新車試乗レポート
更新日:2019.01.29 / 掲載日:2019.01.29

【海外試乗レポート マツダ Mazda3(アクセラ)】新世代モデルの実力は世界一級品!

Mazda3 ハッチバック

文●石井昌道 写真●マツダ

 もともとロードスターやRX-7、RX-8などのスポーツモデルをコアに、走りにこだわりを持っていたマツダ。以前は熾烈な価格競争やフォード傘下ゆえの不本意なクルマ造りに翻弄されているようにも見えていたが、リーマンショックでフォードから放出された後に大きな躍進を果たした。今や自動車メーカーのみならず製造業では合い言葉のようになっているモノ造り革新(あるいはモノ造り改革)にいち早く取り組み、一括企画やコモンアーキテクチャー構想、フレキシブル生産構想などでブレークスルー。2012年に発売されたCX-5を皮切りとした新世代商品群はスカイアクティブテクノロジーと魂動デザインを武器に、一気に注目の的となった。
 商品に魅力があるから以前のように店頭での値引き合戦の必要はなくなり、購入するユーザーにとってもリセールバリューが高まるので結局は損をすることはなく中古車市場も活性化。ほぼすべての人がハッピーになる大改革だった。付加価値を高めることでいい循環を生み出すこの戦略は、成功しつつあると言っていい。それが確信にかわるのは、新世代商品群がほとんどのラインアップに行き渡り、2周目に入ってもなお上昇気流に衰えがないかどうかだ。
 2代目CX-5がその切り込み隊長になるのかと思いきや、タイミング的に時期尚早だったようでスカイアクティブテクノロジー/魂動デザイン1.5といったところで、本当の2周目である2.0とみなせるモデルは、間もなく世に出ることになる新型Mazda3(日本名アクセラ)ということになる。

徹底して無駄を削ぎ落とした「魂動デザイン」

 すでに2018年11月のロサンゼルスモーターショーでその姿は披露されているが、エクステリアデザインはかなり攻めたものとなっている。攻めたと言うと多様な要素を盛り込んだように思えるかもしれないが、深化させた新世代の魂動デザインはその真逆で、徹底的にシンプルさを追求。ボディサイドにキャラクターラインは存在しない。そして面はなんとネガティブ、つまり凹んでいるという他に類をみないものだ。

 実際にロサンゼルスの明るい陽光のもとで目にした実車は、光りの移ろいによって様々に表情をかえ、なんとも妖しい雰囲気を放っていた。とくにハッチバックはリア周りのふくよかさなども相まってセクシー。エレメントを削ぎ落とし、シンプルにしたからこそ、フォルムな面構成の本質的な美が際立っている。Cセグメントは、実用的なファミリーカーのど真ん中ではあるが、道具的な枠を超え、積極的にほしいと思わせるデザインだ。

大きく質感を上げたインテリア。モニターは8.8インチに

 インテリアは大きく質感を引き上げるとともに、ここにもシンプルの美学がいきている。ドライバーオリエンテッドでドライビングに必要なものは明確にわかりやすく整頓され、あるべきものがそこにある。センターディスプレイは横長の8.8インチとなって見やすくなり、インテリアへの収まりも良くなった。

クルマと一体化し、ドライバーの能力を引き出す理想的なドライビングポジション

 マツダは初代CX-5以来、ドライビング・ポジションへのこだわりを見せてきたが、今回はステアリングのテレスコピック量を前後10mmづつ拡大してさらに多くの人がしっかりと調整できるように配慮している。また、人間中心の価値、マツダ流の走る歓びを実現するひとつとして、骨盤を立てて座るという理想の着座姿勢をサポートするシートとなっていることも特徴。ダラリと猫背気味に座っているとクルマの動きに鈍感になってしまうが、適正な姿勢になっていれば、ドライバーの能力を最大限に引き出せて、クルマと一体になったドライビングができるようになるという考えだ。

 そういった設計思想などを知らなくても、Mazda3のドライバーズシートに収まれば自ずと背筋が伸びるとともに、ステアリングやペダルの操作がごく自然な感覚で行えることに気づく。お尻が少し沈み込み、背中や太ももが心地良くシートにフィットした好みのポジションをとって走り出すと、まずはその滑らかな動きに心を奪われた。動く部分すべてのフリクションが少なく、また引っかかり感のようなものがまるでないため、タイヤで地面を蹴って進むというよりも、泳ぐ、あるいは浮遊していくような不思議な感覚さえある。
 じょじょに速度をあげていってもうひとつ気づいたのが、パワートレーンのコクピットへの侵入音やロードノイズ/パターンノイズ、風切り音などがこれまでのマツダ車とは違う次元と言えるほどに抑えられ、振動もごく微細なものまで取り除かれていること。それが得も言えぬなめらかさに拍車をかける。近年のマツダは大衆的なブランドから脱皮してプレミアム方向へ階段を登りつつあるが、こと静粛性の高さやなめらかな動きでは、名うてのプレミアム・ブランドを凌駕するほどだ。
 最近はどこのメーカーも静粛性に力を入れており、絶対的な音量はかなり下がってきているが、音の聞こえ方のバランスは様々。Mazda3でとくに好印象なのは、路面が変わってもロードノイズの変化幅が少ないことで心地いい。急に音量があがったり、耳障りな音質になったりしないのだ。

優しさと頼もしさがある上質な乗り心地

 初代から現行モデルまでフロントはマクファーソンストラット、リヤはマルチリンクを踏襲してきたサスペンションは、新型ではリヤを新開発のトーションビームへ変更してきた。一見、スペックダウンのようにも思えるが、乗ってみればまったくそんな感じはしない。新たなプラットフォームであるスカイアクティブ・ビークル・アーキテクチャーでは、上下左右だけではなく前後方向にも骨格を連続させた多方向の環状構造のボディとなり、剛性アップと伝達遅れの低減を実現。それがサスペンションにしっかりと仕事をさせているようで、従来型よりもしなやかかつ滑らかに感じる。それでいて適度な腰があり、優しいながらも頼もしさがある上質な乗り心地だ。
 コーナーでの動きも連続性があってなめらか。それでいて常にタイヤがベタリと路面に押しつけられている感覚が得られ、狙ったラインにのせていきやすかった。路面のギャップやうねりが多くても挙動が無用に変化することがない。

エンジンは自然吸気のスカイアクティブG。期待の「X」には試乗できず

Mazda3 セダン

 今回は欧州仕様のハッチバックと北米仕様のセダンに試乗したが、セダンはアメリカのハイウエイ特有のコンクリート舗装でチョロチョロとしがちでワインディングでもライントレース性が一歩劣ったが、オールシーズン・タイヤによるものだった。サマータイヤを履くハッチバックはそういった問題がなかったからだ。
 セダンは2.5L自然吸気のスカイアクティブG(ガソリン・エンジン)+6AT。パフォーマンスに不足はないが、最近の直噴ターボやディーゼル、電気モーターなど低回転・大トルク型のパワーユニットや多段ミッションなどに比べるとドライバビリティではどうしてもかなわない。高速巡航から緩やかに加速していこうという際など、アクセルをじょじょに踏みましていっても望むトルクが出てこずにもどかしい思いをしたり、気持ちより遅れてシフトダウンしたりするからだ。

 ハッチバックは、2L自然吸気のスカイアクティブGにMハイブリッドが組み合わされる。ベルトドライブ式のインテグレーテッド・スターター・ジェネレーターを使ったマイルド・ハイブリッドは、欧州車で主流になりそうな48Vではなく24V。既存のi-ELOOPの流れをくんでいるからだろう。回生エネルギーの再利用のみならず、加速時のアシストやアイドリングストップからのエンジン再始動をセルモーターよりも素早くスムーズに行う効果がある。こちらはMTだったこともあってドライバビリティは良好。Mハイブリッドの効果もあったのだろうが、AT同士で比べてはいないので判別はできなかった。

新型の実力はプレミアムブランドを含めて世界トップレベルに躍り出た

 いずれにしてもエンジンに関してはこれといった見所はなかったのだが、日本仕様では1.8LのスカイアクティブD(ディーゼル)、そして話題のスカイアクティブXが搭載されるので期待は膨らむ。
 ガソリンとディーゼルのクロスオーバーという意味合いのスカイアクティブXは、燃料にガソリンを使い予混合しつつ、自己圧縮着火する。多くのメーカーが長年開発に取り組みながら実用にいたっていなかったが、マツダは点火プラグでまず小さく燃やしてシリンダー内の圧力を高めて圧縮着火に導くことで、困難だった燃焼制御を克服。いち早く実用化にこぎ着けることになる。低回転から大きなトルクを生み出し、レスポンスに優れ、さらに高回転域でも活発という特性を持つはずだからドライバビリティ向上にも貢献するだろう。シャシー性能は、一体感の高いドライビング・プレジャーやなめらかで上質な乗り味、高い静粛性も含めて世界一級。今度こそ、欧州プレミアム勢を実力でやっつける日本のCセグメントカーの登場ということになりそうだ。

日本での発売は2019年半ばを予定

モータージャーナリストの石井昌道さん。確かなドライビングテクニックに裏付けられた知性的な分析には業界内にもファンが多い

 北米や欧州では一足先に発売されるMazda3だが、日本は2019年半ばの見込み。アクセラという名前をやめて世界でMazda3に統一するのでは? という噂も含め、今後が楽しみでならない。2019年、もっとも注目されるモデルであることは間違いないだろう。

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