新車試乗レポート
更新日:2026.07.27 / 掲載日:2026.07.27
【日産 キックス】どのグレードに乗っても納得できる! 新型キックスは日産の力作だ

文●山田弘樹 写真●ユニット・コンパス
日産のコンパクトSUVである「キックス」が、新世代ファミリーフェイス「Vモーショングリル」をまとってフルモデルチェンジ。そのFWDモデルと4WDモデルを、一般道と高速道路で試乗することができました。
新鮮で若々しいデザインが好印象

まず最初に試乗したのは、FWDモデルの「G」グレード。19インチタイヤを履いたトップグレードのモデルです。

走り出す前にまず外観を眺めて思うのは、そのコンパクトSUVらしからぬ、堂々たる佇まい。デザイナーいわく「アメリカンフットボールのヘルメット」をイメージしたというフロントマスクは、日産のフラグシップSUVである「パトロール」をも彷彿とさせる迫力です。またヘッドライトの目尻から縦方向に描かれる黒いグラフィックラインが、その存在感を強調します。

真後ろからの眺めも、どっしりと座りが効いています。
四隅ぎりぎりに配置された左右のリアコンビランプ。それを上下でつなぐライトガーニッシュとバンパー。口(くち)の字型に囲われたグラフィックは個性的かつ力強いラインを描いており、その中を彩るボディカラーとのコントラストは若々しくてとても新鮮です。

ボクシーな前後アピアランスに対して、サイドビューは流麗。ルーフラインがリアに向かうほど絞り込まれる、スポーティなプロポーションが描かれています。
個人的にはこの迫力の前後ビューに対しては、もっとAピラーからリアエンドにかけてをボックス形状にした方が、“プチ・パトロール”や“ミニ・パスファインダー”を気取れるのでは? と思いましたが、先代比で+75mm大きくなった全長を使って、デザイナーはそこに伸びやかさと機敏さを表現したのでしょう。
19インチでも快適な乗り心地に関心

そんな迫力満点のキックスは、走らせれば快適なコンパクトSUVに仕上がっていました。
パワーユニットは、第3世代となった「e-POWER」。エンジンは先代の1.2リッター直噴ユニットを1.4リッターへとロングストローク化し、なおかつe-POWER専用の発電特化型へと進化。そしてここにモーター/インバーター/発電機/減速機/増速機をコンパクトにまとめた「5-in-1 ユニット」を組み合わせ、FWDモデルで143PS/315Nmの出力を発揮します。
このエンジンの発電によって得られるモーターパワーは、FWDモデルが143PS/115Nmと必要にして十分なスペック。AWDモデルではさらにリアモーター(68PS/140Nm)の出力が加わって、スポーティな走りが味わえます。
100%モーター駆動となるe-POWERの出足は、まさにEVの加速感。アクセルの踏み始めから反応がよく、滑らかに速度を乗せて行きます。
「スタンダード」モードは回生ブレーキの効き方もほどよく調整されており、アクセルオフでも空走しすぎず、しかし上手にタイヤを転がしてくれます。

完全に発電機として稼働するエンジンは、その回転も低めでサウンドもフラット。路面が静かだったり、オーディオをオフにしているとその無機質なサウンドがやや気になる場面もありますが、ロードノイズが大きなときに積極的に稼働するなどして、全体的にはとても静かな仕上がりとなっています。
試乗車は19インチタイヤを装着していましたが、乗り心地は予想以上に上質。路面から強い入力が入る、ピストンスピードが速い領域では、ダンパーが減衰力を巧みに逃がして突き上げを抑えてくれます。

逆にピストンスピードが遅い領域では減衰力を素早く立ち上げて、重心が高いボディをしっかり支えてコーナリングします。
こうした走りの良さを支える土台となるのは、新世代の「CMF-B」プラットフォームです。そのボディの剛性感の高さがあるから、19インチタイヤを履かせ、かなり高めの減衰力を持たせても、振動や突き上げ感のない自然な乗り味が実現できています。トーションビーム式のリアサスで、これだけ振動や雑味を抑えているのは見事です。

ライントレース性の良さ、その機敏な身のこなしに対してもう少しだけ電動パワステのアシストを抑えて接地感を高めて欲しいところですが、全体としてはとてもスッキリしたハンドリングに仕上がっています。
動的質感の高さという視点からも「e-4ORCE」はオススメ

対して後半に乗り換えた「e-4ORCE」(4WD)は、もっちりしなやかな乗り味が好印象でした。
試乗車は「X」グレードで、その足下には17インチタイヤを装着。そのほどよいたわみとエアボリュームが、操舵初期から手の平に接地感を伝えてくれます。
4輪のモーター制御は直進安定性の高さもさることながら、カーブでの身のこなしがとても爽快。40%もトルクが向上した後輪モーター(50kW/140Nm)からの確かな蹴り出しが旋回性を高め、それをやはり13%トルクを向上したフロントモーターが、バランスよく引っ張ってくれます。左右輪のトルク制御も見事で、その機動力の高さからとても楽しいハンドリングになっています。つまり単に速さや安定性を求めるだけでなく、動的質感の高さという点でも「e-4ORCE」はお勧めです。
ちなみにそれぞれのカタログ燃費はFWDの「G」グレードが23.4km/Lで、4WDの「X」グレードが21.5km/L。試乗は都内のホテルをベースに街中から高速道路を一区間走り、夢の島「イーノの森」を折り返す約35kmのショートトリップでしたが、往路のFWDモデルが21.0km/L、復路の4WDモデルが19.9km/Lと、渋滞を挟みながらもかなり高い実用燃費をマークしました。

12.3インチモニターを連結させた横長のデュアルディスプレイはすっきりと見やすく、現代的なインテリジェンスを感じさせます。手の触れる部分をソフトパッドとセンスのいいテキスタイルでカバーし、見えない部分にハードプラを使う手法も、BセグメントのコンパクトSUVとしては非常に賢い仕上げです。
オススメグレードは「X」。駆動方式はお好みで

今回はFWDモデルでレザー、4WDモデルでファブリックのシートを試しましたが、むしろゼログラビティと謳うしなやかさを味わうなら、ファブリックがよいと筆者は感じました。深くエンボス加工された座面のグリップ感や、手入れのしやすそうな見た目はキックスのイメージにもばっちり。つまり17インチのXグレードを軸に、先進安全装備の充実か、駆動方式の充実か、はたまたその両方かで選べばよいと感じました。
新車価格帯:299万7000円〜424万8200円(キックス 全グレード)