新車試乗レポート
更新日:2019.05.23 / 掲載日:2019.03.05
【SUV最前線2】MITSUBISHI 新型デリカD:5/エクリプス クロス/アウトランダ
●文/山本シンヤ ●写真/三菱自動車工業、編集部
とにかくタフなコースだった! 2月初頭に三菱自動車が開催した雪上試乗会は、起伏に富んだオフロードコースを新型デリカD:5やエクリプス クロス、アウトランダーPHEVで思う存分走り回るというもの。悪条件になればなるほど見えてくるクルマの真の実力をレポート!
MITSUBISHI 新型デリカD:5
登場から12年ぶりの大進化。ビッグマイナーチェンジの扱いだが、エンジンやトランスミッションをはじめ、エクステリアからインテリアまで一新。高い悪路走破性はそのままに高級感や静粛性などを大幅に高めている。
●発売日:2019年2月15日
●価格:384万2640円~421万6320円
●販売店:ミツビシ全店
●問い合わせ先:電話:0120-324860
WLTCモード燃費
WLTCモード平均12.6km/L
市街地モード9.9km/L
郊外モード12.7km/L
高速道路モード14.2km/L
JC08モード燃費13.6km/L
すべてが別モノ! 想像を超える大進化だ
もう旧型には戻れない! 新型のすごさを超体感
クルマの本当の実力を知るには過酷な条件で乗るのが一番である。その理由は、路面環境が悪くなればなるほどクルマの素性や本質が露わになるからだ。三菱は昨年に引き続き、北海道の千歳モーターランドで雪上試乗会を実施した。
一般的には自動車メーカーの雪上試乗会は、きれいに圧雪された路面を用いて行なわれることが多いが、今回のテストは起伏の激しいオフロードコースに加えて、まるで深雪をそのまま掘り返したような激しい凹凸路面の中での走行となった。
最初に新旧デリカD:5を同じコースで比較試乗を行なった。エンジンはどちらも2.2Lディーゼルターボ「4N14」だが、フリクション低減や燃焼室の変更、次世代インジェクターの採用など中身は別のエンジンと言っていいくらいの変更を実施。出力は148→145PSと若干下がったが、トルクは360→380Nmにアップ。ATは6速→8速に変更、ワイドかつクロスレシオ化されたギヤ比を採用している。
新旧で乗り比べると「これ本当に同じエンジンなの?」と驚くほどの差が感じられた。具体的には、旧型だとアクセルを全開にしてやっと登れるような急勾配なのに、新型ではアクセル開度半分程度で登り切ってしまった。
新旧共に電子制御カップリングを採用するアクティブオンデマンド式だが、制御が大きく変更されている。AWC思想を活かした緻密な駆動力配分に加え、雪道走行に最適な「4WDロック」時の前後駆動力配分は、旧型は最大50:50に対し新型は最大で40:60と後輪への駆動力を高めたことも、走破性アップに効いているはずだ。
また、フットワークの進化はオンロード以上に実感できた。連続した大きな凸凹を走っている時、旧型は「ショックアブソーバーが付いているの?」と思ってしまうくらい前後左右に揺すられたが、新型は同じ道を走っていると思えないほど凸凹を綺麗に吸収してくれる。例えるならばトラックと乗用車の差と言っていいくらいだ。
ちなみに新型では圧雪路面でパイロンスラロームにもトライしてみた。見た目に似合わず操作に忠実な上にコントロール性が高く、ドライバーの操作次第では姿勢変化を安心して楽しむことも可能だったのは意外だった。ちなみに旧型はそもそもそんな気が起きなかったので、これも大きな進化だ。
このように新型と旧型の走りはまったく別モノと言っていいくらいの大きな差があり、正直言ってしまうと「もう旧型には戻れないな」と言うのが本音である。
新型デリカD:5 ここがスゴい! 「ミニバンの枠を大きく超えた走破性の高さ」
悪路走破性の高さは言うまでもないが、ハード面とソフト面の両方の進化により誰でも簡単にその実力を引き出せるようになったのが新型のポイント。個人的にはミニバンではなく「3列シートSUV」と呼んでもいいと思っている。
悪路走破性の高さでは旧型も定評があるが、新型ならもっとラクに同程度の走りができてしまう。進化した実力に驚くほどだ。
ロードクリアランスが十分あるため、深く積もった雪でもまったく問題なく走れた。
新たに採用された電動パワステは路面からのキックバックも少なく運転しやすい。
MITSUBISHI エクリプス クロス「運動性能の高さが感じられるドライバーコンシャスな味付け」
●価格帯:253万9080~312万8760円
三菱初の1.5Lダウンサイジングターボを搭載したクロスオーバーSUV。ランエボ譲りのS-AWCを搭載した運動性能の高さが見所。クーペライクな見た目だがユーティリティ面も充実。
エクリプス クロスのここがスゴい!「S-AWCの面目躍如! これぞ走れるSUV」
ライバルと似たシステムを搭載するので都市型SUVに思われがちだが、走りの考え方はランエボのDNAを色濃く感じさせる。ドライバーの操作次第でオーバーステアにも出来るクロスオーバーSUVは世界を見ても珍しい。
AWDの安定性に加え独自の走りの味もプラス
エクリプスクロスは都会派を感じさせるクーペスタイルのデザインとは裏腹に走りは骨太で、特にS-AWCの制御はランエボを彷彿させる部分もあった。具体的にはドライバーが安定して走りたい時は無駄な挙動を抑えた正確なライントレース性でシッカリとノーズをインに入れてくれる。一方、ドライバーが遊びたい時は、カウンターステアを許容しながら振り回して走らせることも可能だ。
一方、アウトランダーPHEVは電動化パワートレーンの応答性の良さが活きていて、まるでクルマが軽くなったかのようなハンドリングとしなやかさな足さばきを実感。コーナリング時の駆動力制御はエクリプスクロス以上に緻密でライントレース性も高い。ちなみに新型で追加されたスノーモードはよりすべてが穏やかで安定方向。逆にスポーツモードは本来舗装路用のモードだが、パワートレーンはよりダイレクト、駆動制御はより曲がろうとするため、低μ路では姿勢変化も楽しめた。
一般的にはAWDは安定性を高めるデバイスである。もちろん三菱も基本的にはそうなのだが、それだけに留まらないプラスαの引出しが用意されているのが独自の味でもあるのだ。
MITSUBISHI アウトランダーPHEV「素早くスムーズで緻密! 電動ならではの走りだ」
●価格帯:393万9840~509万40円
マイナーチェンジで効率追求の視点からエンジンを2.4Lに拡大するとともに、駆動用バッテリーなどのPHEVシステムも大幅強化。S-AWCにスポーツモードとスノーモードを新たに設定したのも見逃がせないポイントだ。
アウトランダーPHEVのここがスゴい!「三菱の技術の粋! 最先端の電動パワートレーン」
ガソリン車がトロいと感じてしまう電動パワートレーンのレスポンスの良さと力強さが魅力。街乗り重視かと思いきや悪路走破性などSUVの能力が犠牲になっていないのも素晴らしい。現時点で三菱の技術をすべて盛り込んだ一台だ。
AWCシステム解説&開発秘話
高い走破性を誇るAWCに、より曲がるための運動性能を付与したのがS-AWC。モデルによって機構は異なるが、重要なのはハードではなく制御の考え方。簡単に言えば、状況に応じて制御方法を変えるのではなく、連続的に制御量を調整するのが三菱のこだわりだ。ユーザーは連続的に色々な条件の道を走る上に、運転の仕方もバラバラだが、S-AWCは様々なパラメーターを合算した上で最適な指令を出せるため、その時にピッタリな制御をすることが可能だ。その結果、乗っていて違和感がなくなる→クルマに対する信頼性が上がる→気持ちいい走りに繋がるのだ。
ランサーエボリューションX
フロントはブレーキ制御(ABS/ASC)、センターデフ(ACD)、リヤデフは(AYC)を統合制御することで、4つのタイヤを効果的に使う事が可能となり、ハイレベルな運動性能とシームレスな車両挙動を実現している。
エクリプス クロス
電子制御カップリング式AWDにブレーキAYC、ASCを組み合わせる。通常走行時は操縦性と安定性を上手にバランスさせた走りだが、ドライバーの意志で姿勢変化を楽しむ走りも可能。オート、グラベル、スノーの3つの走行モード切り替えを持つ。
新型デリカD:5
電子制御カップリング式AWDのみで、クルマのキャラクターを考えてS-AWCは採用されていない。しかし、前後駆動力配分制御にはS-AWCの知見やノウハウが盛り込まれている。2WD/4WDオート/4WDロックの3つの走行モード切り替えを持つ。
アウトランダーPHEV
高トルクを発生するモーターを前後に搭載。機械的には繋がっておらず、モーターの持つ優れたレスポンスを活かし、クルマの走行状況、路面μの変化に対し瞬時に的確な前後トルク配分と左右の駆動力配分をコントロールする。
e-EVOLUTION CONCEPT (2017年東京モーターショー参考出品)
三菱最強のAWDシステム。フロントに1機のモーター、リヤにデュアルモーターAYCで構成されるトリプルモーターAWD。EVならではの精度が高くレスポンスのいい制御により、旋回性能とトラクション性能を飛躍的にレベルアップさせる。