新車試乗レポート
更新日:2019.05.23 / 掲載日:2019.03.05

【SUV最前線3】SUBARU フォレスター in 山形 スノードライビング

●文/川島茂夫 ●写真/SUBARU、編集部

タフな状況でこそ、そのありがたみを感じるのが四輪駆動機構。中でも悪路走破性の高さに加え、ドライバビリティの良さでも定評のあるのがスバル独自のシンメトリカルAWDシステムだ。今回は標準の2.5Lエンジンと最新のe-BOXERエンジンを搭載したフォレスターで真冬の豪雪地帯を走ってみた。

走ったのは…約200kmの雪道 山形県酒田市~山形駅間

スタートは最上川を臨む酒田港近辺。出羽三山神社がある羽黒山までは一般道が中心。肘折温泉郷までは積雪が多く、除雪車と遭遇することもしばしば。その後、天童市中心部を通って山形駅まで走った。

フォレスターで挑む厳寒期の豪雪地帯

雪上走行で最も注意しなければならないのはバーンコンディション、つまり路面状況である。ウェットでも、圧雪でも、あるいはアイスバーンでも全面が均質な状況なら、それなりの慎重さは必要なものの意外と御しやすい。操作と反応と限界が分かっていれば相応の手も打てる。ところが不安定ならばその都度対処が必要。しかも大概は時間的猶予なしである。

今季、スバルが用意した雪上試乗コースはリアルワールドでのスバルSUV技術を体験すべく日本海に面した山形県酒田市から山形市に抜ける約200kmの行程。1日の走行行程としては大した距離ではないが、路面の状況からするとかなりタフなルートだった。

日本海側及び山岳部は前日からの降雪もしくは曇天。天童市付近では快晴。アイスバーン/圧雪/シャーベット/ウェット/ドライとあらゆる路面状況が揃った。しかも圧雪にできたアイスバーンは目視では圧雪と判断しかねる。然して目を皿にして路面を読んでもなお「予想外」に陥ってしまう。

そんな時役立つのが、後輪のトルク伝達を電子制御多板クラッチで行うシステム「アクティブトルクスプリットAWD」だ。MP-T(マルチプレートトランスファー)はレオーネ以来のスバルのお家芸。その正統かつ最新版なのだ。

また、フォレスターではSUV向け制御を加えたXモードも搭載。同システムでは「ノーマル」「スノー&ダート」「ディープスノー&マッド」の3モードを設定。今回のテストではクロカン走行向けの「ディープスノー&マッド」は用いなかったが、「スノー&ダート」は積極的に使用することになった。

フォレスターの冬季装備がスゴイ!「瞬時に暖かくなる! 電熱装備が嬉しい」

 暖機して暖かい風が吹き出してもしばらく車内は寒いままだ。空調が効果を発揮するまでの暖に効果的なのがステアリングヒーターやシートヒーターである。直接身体に触れるだけに冷たさもひとしお。スイッチひとつですぐに暖まり始めるのが嬉しい。しかも、シートヒーターは4席分で、どちらも全グレードに標準装着なのだ。

大型フットダクトや吹き出しモードを多段化した空調機器を開発。また後席ベントグリルにより後席の快適性も高められている。

冷たい指先を温めてくれるのがステアリングヒーター。現行型のシートヒーターはバックレスト上側にまで面積が拡大されている。

SUBARU フォレスター「頼れるXモード! 甲乙つけがたい2種のエンジン」

●価格:280万8000~309万9600円

実践的で頼もしいXモードが大活躍!

アイスバーンの降坂では5度くらいでABSが作動し、速度制御が難しくなる。圧雪に見えて気を許していただけに冷や汗たらりである。そこからは急降坂では事前に「スノー&ダート」に。低速域でしか使えないのだが、解除されるような速度は有り得ない状況だ。

「スノー&ダート」モードでは降坂制御が活きる。ゆるりと坂に入った後はXモードに速度制御を任せて走行ラインだけ操ればいい。転ばぬ先の杖とはよく言ったもの。無駄に冷や汗をかく必要はない。5度を超える坂など駐車場の取り付け道路など生活の場でもそうは珍しくなく、降雪地域ではXモードは実践機能なのだ。

車速が高まった一般道走行のXモードは当然「ノーマル」が選択される。操舵追従を優先させているのか、減速側ではアンダーステア、加速側ではオーバーステア傾向を示し、前後のグリップバランスの変化や操舵に対して比較的回頭反応が出やすい。操る楽しみあるいはドライバーの意志を尊重しているのかは分からないが、コントロール性を優先した制御である。

前輪にしても後輪にして大きくグリップバランスを崩せばVDCが介入し、速度制御も含めて安定回復を行うので危険を感じることはないが、積極的に姿勢コントロールをする運転のほうがシステムとの相性がいいようだ。

道はモザイク様の路面状況だが、ちょっと外れて人気のない駐車場に入るとそこは深雪。くるぶしを超える深さで降車を断念したほど。ところがフォレスターには大したことない状況のようだ。「ディープスノー&マッド」を試そうとしたのだが、「ノーマル」で苦もなく走ってしまった。抵抗も大きな重い雪を押しのけていく。4WDの威力もさることながら210mmの最低地上高が利いている。鼻擦り腹擦り状況ではこうはいかない。

ゆとりの最低地上高は除雪車が散らかした雪塊を跨ぐ時も実に有り難い。けっこう硬そうな塊がごろごろしていた。踏破は問題ないが下回りやボディと接触すれば相応のダメージを受けそうだ。

今回の旅の見どころSPOT

酒田市近辺

  • 古くから紅花や庄内米などの特産物の集積地として栄えていた酒田港。

  • 明治26年に酒田米穀取引所の付属倉庫として建てられた山居倉庫。12棟が並ぶ美しい景観が魅力。

明治26年に酒田米穀取引所の付属倉庫として建てられた山居倉庫。12棟が並ぶ美しい景観が魅力。

羽黒山にあるのが出羽神社。三神合祭殿と呼ばれ、冬の参拝が難しい困難な月山、湯殿山神社の里宮としての役割を果たしている。

肘折&銀山温泉

  • 月山と葉山、ふたつの修験の山に囲まれた肘折温泉。1200年を超える歴史がある。

  • 江戸時代初頭に栄えた延沢銀山に由来する銀山温泉。大正浪漫を感じさせる雰囲気がいい。

山形市近辺

  • 帰路は山形新幹線で東京まで。約3時間の旅だ。

  • 大正5年建造の旧県庁舎及び県会議事堂。堂々としたレンガ造りで現在は文翔館として無料公開。

  • 観光名所の蔵王温泉&スキー場。

  • 霞城公園にある旧済生会本館。明治11年に山形県立病院として建設された。

初期加速性かトルク感か2種類のパワートレーン

行程前半はアドバンス、後半はプレミアムに試乗車を乗り換え。4WDシステム及びその効果は前記したとおりで、両車に共通しているが、パワートレーンが異なっている。アドバンスに搭載されるのは2Lベースのパラレル式ハイブリッドのeボクサー、アドバンスは標準設定の2.5Lだ。eボクサーは初期加速が鋭い切れ味型、2.5Lはトルクに乗せた地力型というドライブフィールだ。踏み込み直後の立ち上がりトルクが大きいのはウェット路面までなら心地よいが雪上走行ではちょっと神経質になってしまう。エンブレ回生時のアンダーステア抑止制御などを組み込んでいるが、アドバンスに比べると穏やかな加速反応のプレミアムのほうが扱いやすい。変速比変化も少なく、回転も安定しているのでドライブフィール全体が落ち着いている。

誤解しないでいただきたいが、2.5Lパワートレーンが鈍いわけではない。応答遅れも少なく加速の伸びも良好であり、eボクサーがスポーティ感を強調した特性のため相対的に穏やかな印象を受けたに過ぎない。

試乗終点の山形駅に到着。シャーベットとウェットの路面のせいでボディ下部はどろどろに汚れている。ふつうなら裾汚れを気にしての乗降となるが、ドアパネルがサイドシル部まで覆っているので脚が触れても無問題。乗降時まで気遣うのがフォレスターの雪国適性の高さなのだ。

SUBARU こだわりの冬季性能

スバル純正のスプリングチェーン。雪道でテストを行って作り込まれているのが特徴だ。

 冬期においてスタッドレスが万能でないのは昨今の報道どおり。深く沈み込む雪路では雪壁を掻き崩すように進むタイヤチェーンも必要だ。しかし、主駆動輪のみにチェーンを装着状態の4WD車の前後の駆動力は非常にアンバランス。スバルの4WDシステムはチェーン装着にも対応しているのが特徴。また、純正チェーンはスバル車に最適化された設計が施されている。チェーン装着の機会は少ないだろうが、これも転ばぬ先の杖である。

1. タイヤチェーン装着時の安定性を追求

基本的にAWDは走行安定性が高いが、前後タイヤのグリップ力が極端にアンバランスになると不安定になりやすい。雪道で前輪だけにチェーンを装着した状態がその例である。

2. 回生ブレーキ時のアンダーステアを解消(e-BOXER搭載車)

滑りやすい路面でゆるくブレーキがかかったときに発生しやすいアンダーステア。これを防ぐため、旋回中の前輪への制動力を減らし、減速度を維持しつつ最適な前後制動力配分を行っている。

3. モーターを活かした悪路発進性の向上(e-BOXER搭載車)

滑りやすい路面では段差を越える際もスリップしやすい。これを防止するため艇車速域専用のXモードでは、モータートルクを優先的に配分。アクセルワークに忠実な応答を実現している。

提供元:月刊自家用車

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