新車試乗レポート
更新日:2018.11.21 / 掲載日:2018.01.26

MAZDA CX-8北海道雪上ドライブ

MAZDA CX-8 XD Lパッケージ4WD ●全長×全幅×全高4900×1840×1730mm●車両重量1900kg●エンジン2.2L直4DOHCディーゼルターボ(190PS/45.9kg・m)

 発表から3か月を経て、昨年12月14日にようやく正式販売が始まったCX-8。MAZDAの国内最上位SUVとして大いに注目を集めているこのクルマの卓越した走りについては、以前お伝えした通りだが、今回は真冬の北海道をドライブする機会に恵まれた。滑りやすい路面で体感できた「人馬一体のクルマ作り」に焦点を当ててレポートする。

疲れにくいから楽しい。人馬一体を雪道で体感!

 筆者は今シーズン初の雪上試乗、と言うより雪に無縁の都内生活からいきなり雪上走行である。しかも例年になく積雪量も多い。大変と言うか、面倒と言うか、ともかく心理的なプレッシャーは相当なものだ。しかし、そこがこの試乗におけるマツダの狙いでもある。滑りやすいのだからゆっくり走ればいい、と言うものの一般道でも50km/hくらいで流れるのはざらであり、巡航速度は非降雪期より多少低い程度。しかし、ドライ路に比べれば加減速やコーナリングが大幅に制限される。信号やコーナー、駐車車両等々に加えて、新雪、圧雪、アイスバーンと路面コンディションも安定しない。ドライバーは走査範囲を最大にして細心の注意を払うことになる。
 で、CX‐8はどうだったかというと、これが存外楽なのである。ロングホイールベースとしなやかなフットワーク、GVC(Gベクタリングコントロール)が荒れた雪路でも落ち着いた走りをもたらしてくれたこともあるが、加減速制御のしやすさも大きな要素だ。グリップ力などの物理的条件は同じでも、都度都度のアクセル操作に神経質にならなくて済む。
 分かりやすい例が圧雪の坂道発進だ。動き出しのアクセル加減がけっこう神経質。踏みすぎれば滑るし、トラクション制御機能がなければ場合によってはホイールスピンしながら後ずさりである。動き出しの瞬間を探るようにアクセルを踏むのが一般的だが、反応の悪いエンジンだとそれもなかなか難しい。ところがCX‐8はそれほど神経質にならなくていい。動き出しの見当がつけやすく、思ったタイミングで発進できるのだ。走り出しても微妙な加減速制御を細かな補正なしで済ませられる。細く曲がりくねり、勾配が頻繁に変化するテストコースでも試してみたが、アクセルワークに対する加速やエンブレの掛かり方が実に適切。初めてのコース、初めてのCX‐8の雪上走行でも長年乗り続けた愛車のように扱えるのだ。 

今回は3名乗車でのドライブだったが、同乗者からの評価も大変良かった。ロングホイールベースによる高い安定感に加え、前席と後席での会話がしやすく、ドライブがより楽しくなる。レジャーユースは注目すべき点だ。

 この走りやすさの理由のひとつはマツダが最近研究している「躍度(ヤクド)」にある。躍度の細かな説明は別項を参照してもらいたいが、要するに操作と反応を人の感性に一致させて、運転しやすくするのが躍度研究の目的である。ドライバーは操作に対して無意識下で反応を予想する。アクセルを踏み込んだ時の初期トルクが小さい、あるいは反応が遅れれば無意識に踏み込み量を増やしたり、踏み込み速度を速めたりするものだ。最終的には踏み込み量の駆動トルクになるが、踏み込み量を増やしていれば予想外のトルクが遅れてやってくるわけだ。慣れたドライバーならそれを見越して適正トルクになるようにアクセルを緩めるが、ストレスは確実に蓄積していく。CX‐8にはそれがない! とは言わないまでも、自然体の範囲で操れるのが有り難い。
 反応は早いが立ち上がりは穏やか、そして遅れを感じさせないように目的値に達する。しかも、ゆるりとした加減速でも、急加速気味でも思ったように反応してくれる。ペダル操作からドライバーの意思を汲み取って先読みで制御しているかの如きなのだ。余談ながらフットブレーキの制動特性もエンジン側の制御と相性がよく、踏み増しや踏み戻しの微妙なコントロールがしやすい。GVCにしても加減速における躍度を旋回反応に取り入れたと考えられ、轍などでの方向性保持も穏やか操舵でOK。運転操作系全般がバランス良くまとまっていた。
 ただしGVCと同様に、最適な躍度を追求したからといって単純に速くなるわけではない。余計な操作や気苦労を減らしてくれるだけなのだ。つまり「運転が楽」が主目的。また、最新仕様ではあるがCX‐8に限定されるものでもない。無意識下の人とクルマの連携を深めるという点では文字通りの「人馬一体」思想であり、補正操作や気苦労を減らせればドライブの楽しみも一層深まるわけだ。

  • 初めて走る道だったが、かなりリラックスして運転できた。アクセルペダルの踏み込みに対する反応がちょうど良いだけでなく、ステアリングやブレーキの操作感とのバランスの良さもその要因だ。

MAZDAテストコースで体感!意のままの走りを実現する「躍度」の大切さ

  • アクセラ(4WD・AT)

  • ロードスター(FR・MT)

  • デミオ(FF・MT)

 マツダ車全般に共通するのが、不安を感じずにラクに綺麗な運転がしやすいこと。これは「人馬一体」の本質といえ、今回試乗したFFのデミオも4WDのアクセラも同様だ。4輪のグリップバランスでは4WDが有利であり、その点ではFFの方が力作とも言える。この2車に対してロードスターは過剰反応気味。FRらしさを誇張した結果でもあるが、走りをアレンジする意識を高めてくれる。楽チンとは言い難くても、雪中ではしゃげば一番楽しい。

そもそも「躍度」って何のこと?

 タイムラグなしで反応されては神経質。応答の遅れが大きければ修正舵などの余分な操作の頻度が増える。ドライバーが違和感も予測もなしで扱える最適な反応とは何か? という問題の解決策としてマツダが採り上げたのが「躍度」というわけ。躍度とは単位時間当たりの加速度増減、つまり加速度の変化率を示す。躍度の値が大きい場合は時間と共に加速度増加も大きくなる。つまり、後伸び感が強くなる。分かりやすく言えば一昔前の「どっかんターボ」を想像すればいいだろう。一方、反応が鋭すぎれば踏み込んだ瞬間だけ著しく躍度が大きくなり以後躍度0となる。どちらの特性も定常加速や巡航への移行操作が難しいが、躍度を上手に制御すれば無意識に綺麗な運転ができるわけだ。

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グーネットマガジン編集部

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1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
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また、最新情報としてトヨタなどのメーカー発表やBMWなどの海外メーカーのプレス発表を翻訳してお届けします。
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