新車試乗レポート
更新日:2020.04.23 / 掲載日:2018.09.04
月刊SUV最前線 SUBARU フォレスター最速公道試乗レポート

SUBARU フォレスター Premium(ボディカラー:ジャスパーグリーン・メタリック)
締め切り間際のタイミングだったが、幸運にもいち早く公道でその走りの実力を確認できた新型フォレスター。先立って行われたクローズドコースでの試乗も交えながらその魅力をお伝えしよう!
SUBARU フォレスター

●発売日:2018年7月19日
●価格帯:280万8000~309万9600円
●販売店:スバル全店
【公道試乗】SGPの進化が感じられる高レベルな走りが好印象!
6月末に開催されたクローズド試乗のコースは低中高のコーナーが連続し、ハンドリングを試すのに好適な環境だった。予想通りフォレスターは穏やかかつ素直なラインコントロール性を発揮し、減速を伴うコーナリングでも方向安定性が高いのが印象的だった。ドラテクの小技を楽しむタイプではないが、山岳路の長時間走行でも疲労を感じにくい特性と言える。
ただ、同コースの難点は動力性能チェック。ほとんどが登降坂で構成され、しかも連続するコーナーで加減速も行う。つまり、巡航時の速度コントロール性や余力感が試せない。そこが今回の公道試乗での大きな注目点である。
都市高速から高速道で60~100km/h域での巡航と緩加減速を試してみたが、2.5LとCVTの組み合わせはクローズド試乗会の印象から予想した以上にトルクフルであり、フォレスターの走りの車格感向上に寄与していた。
巡航時の回転数は1500回転前後を維持。緩加速では踏み込み時の加速反応がよく、踏み込み量を抑えやすい特性。また緩やかなダウンシフト時も、エンジン回転の上昇は極力低く抑えられており2000回転程度だ。ACC使用で高速での流れに乗って走っても同じような回転変化だった。
付け加えるならLKAの車線認識率や前走車追従制御も良好。交通量の多い都市高速でも作動中大半でロックオン状態が維持された。
明確な意図を持っての加速では、その強さに応じてダウンシフトの度合いを高めるが、急激な回転変化は抑えられ、CVTにしては速度上昇と回転上昇の一致感が高い。踏み増しし続けなければ、大概は4000回転以下で賄い、アクセルを緩めればすぐに回転を下げ始める。プラス500cc以上の余力感である。
荒れた舗装でも車軸周りを揺すられるような振動はなく、段差乗り越え時の突き上げも穏やか。大きく上下した時にはふわっとしたストローク感のため重質な味わいは薄めだが、無駄揺れの少ないすっきりした乗り心地だ。
ワインディングやラフロードを高く評価できるフォレスターだが、一般路を走ってみると信頼感と上質なツーリング性能に本質があるように思えた。それはスバル・グローバル・プラットフォームの熟成が進んだことも意味するが、クルマの楽しみ方が多様化する現代を背景にしたツーリングワゴンの有り様でもある。スバルが掲げた4WDの全天候ツアラーを、林道などのラフロードにまで拡大したオールロードツアラーがフォレスターなのだ。
横風が非常に強い状況にもかかわらず、高速走行でも終始安定。直進安定性の高さも魅力だ。
アクセルや操舵のレスポンスがちょうどいいバランス。ワインディングもとても走りやすい。
【ライバル比較】新型フォレスターvsエクストレイル

フォレスターのライバルと言えばやはりエクストレイル。販売現場などでは真っ向から競合する2車だが、そのキャラクターはやや異なる。両車を見くらべながら、特徴や違いを整理してみよう。
●文/川島茂夫 ●写真/奥隅圭之
別流儀の好敵手、それぞれの「もっと出掛けたくなる」とは
パワートレーン:JC08 20.0km/L(4WD)|【147+41PS】2L直4+モーター
NISSAN エクストレイル
ファミリー&レジャーの定番
●発売日:’17年6月8日 ●価格:219万7800~309万8520円パワートレーン:JC08 15.6~16.0km/L(4WD)|【147PS】2L直4
誕生以来一貫してレジャー&ファミリー用途を強調するアクティブSUV。シートや荷室の撥水・防水仕様など、遊びのギアとしての装備や機能が考え抜かれている。4WDはロックモード付きのインテリジェント4×4で、ガソリン車には3列7席仕様を設定。ドライバーのみならず、家族や仲間とのお出掛けを重視しているのが特徴だ。
パワートレーン(全車4WD):JC08 18.6km/L(4WD)|【145+13.6PS】2L水平対向4+モーター
SUBARU フォレスター
全天候型プレミアムツアラー
●発売日:’18年7月19日(アドバンスは9月14日) ●価格:280万8000~309万9600円パワートレーン(全車4WD):JC08 14.6km/L(4WD)|【184PS】2.5L水平対向4
スバル車の中でもクロカン寄りのキャラクターを持つ。SGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)を採用して刷新された、第5世代となる新型は、「どこでも行ける、どんな場所でも使える」をキーワードに、オフロード性能や高速性能、安全性能を磨いている。モーター駆動を加えたe-BOXERや顔認証システムといった新技術も要注目だ。
【比較1】オンロード走行性能
車体設計の新しさにも差はあるものの最も際立つのはフォレスター2.5Lの余裕だ
シャシー設計が新しく、揺れ返しの抑制やゆったりとしたストローク感など、フットワークの洗練度でもフォレスターが優れているのだが、運転しやすさや快適性で決定的となるほどの差はない。気になるのは動力性能。
【フォレスター】スバル伝統のシンメトリカルAWD(左右対称4輪駆動)に電動技術を加えたe-BOXER。優れた重量バランスと低重心を実現している。
【フォレスター】
【エクストレイル】
【比較2】オフロード走行性能


両車ともに一般レジャー用途なら道を選ばず
荒れた林道レベルならエクストレイルは苦もなく走り切る。エクストレイルで踏破が怪しくなるのはトライアル志向のオフロード、つまりアウトドアホビーを逸脱した領域である。フォレスターも本格オフローダーには及ばないが、泥濘路にも対応したXモードの採用もあって、入門レベルのオフロードなら対応可能。ただし、頻繁なオフロード走行を前提としない乗用車の基本設計では耐久性に不安があり、本格オフローダーの代替にはならない。
【エクストレイル】駆動の切り替えを行うオールモード4×4スイッチ。4WDシステムは走行状況に応じて前後トルク配分を100:0から約50:50に切り替えるインテリジェント4X4を採用。
【フォレスター】Xモードは電子制御によって4輪の駆動力やブレーキをコントロール。従来は深雪などではVDCのOFFを別に操作していたが、新型ではXモードスイッチだけで完結する。
【フォレスター】機能感と車格感を両立しているのがフォレスターのアドバンテージ。スペースの余裕ではエクストレイルと大差ないが、シートの見栄えと座り心地が1クラス上の出来。
【フォレスター】実用性に影響が出るような差ではないが、プレミアム感を求めれば重要な違いである。
【フォレスター】座面地上高は男性でも直接車外に足を着くには高め。ドア開口寸法と乗降姿勢はエクストレイルと大きな違いはない。
【フォレスター】サイドシル部を被うドア形状を採用するフォレスターの方が車体汚れを気にせずに足を着ける。悪路走行後の乗降では大きな長所だ。
【比較3】ユーティリティ
アウトドアレジャー配慮はさすがエクストレイルだ
エクストレイルのシート表皮とフロアは標準で防水仕様。ハイブリッド車以外は荷室も防水仕様である。一方、フォレスターは防水インテリアを採用するのはXブレイクのみとなる。2列シート仕様同士の比較では、後席使用時の荷室容量はエクストレイルが多少勝り、またガソリン車では後席スライド機構も採用される。多様な物を積載するアウトドアホビーへの対応力をシリーズ全体でカバーするエクストレイルに分がある。
【エクストレイル】エクストレイルはハイブリッド(写真)以外で荷室も耐水仕様となる。
【フォレスター】ともに分割可倒だが、パターンが異なる。フォレスターはXブレイク(写真)で耐水仕様。
【エクストレイル】最廉価なSグレード以外は、ハンズフリー&挟み込み防止機能付きのリモコンオートバックドアを装備。
【フォレスター】開度メモリー付パワーリヤゲートをオプション設定。閉まった後に全ドアロックするボタンも備える。
【エクストレイル】シート表皮の機能は、エクストレイルは全車防水シートを採用。
【フォレスター】フォレスターは写真のXブレイクのみ撥水ファブリック×合皮。
【比較4】先進安全装備

【フォレスター(アイサイト ツーリングアシスト)】「ぶつからない」アイサイトの最新版。全車速追従クルーズコントロール(ACC)や車線維持アシスト(LKA)といった運転支援も行う。
フォレスターは最新版アイサイトを標準装着
両車とも全車速型ACCや半自動操舵型LKAを採用。厳密な比較ではないのだが、似たような条件での認識率と制御精度はフォレスターが上回っていた。追従制御を行うためか、フォレスターのLKAは車線認識も走行ライン制御も広範囲で作動する。また、エクストレイルのプロパイロットは上級グレードへのオプションまたは特別仕様車に装着されるが、フォレスターのアイサイトは全車に標準装着されている。

【エクストレイル(プロパイロット)】ACC+LKAで「高速道路 同一車線自動運転技術」を謳う。特別仕様車の20Xi系に標準装備、20Xの3列シート車にオプション設定。

【フォレスター】「おもてなし」を謳うドライバーモニタリングシステム(アドバンスのみ)を安全支援にも活用。システムがドライバーの居眠りや脇見を感知すると、表示と警報音で注意喚起を行う。
【比較5】純正アクセサリー
アウトドア&レジャーをサポートするエクストレイル、フォレスターは走り志向のSTI用品なども揃う
アウトドアホビーでの使い勝手向上グッズが目立つのはSUVとしては当然だが、エクストレイルはそれが大半である。フォレスターもアウトドア系は同傾向だが、プレミアム感やスポーティ感向上の用品も充実している。中でもSTI用品は見所。オンロード高性能予感させるアルミホイールやフレーム強化のフレキシブルタワーバーなどを用意。フォレスターのコンセプトがよく分かる品揃えだ。
【フォレスター】スバル車の例に漏れず、SUBARU純正アクセサリーのほかにレーシングイメージの強いSTIブランドのアクセサリーが多数ラインナップする。
※写真はアクセサリー装着車

【フォレスター】写真はフレキシブルタワーバー、アルミホイール、シフトノブ。これでもSTI用品群の一部だ。

【エクストレイル】アクセサリーカタログの積載用アイテムページ。標準装備のデッキボードに機能を追加する用品が揃う。
遊びのギアとしての使い勝手をアップする用品が豊富なのがエクストレイルらしいところ。撥水/防水機能は標準仕様ですでに充実しているため、積載機能の拡張が見どころだ。
【比較6】主要諸元&価格

新型フォレスター CLOSE UP
ライバル比較に続いては、フォレスター独自の項目について、改めてまとめてみよう。
【新エンジン】e-BOXER

量バランスに配慮したシステムレイアウト。モーターとCVTを2つのクラッチで挟む構成で、リチウムイオンバッテリーは車体後部に搭載する。
1モーター2クラッチのパラレルハイブリッドモーター出力は限定的でアシスト色が強い
以前、XVに採用されていたハイブリッドシステムの進化版。CVTに駆動回生モーターを組み込んだ1モーター2クラッチのパラレル方式を採用。ハイブリッド用電池にリチウムイオンを採用するなどアップデートされているが、モーター出力は10kWであり、本格ハイブリッドとISG式マイルド型の中間的システム。加減速や発進停止の頻度が高い市街地走行での燃費改善に効果的である。

【新技術】顔認証 ドライバーモニタリングシステム

ドライバーの顔を数値化して認識することで特定の個人に向けた「おもてなし」機能が可能に
ドライバーの顔を赤外線カメラで認識し、居眠りや脇見では警告を発するのがこのシステムの最も重要な機能だが、予め登録しておけば乗り込んだ時点でドライバーを特定し、記憶されたシートポジションへのセットなど自動で行ってくれる。しかも、顔は画像として認識されるのではなく、情報を数値化して記録しているので、個人情報の保護も考慮されるという時代先取りシステムである。

ドライバーの顔を認識し、シート位置やエアコンなどを前回の状態に復帰させる。眉毛も見ているため、化粧顔と素顔を別人と認識する場合も。
【ラインナップ】グレード&ボディカラー

ツーリング:280万8000円|プレミアム:302万4000円|アドバンス:309万9600円
4タイプ全13色を設定
グレード構成は、スタンダード、豪華装備のプレミアム、アウトドア志向のXブレイク、顔認証&e-BOXERのアドバンスで、全4タイプ。
Xブレイク:291万6000円
アイスシルバー・メタリック
クリスタルホワイト・パール ※3万2400円高
ダークグレー・メタリック
クリスタルブラック・シリカ
【開発者インタビュー】「SGP」が楽しさと快適性の両立に大きく貢献

「従来モデルも我々としては自信作でしたが、新型はドライビングの楽しさに加えて同乗者全員が快適であることも重要視しました。それをバランスよく両立させるためには『SGP』のウエイトが非常に大きかったです。絶対的な剛性だけでなく剛性バランスや力の流れなども考慮したボディと理想のジオメトリーでよく動くサスペンションの相乗効果により、走りは大きくレベルアップ。ちなみにロール剛性は220mmの最低地上高と視界性能を重視したガラス面積による重心の高さながら、欧州競合車に迫る性能です。基本素性がよくなると無理に固めなくても操安性が実現できるので、快適性も大きくレベルアップさせることができました」
●文:山本シンヤ
SGP=スバル・グローバル・プラットフォーム

スバルXVやインプレッサに採用されている最新プラットフォーム。軽量化や自動運転技術への対応を果たしている。※写真はスバルXV
オン&オフの快適性と安心感がフォレスターのアドバンテージだ
エクストレイルはアウトドアホビー向けワゴンとして誕生。現行車もファミリー&アウトドアホビーのスペシャリスト的な存在である。一方、フォレスターはスバルのラインナップではアウトドア志向が最も強いが、どちらかと言えばオールロード・オールシーズンツアラーというべきモデルである。その走行性能を利してアウトドア趣味に向けたのがXブレイクであり、そこではエクストレイルと似たような適応用途になるが、それ以外は行動範囲を拡大したプレミアムワゴンの印象。ラフロード対応力を加えたレガシィツーリングワゴンの後継車と言っても過言ではなく、オン&ラフロードでの快適と安心がエクストレイルに対する大きなアドバンテージだ。
オススメグレードはコレだ!
フォレスター Xブレイク
291万6000円
総合的な走りのゆとりや車格への適性から標準設定となる2.5L車を勧めたい。悪路対応力やSUVらしい雰囲気を重視するならXブレイクが筆頭だが、グレードは使い方次第。エクストレイル 20Xi
300万9960円
燃費と動力性能はハイブリッドに分があるがわずかな差でしかなく、コスパはガソリン車がいい。レジャー向けには2列シート車が使いやすく、プロパイロット標準仕様がいい。
提供元:月刊自家用車