU インプレッサ スポーツ STIスポーツ

価格:270万6000円
■主要諸元(STIスポーツ)●全長×全幅×全高:4475×1775×1480(ルーフアンテナを含む。ルーフ高は1455)mm ●ホイールベース:2670mm ●車両重量:1350kg ●駆動方式:FF ●パワートレーン:2.0L水平4DOHC(154PS/20.0kg・m) ●トランスミッション:CVT ●WLTCモード燃費:13.0km/L ●最小回転半径:5.3m ●タイヤサイズ:225/40R18



カーボン調+ブラック塗装付きのフォグランプカバー、ブラックのシャークフィンアンテナなどを特別装備。試乗車はスカートリップなどアクセサリーを装着。

フロントグリルもブラックで、アルミホイールは18インチのダークメタリック塗装となり、タイヤサイズは225/40R18。

TIチューニングのショーワ製SFRDフロントダンパーと、STIチューニングのリヤダンパーを採用して走りをレベルアップ。


高触感革の本革巻きステアリング、レッドメーター、各部のブラックラスト塗装などの専用インテリアはスポーティな雰囲気。
ファブリック/トリコットシートはブラック+レッド/ブラック+ライトグレーの配色となり、ステッチはレッド。
おすすめグレード
STIスポーツ
・価格:270万6000円
シリーズでは高価格モデルになるが、同クラスのスポーティモデルとしては買い得感が高い。抑えの利いた内外装のドレスアップがもたらすプレミアム感も大いに魅力である。
・価格:270万6000円
eボクサー搭載グレードも追加

今回乗れなかったが、上位グレードとして、アドバンスと2.0e-L アイサイトというふたつのeボクサー搭載グレードが新登場。
標準グレードの最上位という位置付けのアドバンスは、ネイビー/ライトグレーの専用シートを装着するなど特別な仕立てとなる。
フォレスター【マイナーチェンジ】
新1.8Lターボ搭載車は力強さとターボらしい加速を味わえる
安心のハンドリングと穏やかな乗り心地が特徴
スバルSUV戦略の基軸となるのがミドルクラスSUVのフォレスター。このMCでは登場時に採用していた2・5Lを廃止し、2Lハイブリッドのeボクサーを標準設定とし、レヴォーグに採用された新型1.8Lターボを搭載した「スポーツ」を新設している。
「スポーツ」は未登録のため構内でのチョイ味見程度だったが、浅いアクセル開度での穏やかな力強さと踏み込んだ時のターボらしい加速のノリはレヴォーグ同様。ストローク速度の抑制が利いたフットワークなど、レヴォーグ開発で得た知見をフォレスターに応用したモデルと思えた。なお、最低地上高は他グレードと同じ220mm。悪路で邪魔なエアロもなし。4WDモード設定も同じ。タイヤはオールシーズンで、SUVポテンシャルに翳りはない。
eボクサーに換装したXブレイクだが、動力性能の印象は従来車とあまり変わらない。ハイブリッドにしては踏み込み時のアシスト感が希薄。電動の「蹴り出し」を強調しないのはひとつの見識ではあるが、もう少し力感が欲しい。
とはいえ、スタック回避の悪路モードとなるXモード、前後サスのバランスが取れた安心感のあるハンドリングや穏やかな乗り心地などファミリー&レジャーに適した走りは好感触。スバル車の中でも最も一般的なユーザーに理解しやすいタイプである。
この他、従来車ではアドバンス専用だったドライバーモニタリングシステムを全グレードに展開するなどの改良が加えられたが、使い勝手や適応用途は従来どおりだ。
SUBARU フォレスター スポーツ

※写真はクローズドコースでの走行。
価格:328万9000円


■主要諸元(スポーツ)●全長×全幅×全高:4625×1815×1715(ルーフレール装着車は+15)mm ●ホイールベース:2670mm ●車両重量:1570kg ●駆動方式:4WD ●パワートレーン:1.8L水平4DOHC直噴ターボ(177PS/30.6kg・m) ●トランスミッション:CVT●WLTCモード燃費:13.6km/L ●最小回転半径:5.4m ●タイヤサイズ:225/55R18

新しく設定されたスポーツには直噴ターボ「DIT」を搭載。新型レヴォーグと同じ最新エンジンで、力強くパンチのある走りが味わえる。

グリルはブラック塗装。専用開発のダンパーとスプリングも採用していて、SUVでありつつ質感の高い、スポーティな走りを目指したという。
ホールド性など、機能性に優れたウルトラスエード/本革シートを採用。最上級グレードにふさわしいインテリアとしている。
SUBARU フォレスター Xブレイク

価格:305万8000円

オレンジの差し色がアクティブな印象を高めるXブレイク。eボクサーに搭載パワーユニットを変更。新制御のモーターアシスト、e-アクティブシフトコントロールを採用した。
おすすめグレード
スポーツ
・価格:328万9000円
公道試乗前だが、ターボのトルクとオフ&ラフロード向け機能の面からSUV用途でも最も高い性能を発揮する可能性大。従来の2.5L車代替モデルと考えてもいい。
・価格:328万9000円
スバル XV【マイナーチェンジ】
●発売日:’20年10月8日 ●価格帯:220万~292万6000円
運転状況に応じた変速制御 フットワークはこれまで通り
昨年のMCから2L車を全車eボクサーとし、今回のMCでは2L車のスポーツモード選択時に運転状況に応じた変速制御を行うeアクティブシフトコントロールを採用。穏やかに走れば回転を抑え、加減速が強まれば高回転を維持。スポーツモードを選択しても無駄回し感がないのは好感。ただ、電動パワーアシストによる巡航ギヤ維持能力や深いサスストロークを用いたオン&ラフロードで扱いやすいフットワークなど走りは従来車とほとんど変わっていない。都市部から長駆レジャーまでそつなくこなすタイプ。キャビンはインプレッサスポーツと共通だが、悪路も含めて汎用性に優れている。
MCによりプロテクター感を強化したエクステリア艤装もあり、アドバンスのグレード名に不似合いなほどSUVらしい雰囲気を強化。インプレッサに対するXVのキャラクターが一層鮮明となったのも見所のひとつである。
SUBARU スバル XV アドバンス

価格:292万6000円
ボディカラーにプラズマイエロー・パールを新設定。バンパー、グリルのほかアルミホイールデザインも変更されている。
1.6i-L アイサイトやアドバンスなど、一部グレードはカラーコーディネートやシート表皮などインテリアも見直されている。
おすすめグレード
2.0e-L アイサイト
・価格:265万1000円
ラフロード走行とツーリングでの余裕を考慮すれば2L車が狙い。2L車同士では走行メカや実用装備に大きな違いがなく、「L」を基準に嗜好に沿ったグレードを選ぶのが無難。
・価格:265万1000円
レガシィ アウトバック【一部改良】
●発売日:’20年10月2日 ●価格帯:341万~363万円
ゆったりとした足回りなど、穏やかさを再確認
次期レガシィのプロトタイプも発表され、今回のMCはファイナルエディションの周知と考えてもいいだろう。リリースによる主な変更点はWLTCモード燃費への対応であり、内外装デザインや走行メカ、グレード展開等は従来車から変更されていない。
久しぶりのアンコール試乗となったわけだが、傑出した部分はないがアウトバック(グランドワゴン)がスバルSUVの基本を構築したモデルだったことを再認識。時として柔と感じるほどのゆったりしたサスストローク。前後のロールバランスもよく、穏やかな回頭感覚とスムーズに立ち上がる旋回力。細かな路面凹凸で発生する振動に設計の古さを感じられたが、適度に鷹揚な味わいはフォレスターにもXVにも活かされている。4・8mを超える全長は一般的とは言い難いが、上級SUVらしい味わいであり、ゆったりツーリング派なら一考の価値あるモデルだ。
SUBARU レガシィ アウトバック Xブレイク

価格:346万5000円
試乗車はスポーティなXブレイク。搭載エンジンは全車2.5Lの水平対向で、懐かしい味わい。今回の改良でWLTC燃費を発表。
デザインなど、各部に古さを感じてしまう部分はあるが、たっぷりとしたシートなどでくつろげる室内。荷室は当然広々。
おすすめグレード
Xブレイク
・価格:346万5000円
価格差が少なく、内外装の好みで選び分けてもいいが、SUVらしく使うなら撥水ファブリックとのコンビシート表皮を用いたXブレイク。外観も一番SUVらしい。
・価格:346万5000円
●文:川島茂夫 ●写真:土屋幸一