新車試乗レポート
更新日:2018.11.26 / 掲載日:2018.04.01

HONDA「新型ヴェゼル」試乗レポート&詳細チェック

●文:川島茂夫 ●写真:佐藤正巳

2013年に発売されてから約5年、3度目のマイナーチェンジを受けたヴェゼル。ありがちな次期モデル登場までの繋ぎか? と思いきや、実際に走ってみるとそんなレベルでは留まらない。大進化という言葉がしっくりくるほど変貌していたのだ。

 アウトドアにはあまり興味がないが、クーペ風味の洗練された見た目や、高いアイポイントを気に入ってSUVを選ぶユーザーは多いだろう。確かにSUVはセダンや2BOX車とは違った趣味性の高い雰囲気を楽しめる。クーペでは実用性が決定的に不足するが、非効率ながらSUVなら実用性のハードルも越えやすい。そんなこともあってか、SUVは一般ユーザー向けのカテゴリーとして定着している。
 ヴェゼルはSUVのレジャー用途向けワゴンとスペシャリティカーの両面を高水準で達成しているのが特徴である。特にキャビンユーティリティの高さはコンパクトSUVの中ではトップクラスであり、実用面の犠牲はほとんど無く、2BOX車のようなモデルからも無理なく乗り換えが可能だ。ただし、車格からすれば高価格である。機能や性能に比べて割高なのはSUVに共通する弱点だが、スペシャリティ感とプレミアム感を強化したC‐HRの登場により、相対的に割高感は強まった。
 今回実施されたマイナーチェンジの目的は、プレミアム感の強化が軸となっている。まずは大きく印象を変えたフロントマスクが象徴的だ。先進感溢れるインラインタイプのLEDヘッドランプに重厚な趣の新デザインのグリルとバンパー。アクティブな若々しさを主張していた従来型から一転して大人っぽい落ち着きを感じさせてくれる。
 インテリアも革張り内装的な加飾パネルやシートなどのステッチ等を見直し、プレミアムクラスを思わせる設えとして、外観とも適合したプレミアム感がある。実際に乗り込むとカタログ写真で見る以上に印象が変わっている。
 もともと後席のスペースや見晴らしは優れていたが、車内の雰囲気を高めた結果、寛ぎも向上した。後席に人を乗せる機会が多いユーザーにも嬉しい改良である。
 また、ホンダセンシングが全車標準装着となった。ACCは高速適応型だが、LKAは半自動操舵による車線維持機能を備え、誤発進抑制機能や歩行者対応衝突回避、路外逸脱抑制機能など上級クラスに勝るとも劣らない安全&運転支援装備をベーシックグレードから装着。安全&運転支援機能のコスパの高さも魅力である。
 マイナーチェンジの狙いをまとめれば、割高感の払拭となるが、質感高級感の向上だけでなく、キャラも大人嗜好へと転換していた。しかも、その変化は内外装や装備だけでなく、スペックには現れない走りの質感でもプレミアム感を向上させている。

  • 搭載エンジンは従来型と同じ、NA1.5Lと1.5Lハイブリッドの二本立て。ハイブリッドはSPORT HYBRID i-DCDとの組み合わせで、省燃費を実現しながら優れた動力性能を併せ持つ。

  • ミッションは7段変速機能を備えるモーター内蔵式のDCT。今回のマイナーでは制御系に改良が加えられ、より自然な変速制御を実現。走行フィールがより高まっている。

コーナー時に感じることが多かった、小型車特有の微振動や突き上げ感は大きく減少。明らかに高まった接地感や動力制御など、走りの質感は大きく高まっている。

  • 4WD車に採用されるリアルタイムAWDも最新仕様にアップデート。四輪へのトルク制御が素早く自然に行われることで、雪道などの不整地路での安定性が向上している。

  • 振幅感応型ダンパーを用いるなど、従来型から走りを強く意識していたヴェゼル。新型は制振材を最適配置することで、静粛性も大きく高まった。

  • ホンダセンシングが、全グレードに標準装着されたこともトピックス。歩行者検知&ステアリング制御付きのLKAなど、実践的な安全&運転支援装備を全てのグレードで享受できる。

 ヴェゼルのハードウェアはフィットフリードに由来する。つまり、スモール&コンパクトクラスの設計である。車格や車体サイズからすれば何らおかしくはないのだが、プレミアム&スペシャリティ志向で発展したモデルとしては、やや物足りなさを感じてしまう。
 従来型と比較すると走りの志向自体はさほど変わっていない。全体的にスポーティ味を強めているが、硬柔や一般ユーザー/マニア向けという視点では同じ路線だ。
 しかし、乗ってみると走りの質感が明らかに向上している。これまではサスペンションの関節周りの揺動感などの緩さにスモールカー由来の設計を意識させられたが、新型ではそういった揺らぎがほとんど感じられない。硬質ゴムで押さえつけているような収まりが剛性感の高まりを実感させる。ストローク制御もバネレート先行の印象が強かった従来型に対して減衰が利いた印象。どっしりした硬さが接地感を高めながら、荒っぽい突き上げを上手く吸収している。揺れ返しの余計な挙動も少なく、ハンドリングも乗り心地も据わりがいい。これらマイナーチェンジとしてはけっこうな進歩ぶりにより、スモールカーを感じる部分が少なくなり、フィットやフリードの上級に位置するモデル、車格の違いを、はっきりと感じられるようになった。
 動力性能は力感の向上がポイントだ。急加速時の動力性能は従来型とさほど変わらないが、踏み増し時の加速の立ち上がりが鋭くなった。初期加速に効果的に電動アシストを用い、定常的な加速ではエンジンを主体するような制御を行っている。登坂加速など連続高負荷ではエンジン主体となるため、1.5Lプラスα程度になってしまうが、高速巡航時のアクセル踏み込み量減少とそれに伴う巡航ギヤ維持能力の向上により、力感も1ランクアップ。パワートレーンの余力感を強く実感することができ、走りの車格感も高まった。
 ACCやLKAの制御は大きな変化は見られず、ミリ波レーダー+カメラ式を採用するシステムとしては制御範囲も制御精度も平均クラスである。とはいえ、ACCとLKAの高速走行での安心感は格別。文字通りに運転支援と捉えれば何の不足もない。
 走りの車格感のアップはロングツーリングの心地よさに影響が大きい。サスチューンも高速になるほどバランスがよくなる。タウン&レジャーに適した実用性をベースに趣味性やプレミアム感を求めるユーザーにとっては、上級2BOX車を含めてもベストバランスを持つ1台と言っていいだろう。

  • リヤエンドにかけて絞り込まれるボディラインは、最近のSUVに採用されることが多いデザイン。トレンドを生み出したパイオニアだ。

  • 全長は4330mm(RSは4340mm)、ホイールベースは2610mmと、このクラスとしては平均サイズ。

  • 今回のマイナーチェンジで大人っぽさを感じさせるマスクに。高級感もアップした。

  • 全幅は1770mmと幅広だが、最小回転半径は5.3~5.5mと小回りも良く、市街地でも不自由は感じない設計も見所。

従来型でも組み込み精度も高く、上質感の演出には力を入れていたが、新型もその流れは踏襲。上位グレードのZにはジャズブラウンの専用インテリアが採用されている。

今回のマイナーでフロントシートの形状を変更。シートまわりのステッチ変更や素材の質感が高まったほか、ホールド性も高まりドライバーの身体をよりしっかり支えられるようになった。

  • バンパー下部のインテーク&フォグランプの形状を変更。LEDヘッドライトもインラインタイプを採用。フロントグリルも変わるなど、フロントイメージは一新された。

  • 通常時でも荷室の奥行きは十分。後席格納もダイブダウン式を採用するなど、ユーティリティの面で同クラスのライバルをリードしている。

  • スマートフォンをUSBで接続すれば通信機能も使えるホンダ純正インターナビは、最新版にアップデート。「Apple CarPlay」や「Android AutoTM」にも対応した。

提供元:月刊自家用車

この記事はいかがでしたか?

気に入らない気に入った

グーネットマガジン編集部

ライタープロフィール

グーネットマガジン編集部

1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
グーネットでは軽自動車から高級輸入車まで中古車購入に関する、おすすめの情報を幅広く掲載しておりますので、皆さまの中古車の選び方や購入に関する不安を長年の実績や知見で解消していきたいと考えております。

また、最新情報としてトヨタなどのメーカー発表やBMWなどの海外メーカーのプレス発表を翻訳してお届けします。
誌面が主の時代から培った、豊富な中古車情報や中古車購入の知識・車そのものの知見を活かして、皆さまの快適なカーライフをサポートさせて頂きます。

この人の記事を読む

1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
グーネットでは軽自動車から高級輸入車まで中古車購入に関する、おすすめの情報を幅広く掲載しておりますので、皆さまの中古車の選び方や購入に関する不安を長年の実績や知見で解消していきたいと考えております。

また、最新情報としてトヨタなどのメーカー発表やBMWなどの海外メーカーのプレス発表を翻訳してお届けします。
誌面が主の時代から培った、豊富な中古車情報や中古車購入の知識・車そのものの知見を活かして、皆さまの快適なカーライフをサポートさせて頂きます。

この人の記事を読む

img_backTop ページトップに戻る

ȥURL򥳥ԡޤ