新車試乗レポート
更新日:2018.11.26 / 掲載日:2018.02.05
【試乗レポート】ツルツルの氷上で確かめた日産インテリジェントモビリティの実力

文と写真●ユニット・コンパス
長野県の蓼科に位置する女神湖は、四季折々で表情を変える自然豊かな景勝地。そんな場所が冬になると自動車関係者で賑わうことになる。お目当ては湖面を凍らせることで実現する「女神湖氷上ドライブ」。雪道よりもさらに路面のミュー(摩擦係数)が低い環境となるため、クルマの挙動確認や安全運転講習などに活用されているのだ。
日産自動車の主催で行われた「Nissan Intelligent Mobility 氷上・雪上試乗会」は、まさに氷上だからこそ実感できる試乗体験が目白押しだった。 タイトルにもなっている「Nissan Intelligent Mobility(以下、インテリジェント モビリティ)」は、日産が掲げるクルマづくりのスローガンで、自信を持って運転できるための「インテリジェント ドライビング」、走りの快感を与える「インテリジェント パワー」、そしてつながる便利さを提供する「インテリジェント インテグレーション」で構成されている。今回の試乗会では、テスト地となった女神湖の湖上や周辺道路を生かして「インテリジェント ドライブ」と「インテリジェント パワー」の領域に焦点が絞られたプログラムが用意されていた。
雪道でSUVの本領を発揮してくれたエクストレイル ハイブリッド

エクストレイル ハイブリッド
まず午前のプログラムは、SUVエクストレイルシリーズのエクストレイル ハイブリッドと電気自動車であるリーフを借りて、周辺道路でのウインタードライブ。当日の路面状況は、圧雪を中心に、シャーベット路面がときおり顔を出すコンディションで、平均的な日本の雪道といった印象。アップダウンとワインディングがほどよくミックスされているため、短時間でもさまざまな状況での走行を体験できた。
印象的だったのがエクストレイル ハイブリッドの運転しやすさ。雪道ドライブのコツは、ゆっくりとした操作にあるが、アクセルやブレーキ、ステアリングのセッティングが自然に安全な運転をうながすような味付けになっているのだ。 とくにそれがわかりやすかったのがブレーキで、ペダルの踏み込む速さや量が加減しやすいため、底が厚いブーツであってもじんわりとしたやさしいブレーキも、スッと減速Gを立ち上げるようなブレーキも思いのまま。これは、コーナーやブレーキの際に自動でエンジンブレーキをかけることで、ブレーキ操作を手助けする「インテリジェント エンジンブレーキ」の効果もあるはずだ。
また、本来であれば重さや重心の高さを感じるはずのSUVでもスイスイと走れたのは、コーナー時に4輪それぞれのブレーキを操作することで、スムーズなコーナリングを可能にする「インテリジェントトレースコントロール」のおかげだろう。

リーフ
そして、リーフ。試乗のポイントとなったのは、滑りやすい路面でスムーズな発進、加速、減速がそれぞれ上手に行えるか。新型は冬場でも航続距離が十分確保されているのは過去の取材で確認済みだが、スノードライブは初挑戦ゆえに興味深い。
結論としては、あっけないほどに雪道を走りきった。上り坂で停車してからの発進も下りながらのコーナリングも不安なし。電気自動車はスポーツカー並みに発進加速が鋭いことでも知られているが、すべりやすい路面でも神経質にならずに走れることを確認。話題のワンペダルドライブも試したが、こちらも雪道であっても違和感がなかった。滑りやすい路面では回生ブレーキに加えてブレーキを併用することにより、4輪で制動力を発揮するという新型リーフならではの緻密な制御も安心感を後押しする。
安心して走れるという自信が氷上ドライブを楽しむ心の余裕に

ジューク
午後にはお待ちかねの氷上テストに参加。プログラムのねらいは、日産車それぞれに備わる制御技術によって、すべりやすい路面でも安心して走れることの確認にある。ここでは、先ほどの2台に加えて、ノートシリーズのノート eパワー、ジューク、スカイラインシリーズのスカイラインGT-Rを試すことができた。FF(前輪駆動)、FR(後輪駆動)、4WD(全輪駆動)とすべてのパターンが用意されており、駆動方式の違いによる挙動についても改めて体験できる配慮だ。
氷上でのテスト項目は、定常円旋回とスラローム、そして大小のコーナーをつなぎあわせたショートコース。
定常円旋回というのは、パイロンを中心に円を描いてまわることによりタイヤのグリップ限界を引き出すテスト方法で、限界付近での操縦安定性や限界を超えた際の挙動変化、そして電子制御によるケアも確認できる。
日産では、運転手の意思でVDCスイッチオフにした場合でも、車両の横滑りなどに応じて車両制御が介入し、姿勢を安定させるクルマづくりを行なっている。走りの楽しさと同時に、いかなるときにも安全性と安心感を提供するという考え方によるものだ。VDCスイッチをオフにするのは、悪路でのスタック状態から脱出するときなど限られた状況となる。

GT-R
ここでも安心感があったのはエクストレイル。ショートコースでも定常円でも、ドライバーが特別な操作を意識せずとも意図したどおりの走りをみせてくれた。また、同じく4WDであるジュークも好印象だった1台。走行状況に応じて前後輪トルクを調整するだけでなく、リヤタイヤの外輪側に大きなトルクを配分することで、すべりやすい路面状況でもコーナーで外側にふくらまないで走れる。 そして、FFモデルの健闘も印象的だった。前輪駆動は4WDに比べるとすべりやすい路面での発進は不利だというのが定説だが、リーフやノート eパワーの振る舞いは非常に自然で、普段から雪道を走らないようなドライバーでも安心して走れる高いレベルにあることが確認できた。
驚かされたのが、超ハイパフォーマンスモデルであるGT-Rが、氷上でも非常にコントローラブルだったこと。無理にリヤをブレイクさせようとしないかぎり、表面の雪がなくなってツルツルの氷がむき出しになっているようなところでも、たくみな電子制御で車体は安定したままだったのだ。しかもある程度リヤをすべらせるような動きも許容してくれるので、まさにクルマを操っているという実感が強い。こういう蛮行が試せるのも、クルマ側に信頼が寄せられるからであることはいうまでもない。
電子制御というと、クルマ好きのなかには拒否反応を示すひともいるが、最新のそれは、操る楽しさと安心感を上手にミックスさせていることが確認できた。それは、あらゆるドライバーに対してクルマを提供する自動車メーカーにとっては、正しい姿勢であることは間違いないだろう。最新のテクノロジーと最新スタッドレスの組み合わせは、冬ドライブの緊張を楽しさに変えてくれるのだ。