【試乗レポート・ホンダ N-VAN】機能性を追求した軽バンが見せる大人気のワケ

新車試乗レポート [2018.08.23 UP]

【試乗レポート・ホンダ N-VAN】機能性を追求した軽バンが見せる大人気のワケ

文●工藤貴宏  写真●ユニット・コンパス

 ここまで使う人のことを考えているのか。4ナンバー商用バン登録、いわゆる「軽バン」のブランニューモデルとして登場した軽商用バン「ホンダ N-VAN」に触れてみたら、その独自性とこだわりに驚いた。そして、独自性とこだわりの結果として生み出される実用性に感動した。1年の間にデビューする新型車はたくさんあるけれど、ここまで独自性の強いクルマはそうめったに出会えるものではないと断言できる。そこまで特別な車両なのだ。
 ホンダは発売以来およそ1ヶ月が経過した「N-VAN」の累計受注台数が、8月20日時点で1万4000台を超えたことを明らかにした。月間販売目標の3000台に対して4倍強という、好評ぶりを見せている。今回は実際に試乗して、その魅力、人気の理由を確かめてみたい。
 機能性抜群のN-VANの凄さを象徴するトピックをひとつあげると、「車内にバイクが積める」こと。軽自動車なのに……である。もちろんこれまでそんな軽自動車はなかったし、今後もN-VAN以外(後追いのライバルが登場するまで)はしばらくお目にかかれないだろう。
 決して大きいとはいえない車体の中にどうやってバイクを積むのか? その秘密はシートの「選択と集中」にある。

仕事道具としての機能性を極める

 運転席は長時間乗車も考えた作りで、軽バンながら普通乗用車並みに快適性も配慮されている。サイズが大きく、クッションも厚くて快適性の高いものだ。一方で助手席はそんな運転席とは違ってサイズも小さく、クッションも薄い簡素なつくり。リヤシートも同様で、運転席以外は簡易的なイスと割り切っている。なぜなら、折りたたむことを重視して作られているから。機能性を重視しているため、後席と助手席を信じられないほど低く格納できるのだ。畳んだ状態の荷室前後長は2.5mを超え、しかも完全にフラットなのが凄い。これがバイクを積める理由だ。たとえばホンダのバイクだったら、ゴールドウイングなどごく一部の特大バイクを除き積載可能というから見事である。

 N-VANは、日本で最も売れている乗用車であるN-BOXの派生モデルだ。しかし、実車に接して感じるのはN-BOXをベースに内外装を少し変更しただけでなく、かなりの部分が専用設計になっているという事実。前出のシートだけでなく、インパネもリッドのない大型収納スペースを重視した専用設計だし、助手席側サイドは前後ドアを同時に開けるとホンダ初のBピラーレス構造になっているのだ。Bピラーを取り去ってしまったことが意味しているのは、ボディ構造自体がN-BOXと異なるということである。
 この大開口部は人の乗り降りのためではなく、荷物の積み下ろしを楽にするための工夫。ボディ側面からハシゴなど大きな荷物を出し入れする際にBピラーが邪魔にならないようにと配慮しているのだ。

  • 荷物を積む、運ぶ、下ろすという商用車としての機能性が追求されている「働く人のためのクルマ」は、一般のユーザーにも多くの使いやすさをもたらす。

  • Bピラーがないことで、室内への人と荷物のアクセスが劇的にラクになっているN-VAN。N-BOXとは違った専用設計によってボディが強化されている(写真:ホンダ)。



 室内は収納スペースがたくさんあり、また後席や荷室のトリムは傷つきにくい、傷が目立ちにくい仕上げになっている。加えて内張りは室内への張り出しを防いで少しでも積載スペースを広げる形状とするなど、使う人のことを考えた設計が隅々まで施されていることに気が付く。使う人のニーズをくみ取った独自の発想で実用性を高める。まさにそんなホンダらしさがひしひしと伝わってくる使い勝手が見事で、N-VANは社訓である「使い手の生活の向上」を最優先に考えたホンダらしさが炸裂したクルマといっていいだろう。
 荷室を広げるパッケージングのN-VANは、運転席以外のシートに関しては機能性を優先させている。また電動スライドドアなど上級装備の設定もないから、もし日常的に人を乗せて長距離を移動するのであれば、N-BOXを選ぶべきかもしれない。しかし、そこを割り切れたからこそN-VANがここまで尖った存在になれたことは間違いない。そこも「選択と集中」なのだ。

大幅にレベルアップした走り

 N-VANのバリエーションは装備を簡略化し価格を安くして商用仕様に徹した(とはいえエアコンがオート式なのはうれしい)「G」や「L」が質実剛健仕様。いっぽうプライベートユースも考えた仕様の「+STYLE FUN」や「+STYLE COOL」の設定もあり、特に「+STYLE FUN」は商用車とは思えないポップなスタイルだから趣味のためのクルマとしてもマッチングがいい。どちらも駆動方式はFFと4WDがあり、「+STYLE」系では自然吸気のほかターボエンジンを選ぶこともできる。いずれも仕様にも共通するのは、軽バンとしては驚きの運転環境と動的性能だ。

 まずは運転ポジション。軽バンらしく高い着座位置(ドアを大きく開けなくてもスムーズに乗り降りできるようにN-BOXよりも高くしてある)なのだが、従来の軽バンと違って運転姿勢(主にシートとハンドルの位置関係)もペダルレイアウトも違和感なく受け入れられるから落ち着く。ハンドルの上下調整ができるのもうれしいし、運転席はシートのクッションが厚くて座り疲れしないのもいい。
 そして走ってビックリしたのは、従来タイプの軽バンとは比較にならないほど快適なこと。従来の軽バンに比べると(純粋な乗用車にはかなわないが)乗り心地はマイルドだし、高速道路はもちろん一般道も音も静か。はっきりいって、(実質的な先代に相当する)アクティバンはロードノイズとエンジン音が大きすぎで「車内で会話もままならない」という状況だった。それに比べると、N-VANはCVT化により高速巡行時のエンジン回転数が下がったことにより、静粛性の違いは雲泥の差。かなり乗用車に近づいたといえる。
 ハンドリングも同様で、一般道はもちろん高速道路でも信じられないくらい安定し、ハンドル修正も少ないことに驚いた。軽トラックベースではなく乗用車をベースにした車体のおかげで、従来の軽バンとは次元の違う快適性と操縦性を得ているのである。

 自然吸気のCVT車は100kgの重りを積んで走ってみたが、加速の立ち上がりと減速時にちょっと重さを感じたこと以外は加速もコーナリングもスムーズそのもの。コーナリングに不安感がないのは、ライバル勢との大きな違いである重心の低い荷室フロアも効いているに違いない。

 ターボともなれば、動力性能は十分。純粋なバンモデルの「G」や「L」にはターボエンジンが用意されないものの、もしプライベートユース用に「+STYLE」系を買うのなら、ターボを選ぶことをオススメする。動力性能にゆとりがあることで、高速道路はもちろん日常でも運転の疲労が全然違うからだ。クルマ好きとして見た場合、唯一のターボモデルのウィークポイントは、MTの設定がないことかもしれない(メカニズム的な問題はないがニーズがないので設定されないのだという)。こんなことを気にするのはよほどのクルマ好きだけだとは思うが、「S660用を改良した」というMTは必要ないのにシフトアップ/ダウンを繰り返したくなるほどシフトフィールが上質なことも報告しておこう。

ホンダセンシングも標準装備の安心感

 そして見逃せないのが運転補助デバイス。自動ブレーキをはじめとする先進安全システムは「ホンダセンシング」と呼ぶホンダの最新バージョンをなんと全車に標準装備しているのだ。安全性をおざなりにされがちな軽商用車としては快挙といえる。
 しかも、ホンダセンシングには高速道路で前を走るクルマにあわせて速度を自動調整するアダプティブクルーズコントロールも組み込まれているのが見逃せないところ。普通車でもまだ備わらない車種がほとんどの先進装備を軽バンの、しかももっとも安い仕様にも標準装着しているのだから驚くばかりだ。最新のホンダセンシングはカメラのメーカーが変更されるのと同時にロジックが進化しており、実際に使ってみても1年前にデビューしたフィットなどに比べても作動がスムーズに進化しているのを確認できた。


+STYLE FUNターボ ホンダセンシング(CVT)


全長×全幅×全高 3395×1475×1945mm
ホイールベース 2520mm
トレッド前 /後 1310 /1310mm
車両重量 970kg
エンジン 直列3気筒DOHCターボ
総排気量 658cc
最高出力 64ps /6000rpm
最大トルク 10.6kgm /2600rpm
サスペンション前 /後 ストラット /車軸式
ブレーキ前 /後 ディスク /ドラム
タイヤ前後 145/80R12



販売価格 126万7920円~179万9280円(全グレード)



グーネットマガジン編集部

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