新車試乗レポート
更新日:2020.04.23 / 掲載日:2018.04.01
MITSUBISHI「エクリプス クロス」完全詳報
●文:川島茂夫 ●写真:奥隅圭之
「エクリプス クロス」グレード構成
安全装備の充実を考えれば上位2グレードが狙いだ。価格差は約18万円だが、OPナビの価格差が大きいため、ナビ装着を考えるならスマホ所有者は最上級グレードが買い得。予算に余裕があれば4WDをぜひ勧めたい。
グレード:M
2WD:253万2600円4WD:274万8600円
グレード:G
2WD:270万6480円4WD:292万2480円Mからの主要追加装備●LEDヘッドライト ●ACC●電動パーキングブレーキ
グレード:Gプラスパッケージ
2WD:287万9280円4WD:309万5280円Gからの主要追加装備●スマホ連携ディスプレイ●後退時車両検知警報システム
特徴的な クーペフォルム
シャシーの構成はアウトランダーのショートホイールベース版となり、その点ではRVRの姉妹車と考えてもいい。ホイールベースはRVRと同じだが、全長は40mm長く、パッケージ寸法はほぼ同じである。コンパクトSUVでは標準的な車体寸法であり、1.8mを超える全幅が気になるものの都市部でも使いやすいサイズだ。 外観の特徴は個性的なスタイルである。スペシャリティ型ではクーペ的なデザインをキャビン周りに採用するのが標準的であり、エクリプスクロスもその点では同様だが、後半のルーフラインをあまり絞り込まずにウェッジを利かせたベルトラインとハイデッキによってデザインに切れを与えている。 RVRほどではないが、後席と荷室周りにボリュームを与えたプロポーションであり、エクリプスクロスが前席優先のスペシャリティ型ではなく、コンパクトSUVとしての実用性にこだわっているのが伺い知れる。 また、短い前後オーバーハングや悪路走行後の裾汚れ防止のためにサイドシルを被うように設計されたドアパネルなどSUVをSUVらしく使うための配慮を施しているのもSUVをリードしてきたミツビシ車らしい。

ベルトラインや彫刻的なキャラクターラインによるウェッジシェイプ(前傾姿勢)が特徴的なエクステリア。クーペルックながらアクティブなイメージも加えている。

前後のオーバーハングを切り詰めタイヤを四隅に配置、悪路走破性を高めている。
●全長:4405mm ●ホイールベース:2670mm●最低地上高:175mm●フロントオーバーハング:955mm ●リヤオーバーハング:780mm ●アプローチアングル:20.3度●ディパーチャーアングル:30.8度
フロントは上部にヘッドライト類、下部にターンランプとフォグランプを配置した。
リヤはテールゲートを直線的に落とし込みオーバーハングを切り詰めた特徴的なスタイル。
薄くてシャープなLED ヘッドライト はG以上に標準となる。ただし、LED デイライトは全車標準とした。
LED テールランプと中央のハイマウントストップランプが同一直線上で発光することで、幅広さと安定感を表現。
シルバー&ブラックを効果的に配したバンパーを中心に、リヤ下部も高いデザイン性と躍動感を両立している。
高い位置に配したリヤランプと前傾したリヤウインドウを上下に二分し、立体的で個性的なリヤスタイルを実現。
225/55R18タイヤ+18インチアルミホイール(切削光輝仕上げ)はG以上に標準。
ベースグレードのMのみ215/70R16 タイヤ+16インチアルミホイールとなる。
新開発の 1.5L直4ターボ

全車新開発の1.5L直4ターボエンジン(150PS/24.5kg・m)を搭載する。2.4L自然吸気エンジンと比べると低回転域から高いトルクを発揮するのが特徴。さらに、発進・加速時のレスポンスと動力性能を向上する可変バルブタイミング機構MIVECも採用している。
搭載エンジンは新開発された1.5L直4のダウンサイジングターボ。ターボを駆動する排気ガス圧力を素早く立ち上げ、なおかつ過剰にならないように圧力を制御するウエストゲートバルブの電動化や精密燃料制御を可能とする直噴システム、過熱によるノッキングを予防するナトリウム封入排気バルブなどが採用されている。ボア×ストロークは75.0mm×84.8mmのロングストロークを採用。ちなみにストローク量は標準的な1.8L4気筒と同等であり、トルク優先の設計と言える。結果、自然吸気2.4L級の最大トルクを2000~3500回転で発生。組み合わせられるミッションはCVT。手動変速で8速のステップ変速も可能だ。 JC08モードの燃費はFF車が15.0km/L、4WD車が14.0km/L。コンパクトSUV相対でも誇れる数値ではないが、ダウンサイジングターボの本領は高速巡航である。100km/h巡航時の変速比設定は約2000回転であり、狭い回転レンジを無駄なく使えるCVTとのコンビでは長距離燃費はかなり期待できる。また、FFと4WD車の燃費差があまり大きくないことを見ても実用燃費との乖離が少ないと思われる。
全車INVECS-III 8速スポーツモードCVTを採用。8速クロスレシオ設定でエンジンのポテンシャルをフルに引き出す。また、ステアリングにはパドルシフトも備える。
サスペンションはフロント:マクファーソンストラット式、リヤ:マルチリンク式を採用。スプリング、ショックアブソーバーなど細部にわたり最適化を図った。
3点留めのストラットタワーバーなど、サスペンション取付部を中心とした補強部材の追加により、ボディ構造は高い剛性を実現した。
注目の4WDシステム「S-AWC」
4WDシステムはFFをベースに後輪へのトルクフローを多板クラッチでコントロールする電子制御式。後輪に伝わるトルク量と前後輪の同期性はクラッチの締結力によるが、S-AWCはこの特徴を活かし、4輪のトルク配分を能動的に制御し、運動性と安定性を向上させるシステムだ。4WDの駆動性の確保、左右のトルク配分を不均衡にすることで方向性を制御するAYCとASC、そして4輪の制動力を最大限に引き出すABSを統合。悪路踏破性だけでなく荒天時や限界領域のコントロール性を向上。オンロードでの安心4WDシステムでもあるのだ。
装備や広さは トップレベル!

インテリアはブラックとシルバーのモノトーンとし、水平基調のインパネと立体的なシルバー加飾によって質感とスポーティさを両立。
外観を見ているとアウトランダーのショートボディ仕様あるいはRVR姉妹車といったイメージも浮かぶが、インパネ周りのデザインはまったくの別センスである。メーターフードや各操作パネルはコンパクトかつ機能的にデザインされ、それぞれを区分する部分にメタル調や光沢の加飾を施す。アウトランダーやRVRと比較すると贅肉を削ぎ落としたような精悍さが感じられる。本流SUVとスペシャリティ型の嗜好の違いもあるのだろうが、世代が一気に若返ったような印象さえある。 カタログ室内寸法はRVRとほぼ同じ。コンパクト2BOX相応の広さであり、大柄な男性の4名乗車でも無理がない。 実用面で興味深いのは後席機能である。2列シート車では珍しく左右独立のスライド機構が備わっている。スライド量は200mm。最前位置セットにすると膝前スペースはゼロになってしまうが、荷室奥行きのプラス20cmのゆとりはレジャー用途では大きなアドバンテージだ。もちろん、リクライニング機能も備わり、9段階の角度調節で風景を楽しんだり、寛いだり状況に応じた着座姿勢が採れる。限られたスペースを便利に快適に過ごす工夫も見所である。
メーターはオーソドックスなアナログ式を採用。視認性に優れる。スイッチ類もオーソドックスな分、操作性に優れる。
スマートフォン連携ディスプレイオーディオ「SDA」を最上位グレードのGプラスパッケージに標準装備。Apple CarPlayやAndroid Autoに対応する。
センターコンソールに配されたタッチパッドコントローラーに、スマホ感覚でオーディオ機能操作を行える。
電動パーキングブレーキ及びブレーキオートホールドはエントリーグレード以外標準。
最上位グレード以外はオーディオ非装着(2DIN スペース、オーディオ取付キット)となる。逆に最上位グレードはディスプレイレス仕様が設定されないので注意。
電動パノラマサンルーフはフロント上部が開閉可能で、リヤは埋め込み。G以上にオプション設定(OP価格:12万4200円)。
本革シートはシートヒーター・電動調整機構(運転席のみ)とセットで24万8400円のオプション(G以上)。
身長170cmの成人男性が前後に着座しても窮屈さのない居住空間を実現した。後席は200mmのシートスライド機構と、9段階のリクライニング機構を装備。最後部にセットすれば、男性でも余裕で脚が組める。
ラゲッジは40:60の分割可倒式を採用。リヤシートを最前部にセットした状態で448Lの最大荷室容量を確保。
実用的な深さを確保したラゲッジアンダーボックスを装備。
装備の先進性はクラス標準レベル
普及し始めている先進安全装備で未採用なのは半自動操舵LKAくらいである。車線維持支援は逸脱警報のみ。AEBSは歩行者対応型で、ACCは渋滞追従を含む全車速型を採用。死角検知は走行中の後側方監視のBSM、駐車場の後退出庫等などで側方死角の車両を検知するRCTAも設定。誤発進抑制は前進と後退に対応する。ただし、全グレード共通設定ではなく、ベーシック仕様にはACCも設定されない。前記装備を標準装着するのは最上級グレードのみだが、GもBSMやRCTAがOPになる以外は標準装着となっている。※LKA:レーンキーピングアシスト ACC:アダプティブクルーズコントロール AEBS:先進緊急ブレーキシステム BSM:ブラインドスポットモニター RCTA:リア・クロス・トラフィック・アラート
360度全方位カメラを設定。C-HRやヴェゼルには設定されていないだけに、大きなアドバンテージ。
運転中の視線移動を少なくするヘッドアップディスプレイはエントリグレード以外に全車標準となる。
標準装備レベルは高い
FF/4WDともに3グレード構成。ベーシック仕様となるMは内外装がシンプル仕様となり、OPも大幅に制限される。中間グレードとなるGではライン装着ナビやBSM、RCTAなどOP選択が可能となり、ヘッドアップディスプレイなどの先進装備も採用。また、LEDヘッドランプの装備や本革シートのOP設定など、内外装の仕様は最上級のGプラスパッケージと同等になる。OPも含めてGプラスパッケージ専用となる主な装備はロックフォード製のプレミアムオーディオくらい。装備の必要度で絞りやすいグレード構成である。
提供元:月刊自家用車