新車試乗レポート
更新日:2020.06.24 / 掲載日:2020.06.24

【試乗レポート 三菱 eKスペース・eKクロススペース】三菱ならではの個性が光る仕上がり

三菱 eKスペース(左)、三菱 eKクロススペース(右)

三菱 eKスペース(左)、三菱 eKクロススペース(右)

文●工藤貴宏 写真●ユニット・コンパス

 いま、日本の乗用車市場の約4割は軽自動車だ。なかでも、中心となっているカテゴリーがスーパーハイトワゴン。全高が1750mmを超えるほど背が高く、後席にスライド式のドアを組み合わせるタイプを指し、後席が飛び切り広いのが自慢だ。

 たとえば2019年の軽自動車販売ランキングを見ると、トップ3はホンダ・N BOX、ダイハツ・タント、そしてスズキ・スペーシアとすべてスーパーハイトワゴンが連ねる。軽乗用車におけるスーパーハイトワゴンの比率は約半分だが、車種数はそれほど多くないから1車種当たりの販売台数が多く、すなわちメーカーにとっては効率のいい車種といっていい。別の言い方をすれば、スーパーハイトワゴン1車種がそのメーカーの勢いを左右するから、徹底的にライバルより魅力的な車種を生み出す必要がある。おのずと開発も気合が入ってくるに違いない。

 しかし、そこでライバル以上の魅力を世間に与えるのが難しいのもまた事実だ。まず室内の広さだが、軽自動車は車体サイズの上限が決まっているゆえに、車体を大きくして居住スペースを稼いでライバルに差をつける手法が使えない。広さで明確な差を出すのは困難に近いと言っていいだろう。装備面も、ライバルを超える独創的なものを搭載するのは難しい。するとやはり、見た目とキャラクターの勝負が一つの道だ。
 三菱も2014年にこのジャンルへeKスペースを投入したが、残念ながら存在感が高いとは言えなかった。室内の広さや実用性、そして走りはライバルと同等かそれ以上。決して劣っているわけでなかったのに、である。

 そこで新型を出すにあたってとった戦法は、個性を強めること。ベーシックな「eKスペース」とともに用意する「eKクロススペース」に特別な個性を与えて存在感を高めていくこととしたようだ。

 ちなみに従来モデル同様、eKスペースもeKクロススペースもハードウェア的には日産ルークスと共通だ。メーカーの枠を超えた兄弟と言っていい。だからライバルに対する長所をあげていくと、ゆったり座れる広い後席、乗り降りしやすい工夫が詰まった後席ドア、230mmと広い後席スライド量のおかげで4人乗車のまま積める荷物の量がクラストップの荷室、そしてクラスをリードする先進安全機能や運転サポート技術などたくさんあって共通だ。そのあたりは、グーネットのルークス試乗記事でたっぷり詳しく解説しているので、そちらでチェックして欲しい。
 eKスペース/ eKクロススペースの試乗記となるこの記事では、兄弟のルークスにはない特徴と魅力を紹介していこう。

【試乗レポート 日産 ルークス】ライバルを徹底的に研究した仕上がりには日産の気合を感じる

eKスペースは親しみやすいシンプルでクリーンなデザインを採用

eKスペースのデザインはクリーンかつシンプルなもの

eKスペースのデザインはクリーンかつシンプルなもの

 まず、eKスペースとeKクロススペースでは見た目もキャラクターも大きくわかれている。それも、迷う人は絶対にいないだろう、と断言できるほど大胆なレベルでだ。

 いわゆる「標準タイプ」となるeKスペースのデザインは、クリーンでシンプル。あくまでナチュラルを突き通し、まるで毎日自然に接している空気のように個性を抜いたスタイルだ。

eKスペースのボディカラーは全9色で、写真のような2トーンが3色用意されている

eKスペースのボディカラーは全9色で、写真のような2トーンが3色用意されている

三菱らしいSUVテイストで仕上げたeKクロススペース

トレンドのSUVクロスオーバー的なイメージを与えるeKクロススペース

トレンドのSUVクロスオーバー的なイメージを与えるeKクロススペース

 いっぽうでeKクロススペースは、見るからに個性の塊である。よくここまで作り上げたな、というくらいに存在感が際立っている。なかでもスゴイのは顔つきで、親分的な存在となる「デリカD:5」のテイストがそのまま受け継がれているから、さながら「ミニデリカ」といったところ。しかしながら嫌悪感を抱くようなことはなく、素直に受け入れられるような気がするのは三菱のデザイン力の高さといえるのかもしれない(もしくはこの顔つきにボクの目が慣れてしまったのかどちらかだ)。

 そしてポイントは、SUVテイストでまとめているところである。日産版となるルークスの高価格モデル「ハイウェイスター」はスポーティ&上級仕様だが、eKクロススペースはそれとは明らかに異なる個性。上手にやったな……と感心させられる。顔つきがワイルドなだけでなく、タイヤの周りには樹脂のオーバーフェンダーに見立てた演出(実際は樹脂ではなくシートを貼っている)があり、このクラスでは珍しいルーフレール(ほかにはスズキ「スペーシア ギア」が用意している)も設定されているからアクティブな雰囲気だ。

 昨今、「ハスラー」「タフト」など遊び心を持ったSUVクロスオーバーがトレンドのひとつになっているが、eKクロススペースはそのスーパーハイトワゴン版と言っていいだろう。リフトアップこそしていないが、個性的なのは間違いない。そして、実に三菱らしいアプローチだと思う。

三菱 eKスペースと日産 ルークスの違いとは!?

eKクロススペースのボディカラーは全13色。2トーンが6色、モノトーンが7色という展開

eKクロススペースのボディカラーは全13色。2トーンが6色、モノトーンが7色という展開

 しかも、eKクロススペースに試乗して驚いたのはアクティブな演出が内外装のコーディネートに留まらないことだ。メカニズムも兄弟の日産ルークスに対し、“プラスα”が備わっているのだ。

 たとえばターボエンジンを搭載するグレード「T」にはパドルシフトが備わるが、これがルークスには採用がない(eKスペースには装備)。さらにeKクロススペースは全車に「ヒルディセントコントロール」と呼ぶ、一般的にはSUVに備わる急な下り坂で速度を一定に保つ装備や、滑りやすい路面でのタイヤの空転を防ぐ「グリップコントロール」など悪路走行向けの機能をFFモデルにも組み込んでいることも注目だ。これもルークスには非採用で、つまり兄弟ながら見た目だけでなく機構でもルークスとは差をつけているのである。そのあたりに三菱の強いこだわりを感じた。

 正統はスポーティ&上級のルークスハイウェイスターに対して、eKクロススペースはとびきりアクティブ。上手にキャラクターを分けたと思う。これだけはっきり個性が分かれていれば兄弟でぶつかり合うことはなさそうだ。

インテリアの上質感に驚かされる

メーカーオプションの「プレミアムインテリアパッケージ」装着車

メーカーオプションの「プレミアムインテリアパッケージ」装着車

 もちろん、多くのユーザーがスーパーハイトに求める後席の快適性も高いレベルにあり、アクティブな雰囲気を求めて選んでも日常使いで不満を覚えることはないだろう。そのうえで驚いたのは、インテリアの上質感だ。

 メーカーオプションの「プレミアムインテリアパッケージ」を装着すると。合成レザーとファブリックを使った手触りのいいブラウンのシートやオレンジステッチ入りのダッシュボードがコーディネートされるなど、軽自動車とは思えない満足感が手に入る。価格はわずか5万5000円だから、選ばない手はない。

  • 合成レザーとファブリックを使ったシートは手触りも良好

    合成レザーとファブリックを使ったシートは手触りも良好

  • ライバル以上の広さはeKスペースのストロングポイント。オプションとはいえ、上質さを感じさせる仕様が用意されている

    ライバル以上の広さはeKスペースのストロングポイント。オプションとはいえ、上質さを感じさせる仕様が用意されている

操縦性は、従来型に比べて大幅にレベルアップ

交差点を曲がるようなシーンでも揺さぶられる感覚がなくなり、安定した走りを披露

交差点を曲がるようなシーンでも揺さぶられる感覚がなくなり、安定した走りを披露

 ところで操縦性は、従来の「eKスペース」に比べて大幅にレベルアップしていることを実感できる。まずクルマを走らせていときのフラつきが、直線でも旋回時でも大きく軽減されているから安定感がある。交差点を曲がるときはグラッと揺さぶられる感覚がなくなり、落ち着きを感じられるのも大きな進化だ。

 エンジンは、eKスペースとeKクロススペースのいずれも自然吸気とターボを選べる。ここにもルークスとの違いがあり、ルークスは上級の「ハイウェイスター」にしかターボの用意がない。対して、いわゆる標準タイプでもターボを選べるのはeKスペースの優位点だ。

 そして結論からいえば、ターボエンジンを選ぶことを強く進めたい。自然吸気エンジンも新型になってトルクの出方がよくなったことで従来よりは動力性能が高いが、幹線道路の合流や上り坂などの発進加速ではちょっと物足りなく感じる。高速域の巡行では意外に力不足を感じないが、時にはエンジン回転数を上げざるをえないシーンがあるから、室内がうるさくなるのもウィークポイント。それに対し、走りが力強いだけでなく回転を上げなくてもいいから静かなのもターボの魅力だ。乗り比べればその差は歴然。余裕が違う。

NAとターボの価格差は10万円に満たないため、ターボがオススメ

日々の使いやすさに直結するゆとりのあるパワーと充実した装備を考えれば、オススメはターボ

日々の使いやすさに直結するゆとりのあるパワーと充実した装備を考えれば、オススメはターボ

 もし装備充実のグレードを狙っているのであれば、自然吸気エンジンとターボエンジンの価格差は10万円にも満たない。それならターボエンジンを選ぶのが賢い選択だ。燃費を心配する人がいるかもしれないが、今どきのターボは燃費も高い水準にあり、走行状況によっては自然吸気より優れることもある。

三菱 eKクロススペース T(CVT)データ

■全長×全幅×全高:3395×1475×1820mm
■ホイールベース:2495mm
■トレッド前/後:1300/1290mm
■車両重量:970kg
■エンジン:直3DOHCターボ
■総排気量:659cc
■最高出力:64ps/5600rpm
■最大トルク:10.2kgm/2400-4000rpm
■サスペンション前/後:ストラット/トーションビーム
■ブレーキ前/後:ディスク/リーディングトレーリング
■タイヤ前後:165/55R15

三菱 eKスペースのカタログ情報はこちら

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グーネットマガジン編集部

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1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
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また、最新情報としてトヨタなどのメーカー発表やBMWなどの海外メーカーのプレス発表を翻訳してお届けします。
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