新車試乗レポート
更新日:2019.05.22 / 掲載日:2018.10.29

【試乗レポート・日産 ノートe-POWER NISMO S】あふれるパワーが「S」の証!

文●ユニット・コンパス 写真●川崎泰輝

 これは乗ってはいけないクルマだ。だって、シリーズでもっとも高価なのに、乗ったら最後、ぜったいにほしくなってしまうのだから。2018年上半期でもっとも売れた登録車となった日産ノートe-POWERに加わったノートe-POWER「NISMO S」の話である。

もっとも売れているNISMOロードカーに追加されたホットモデル

 2016年12月に登場したノートe-POWER NISMOは、2017年のデータによるとNISMOロードカーのなかでも最大勢力で、全体の約68%を占めるという。その理由は、ベースであるノート e-POWERが売れまくったから。ご存知のとおり、ノートe-POWERは2018年上半期に日本でもっとも売れた普通車であり、日産にとってはサニー以来、48年ぶりのトップセラーとなった。そんなノートe-POWERのなかで、約13%のユーザーがNISMOモデルを選んだことが、この状況を生み出した。なるほど、街中でも気持ちよさそうに走っているe-POWER NISMOをよく見かけるわけだ。
 なお、それらを選んだユーザーの多くは、これまでのNISMOファンとはまた違った一般的な自動車ユーザーで、爽やかなルックスやほどよい高性能が支持を集めた要因なのだとか。そこで、従来からのNISMOファンや、クルマの運転を積極的に楽しむユーザーに向けた、「少しとがった」モデルの企画にゴーサインが出たというわけ。すでにガソリン車にラインアップされている「ノート NISMO S」は、1.6Lエンジンと5速MTを搭載するホットハッチだったが、今回登場した「ノート e-POWER NISMO S」にもその文脈は受け継がれている。

高い負荷に耐えるセレナe-POWER用ユニットをベースにチューニング

 パワートレーンは、排気量は同じながらもより高出力となる「セレナe-POWER」用ユニットをベースに改良して搭載。これにより、モーター最高出力は25%アップの136馬力、最大トルクは26%アップの32.6kgmと大幅にパワーアップしている。また、発電用エンジンも84馬力となり、合わせてインバーター出力基盤を変更、リチウムイオンバッテリーコンピューターにもNISMO S専用のチューニングが施されている。エンジン形式こそ「HR12DE」と変わらないが、実際には別物だ。

ルックス上の違いは最小限

 それに対してエクステリアの変更点は最小限で少々そっけない。e-POWER NISMOとの違いは、前後に「NISMO S」のエンブレムが付くだけ。一方で、これまでオプション扱いだったLEDヘッドランプが標準装備になるのは嬉しいところ。

 インテリアも基本的には同様で、ガソリン車の「NISMO S」と同じサポート性能を強化したスポーツシートが標準で備わる。オプションでさらにスポーティなレカロ製バケットシート(27万円)が選択可能なのも他モデルと同様だ。
 シャシーチューニングやサスペンション、装着タイヤもe-POWER NISMOと共通。もっとも、e-POWER NISMOの時点でシリーズ中もっとも手厚い補強が施されているから安心してもらいたい。試乗したときのことを思い起こせば、パワーに対してシャシーのポテンシャルはまだまだ余裕があった。
 そんなノートe-POWER NISMO Sの価格は267万1920円。パワーアップしたパワートレーンとLEDヘッドランプに、e-POWER NISMOとの差額18万3600円の価値が見出せるかが評価のポイントになる。

「ドライブモード」の作り込みにNISMOチューニングの真価を見た

 試乗コースは追浜にある日産自動車のテストコース。低速からワインディング、高速走行まで確認できる環境だ。与えられた時間は少々タイトだったが、それでもe-POWER NISMO Sの実力をしっかりと味わうことができた。

 それにしてもNISMOが開発したクルマに乗っていつも感心するのが、ドライバビリティ、運転のしやすさへのこだわりだ。速さだけでなく、ドライバーとクルマとの対話を重視していることが、クルマからビシビシと伝わってくる。今回それは、「ドライブモード」のチューニングに感じられた。

 もともとノートe-POWERには、走行シーンやドライバーの好みに応じて走りの味付けを変化させる「ドライブモード」という機能が備わっている。「e-POWERモードスイッチ」を押すことで、「NOMAL」、「S」、「ECO」の3つが切り替わるというものだが、そのなかの「S」と「ECO」では、アクセルペダルのみで加減速をコントロールする「e-POWER Drive」がオンになる。そのNISMOバージョンとなるノートe-POWER NISMOでは、コンピューターチューニングにより「NOMAL」と「S」での走りを磨き上げ、ノーマルよりも爽快感のある走りを実現した。そして今回のe-POWER NISMO Sでは、さらにシフトレバーの「B」レンジも活用することで、ドライブモードを合計で6パターンに増やし、それぞれのモードについてもさらに進化させたという。この6パターンをまとめると次のようになる。

シフトが「D」レンジでの
「NORMAL」  2ペダルによる通常の走行
「S」     1ペダルによるスポーティモード
「ECO」    1ペダルによるNISMO流の燃費モード

シフトが「B」レンジでの
「NORMAL」 2ペダルによる通常の走行。アクセルOFFでのブレーキ強め
「S」     1ペダルによるスポーティモードの上位版。発電アシストを積極的に使う
「ECO」   1ペダルによる雪上走行モード

 少々わかりにくいかもしれないが、書いているこちらも混乱しそうなのだから仕方がない。メーター内に「S」や「ECO」のインジケーターが表示されるようにはなっているが、ユーザーに「B」レンジでの「ECO」は雪道走行モードだと理解させるロジックは少々不親切だろう。表記は、たとえば「SPORT」や「SNOW」にしてもらうのが望ましいし、操作系もシフトレバーとボタンの組み合わせではなく、単独のスイッチで切り替え可能にしてもらいたい。そもそも、「e-POWERモードスイッチ」が実車では「DRIVE MODE」と表記されているのが不可解だ。
 あえてこのようなことを書いたのは、走らせてみてドライブモードの作り込みに光るものを感じたから。せっかくのいい機能が、わかりにくさによって使われないことになってはもったいない!
 とくに「D」レンジの「ECO」は、燃費モードといいつつも、自然なドライブフィールが素晴らしく、e-POWERならではのワンペダルドライブを肩ひじ張らずに楽しめるところに関心させられた。たとえば加速も減速もしないような、ある一定の速度を保つこと(一般道で非常に多いシチュエーションだ)がベースモデルよりも簡単で、より一般的なクルマに近い自然なドライバビリティを実現している。自分でこのクルマを購入したら、おそらくほとんどの時間を「D」の「ECO」で走らせるだろう。「ECO」というより「NATURAL」といったニュアンスといえば伝わるだろうか。
 一方で「B」の「S」はわかりやすくトルクフル。アクセルペダルを無遠慮に踏み込むと、フロントタイヤが路面を掻きむしるようにして加速するし、高速走行での加速も伸びやか。この力強さは従来のe-POWER NISMOとは明確に差があるところだ。当然コーナリングの脱出速度も高いし、スペック上のトップスピードも150km/hから170km/hまで向上している。

クルマ好きなら積極的に「S」を選ぶべき!

 e-POWER NISMOの安定感ある走りも安全で魅力だが、クルマ好きが楽しいと感じるのは断然e-POWER NISMO S。シャシーの能力とパワーが拮抗する感覚が気持ちがいい。
 こうなってくると通常のNISMOと変わり映えのしないエクステリアもかえって通好みに見えてくる……といったら贔屓にすぎるだろうか。個人的には18万円強の差額なら絶対に「S」だ。


日産 ノートe-POWER NISMO S(CVT)


全長×全幅×全高 4165×1695×1535mm
ホイールベース 2600mm
トレッド前・後 1470mm/1475mm車両重量 1250kg
エンジン 直3DOHC
総排気量 1198cc
エンジン最高出力 83ps/6000rpm
エンジン最大トルク 10.5kgm/3600-5200rpm
モーター最高出力 136ps/2985-8000rpm
モーター最大トルク 32.6kgm/0-2985rpm
ブレーキ前・後 Vディスク/ドラム
タイヤ前・後 195/55R16

販売価格 267万1920円(全グレード)





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グーネットマガジン編集部

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