新車試乗レポート
更新日:2019.05.23 / 掲載日:2017.09.29

【試乗レポート】ヴィッツGRは操る喜びを実感できるさわやかなスポーツカー

文と写真●ユニット・コンパス

 世界で戦うレーシングカーコンストラクターが直接市販車の開発に携わるということで話題となったトヨタの新スポーツカーブランド「GAZOO Racing」(以下GR)。2017年9月のローンチでは、9車種11モデルが一挙公開となったが、今回はそのなかでも第1弾として登場するヴィッツGRシリーズのインプレッションをお届けする。GRではスポーツカーブランドとして走りの世界観を統一していくという話もあり、ヴィッツの仕上がりから今後のブランドの方向性をも見極めていくことができるというわけだ。

レーシングチームが鍛え上げたヴィッツGR

ヴィッツGR

 GRでは製品を4つのカテゴリーにランク分けしている。頂点であり、台数限定販売される「GRMN」、中核を担う「GR」、カジュアルにスポーツテイストを楽しめる「GRスポーツ」、そして最後にアフターパーツの「GRパーツ」だ。

 レーシングカーづくりのプロ集団が手がけるスポーツカーではあるが、GRはサーキット向けのトンがったクルマではない。あくまでも公道、リアルワールドでドライバーがクルマを操る喜びを実感できるものだという。GRシリーズの開発を統括したGR開発統括部 ZR主幹 佐々木良典氏によれば、「GRが目指すのはドライバーと対話できるクルマ」であり、それを実現するためにモータースポーツを通じてクルマだけでなく、開発に携わるスタッフも鍛えていくと語る。事実、ヴィッツGR開発にあたっては、全日本ラリーにCVT仕様のヴィッツを投入し、そこで得た知見を盛り込んだという。

 ヴィッツGRはカタログモデルとして通年販売されるモデルではあるが、その仕立てはなかなかに本格的でマニアックだ。
 土台となる車体の剛性を引き上げるために、ロッカーフランジスポット溶接の打点追加、フロントサスペンションメンバー後端ブレース、センタートンネルブレース、リヤフロアブレースを採用し、ロアアームも専用品に交換。その上でさらに空力パーツとして専用フロントスポイラー、ロッカーフィン、リヤホイールハウス前スパッツを投入。こうして鍛え上げたボディに専用チューニングしたSACHS製ダンパーや専用ブレーキキャリパー&パッドといった足まわりで性能を引き上げた。操作系についても、専用の小径ステアリング(CVT車にはパドル付)やアルミペダル、スポーツシートといった目に見える部分だけでなく、電動パワーステアリングの再セッティング、CVT制御の改善、エンジンの高回転域を積極活用するSPORTモードの採用など多岐にわたる改良が加えられた。
 ポイントは、これらの採用やセッティングをレーシングチーム目線でまとめ上げたということにある。トヨタ社内屈指の腕利きテストドライバーが試走を繰り返し、高次元でバランスさせたとエンジニアは胸を張る。

 では、その仕上がりはどうだったのか。試乗コースはクローズドのショートサーキットで周回数もわずかではあったが、はっきりと確認できたのが操作に対するクルマの応答が正確であるということ。とくにステアリング操作に対する正確性が大幅に高まっている。
 エンジンはノーマル仕様と同等で、絶対的なパフォーマンスは変わらないにもかかわらず明らかにタイムが縮まっているのもシャシーのレベルアップがゆえ。単にハイグリップタイヤにものを言わせるという低次元な話ではなく、ねらったラインにしっかりとクルマを乗せられるし、エンジン本来のポテンシャルを十分に引き出せるのが気持ちいい。
 結果として、速さはもちろんのこと、自身の操作にクルマがしっかりとついてくるため、ヴィッツGRはいい意味で自分の運転技術が明らかになる。そういう意味でも、非常にスポーツできるクルマに仕上がっている。まるでさわやかなスポーツマンのようなクルマだった。
 付け加えると、CVTの出来のよさも特筆すべきポイントで、パドルシフトを操作することせずともDレンジのままでも十分に意に沿う動きを見せてくれた。この制御はノーマル仕様にもぜひフィードバックしてもらいたい。

限定販売されるヴィッツGRMNのプロトタイプにも試乗!

ヴィッツGRMNプロトタイプ

 限定モデルであるヴィッツGRMNについても試乗することができたが、これはもうはっきりとノーマルとはレベルが違う。GRMNではボディが3ドアとなることに加え、エンジンについても専用品を搭載。「世界トップレベルのパワーウエイトレシオを目指した」というだけあって、1.8Lエンジンにスーパーチャージャーの組み合わせはパワフルのひとこと。公表されている210馬力以上というパワーももちろんだが、アクセルの動きに瞬時に呼応するトルクの立ち上がりが秀逸。加速、速度の伸びに加えて、LSDを効かせながらタイトコーナーをグイグイと立ち上がっていく様はレーシングカーライクだ。その際にも強靭なボディとサスペンションがしっかりと力を路面に伝えてくれるのが心強い。販売は2018年春ということだが、過去の例から見ても売り切れは必至。WRCに参戦するヤリスWRCにもっとも近い市販車という意味でも、コレクターズアイテムとしての価値も高くなりそうだ。


トヨタ ヴィッツGR(6速MT)
全長×全幅×全高 3975×1695×1490mm
ホイールベース 2510mm
トレッド前/後 1465/1450mm
車両重量 1060kg
エンジン 直列4気筒DOHC
総排気量 1496cc
最高出力 109ps/6000rpm
最大トルク 13.9kgm/4800rpm
サスペンション前/後 ストラット/トーションビーム
ブレーキ前/後 Vディスク/ディスク
タイヤ前後 205/45R17

販売価格 230万3640円(ヴィッツGRのみ)

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グーネットマガジン編集部

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1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
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