新車試乗レポート
更新日:2026.04.29 / 掲載日:2026.04.29
楽しくて仕方がない!「マニュアルLOVER」のための911 T【石井昌道】

文●石井昌道 写真●澤田和久
人気が衰えるどころか、販売台数が右肩上がりのポルシェ911。生産台数が追いつかず、新車で手に入れるのが困難なぐらいだが、MTともなるとなおさらだ。
マイナーチェンジで追加された待望のMT仕様

昨年のマイナーチェンジで後期型となった911(タイプ992.2と呼ばれる)の最大の話題は、初のハイブリッドモデルである「911GTS」だったが、一方で多くのファンが歓喜したのが「911T」の登場だった。
希少とも言えるMTであり、現代の911としてはパフォーマンスが過剰すぎない。価格的にも比較的身近と言える。

しかも、PDKをベースとした7MTではなくスタンダードな6MTであることも注目された。前期型の「911GTS」に搭載されていた7MTは、登場初期に比べれば改善されてきたとはいえ、フィーリングが今一つだったのは否めない。世界的にMTの需要が減少し、ましてハイパフォーマンスモデル用ともなれば部品の調達や開発は困難なはずだが、ポルシェは熱心なMTファンのためにコストと手間をかけて用意してきたのだ。
「シンプル」、「軽量」が生み出す価値

「T」はツーリングを意味するとされているが、シンプルゆえ軽量という伝統もある。今回の「T」はベースグレードの「カレラ」と「カレラS」の中間という位置づけ。エンジンは「カレラ」と同等の394PSで、40kg以上軽い車両重量は1510kg。6MTはPDKに対して軽いことに加えて、ウインドーや遮音材などでも軽量化が図られている。
フラット6エンジンはアイドリング付近から有効なトルクが発生し、発進時のクラッチ操作に神経質なところは一切ない。アクセルを踏み込んでいけばフラットなトルク特性で7000rpmまでシャープに吹き上がっていき、いい意味でターボであることを意識させられない。NAエンジンへの郷愁を感じさせないほどの仕上がりと言える。
シフトフィールは抜群に気持ちいい

シフトフィールは抜群にいい。以前の7MTは、各ギアのエンゲージがやや曖昧で探るような操作をしていた上に、ストロークも長めだったが、6MTは短いストロークで節度感のあるフィーリングとともに確実にシフトチェンジが決まる。シフトチェンジそのものが喜びとなるのだ。
「カレラ」に対して10mmローダウンされたPASMサスペンション(電子制御可変ダンパー)によってコーナリング性能が強化されている。
それにしても俊敏かつ安定した挙動に驚いたのだが、リアアクスルステアリングも標準装備だった。RRの911はノーズが軽く、タイトコーナーなどではブレーキングなどで意識的にフロントの荷重を増やしてあげないと思い通りに曲がっていかないこともあるが、そこでも素直にノーズがインに向いていく。
絶対的な速度よりも運転の楽しみを重視したグレード

さらに、ステアリングギアレシオもクイックになので想像を超えるコーナリング性能なのだ。6MTを駆使して有効なパワーを引き出しながら、コーナーの連続を攻めていくことが楽しくて仕方がない。
0-100km/h加速は、同じエンジンを搭載して40kg以上重い「カレラ(PDK)」が4.1秒であるのに対して4.5秒と遅れをとる。パフォーマンスにおいてはPDKの優位性は確かだが、それよりもドライビング・プレジャーを重視したのが「911T」。純粋に走りを楽しみたいドライバーへ向けたモデルなのだ。