新車試乗レポート
更新日:2019.05.22 / 掲載日:2018.10.16
【試乗レポート・レクサス UX】レクサスが提案する、新たなコンパクトクロスオーバー

文●九島辰也 写真●レクサス
レクサスのSUVファミリーが増えている。LX、RX、NXに続く4台目のモデルが追加された。それがこのUX。アメリカではランクルプラドのレクサス版GXがあるから、かの国では5モデル目にあたるモデルだ。
さて、そのコンセプトはというと、アーバン・クロスオーバーを意味するUXと名付けられたほど都会的。全高は低く抑えられ、扱いやすいサイズにとどめられた。もちろん、これは世界的な潮流なのはご承知のとおり。レクサスにかぎらず各メーカーが真剣にそのカテゴリーに取り組んでいる。例えばBMW X2やボルボXC40がそれ。上のクラスの兄弟車をそのまま小さくしたのではなく、独自の要素を取り入れた。要するにそれほど重要ということだ。
ではその中身だが、プラットフォームはGA-Cと呼ばれるエンジン横置きのFFパッケージングを採用する。プリウスPHVやC-HR、カローラスポーツなどトヨタブランドですでに実績ある構造だ。よって信頼性は高く、その方向性は“走り”に振っていることが理解できる。しかもそれをレクサス開発陣はさらにアレンジしたのだから興味深い。レーザースクリューウェルディング溶接を多用したり、フェンダーやボンネットにアルミを、リヤフードには樹脂を採用し、剛性アップと軽量化が計られている。LC以降のレクサスはかなり“走り”にこだわったセッティングを施しているからだ。
より美しく、より扱いやすく
UX 250h Fスポーツ
デザインはそんなキャラクターをアピールするように仕上げられた。単純にNXをスケールダウンしたのではなく、ロー&ワイドに見せる手法を取り入れたのだ。結果、全高はデフォルトで1520mmという高さとなる。これはスポーティに見せるだけでなく、1550mm制限の機械式駐車場をクリアする。これもまたアーバン・クロスオーバーの意味するところだろう。ちなみにホイールサイズは17インチと18インチ。18インチにはFスポーツ用専用デザインのホイールも用意される。
パワートレーンは2L直噴式直4のガソリンエンジンと同排気量のガソリンユニットにモーターを組み合わせたハイブリッドの2種類。前者がUX200で後者がUX250hと名付けられた。そしてUX250hにはE-FourというAWDもラインアップする。
軽快感のあるFWDは、走りのよさが際立っている

UX 250h E Four
今回UXを試乗したのはスウェーデンの首都ストックホルム。年に一度ノーベル賞で話題となる街だ。なぜわざわざそこへ足を運んだかというと、グローバルなイベントだから。試乗期間中、世界中のメディアがここへ訪れる。レクサスがグローバルでどんな試乗会を行っているのを肌で感じるのもブランドを語る上で重要なこと。ブランド戦略があって、その先に個々のモデルが存在する。クルマの性能だけでは語りきれないのだ。
試乗車は3モデルで、UX250hのFWDとAWD、それとUX200。試乗スケジュールはこれらを続けて乗るというものだった。
そのなかで、今回いちばん気に入ったのがUX250hのFWDだ。グレードはFスポーツで18インチのランフラットタイヤを履く。ポジティブポイントはハンドリングの軽快さと軽やかなボディの身のこなし。発進や中間加速のスピード感をしっかりとドライバーに伝えながら、トルクステアはほとんど発生しない。言うなれば、上質な走りといったところだ。乗ってすぐに高級感を得たのはこの辺の味付けだろう。パワステが軽すぎないのもいい。
しかも乗り心地が非常によく、ひとつ上のカテゴリーのモデルに乗っている感覚さえする。これはAVS(アダプティブ・バリアブル・サスペンション)と関係している。設計的にストロークの取れない部分をダンパーの減衰圧を電子制御することで機械式では得られない領域を補っている。
UX 200 Fスポーツ
その次に気に入ったのはUX200。ガソリンエンジン車だ。このクルマのハイライトは、CVTに発進時用のメカニカルギヤがひとつ付いたこと。これによりトルコン式のような自然でダイレクトな発進加速が得られるようになった。CVTのみだとガツンとアクセルを踏んだときに加速に一瞬の遅れが生じるが、それがない。ただカットモデルを見るとギヤを追加した分、たしかにギヤボックス自体が大きくなってしまう。スペース効率的にはツッコミが入りそうだ。しかし、軽自動車ではないのだからそこまでシビアになることもないし、実際に許容する大きさであることはいうまでもない。

UX 250h Fスポーツ
では最後に試乗したUX250hのAWDだが、これはFWDと比べると若干軽快さがスポイルされる。実際にはほとんど前にトルク配分しているのでFWDと変わらない部分もあるのだが、腰下が微妙に重く感じられる。まぁ、クルマに何を求めるかだが、このサイズならではの軽快な走りが好きであればFWDをオススメしたい。もちろん、路面状況への対応の面ではAWDのメリットは大きいが。
インテリアのクオリティは、さすが!の一言

といったように、次々にストックホルム郊外の高速道路やワインディングをテストドライブした。冒頭に記述したように、レクサスの走りに対するこだわりを感じたのはたしか。だが、UXの魅力はそれだけではない。インテリアは細部まで作り込んでいるし、インターフェイスも当然最新のものが備わる。ナビ操作を含め直感的に操作できる範囲は広い。いずれにせよ、UXを知れば知るほど、レクサスの新たな屋台骨になる気配がプンプンする。発売はこの冬の予定。じつに楽しみな1台だ。
