新車試乗レポート
更新日:2018.11.07 / 掲載日:2016.02.18
スマート フォーツー 試乗レポート

都市生活者に向けたミニマムな交通手段としてメルセデスが送り出すのがスマート。3代目となる新型はボディを大胆にサイズアップ、その恩恵は快適性だけでなく走りにも及んでいる。
もっとも小さなメルセデスが大幅にレベルアップして登場
ダイムラーが送り出したマイクロコンパクトカーは、抜群の扱いやすさや駐車の容易性、そして環境へのやさしさも高く評価されて、欧州を中心とする先進国で市場に定着。累計販売150万台以上の実績をベースとして、すべてを一新した3代目スマートがいよいよ投入された。
その見どころは、新世代「シティコンパクト」として、根本から見直したコンセプトと車種体系。具体的には、ユーザー層や使用パターンを大幅に拡大する4ドア・4人乗りの「forfour」を仲間に加えた。
さっそく「forfourは前にもあったじゃない」というツッコミが入りそうだが、かつての4人乗りスマートは旧パートナーの三菱との協業から生まれたオランダ生産のモデル。新型は、2人乗りのfortwoをストレッチした設計なのだから、成り立ちがまるで違うのだ。
また、ルノーとのパートナーシップも大きな話題のひとつ。輸入車通には説明は不要だろうが、新しいスマートの開発は、新型トゥインゴの開発とリンクするカタチで行われた。
とはいえ、駆動方式はRRを踏襲。キャビンを強固に守る「トリディオンセーフティセル」を外観に活かし、印象的なツートーンカラーで仕上げたルックスも、スマートの伝統をきちんと継承するものだ。fortwoを見て、当初はボンネットが高くなり妙に存在感が増したノーズ部に違和感を覚えたが、しばらく接しているうちに新たな個性として好意的に捉えられるようになっていた。

ポップでおしゃれなインテリアを含めて、スマート以外の何者でもない存在感と魅力を振りまいている。先代や、先々代のファンにも、広く受け入れられることと思う。
では、走りはどう変わったのか?
まず驚いたのは、小まわりがさらに得意になった点。詳細は囲み記事に記しておく。で、次に笑みが浮かんだのは、スムーズになった発進と変速。シングルクラッチ式のAMT(ソフタッチ)を採用する先代は、発進のギクシャクとシフトアップ時のつんのめり感を弱点としていた。だが、新型の6速DCT(ツイナミック)を搭載する新型は、駆動力の途切れがなく、十分に滑らかな変速およびクラッチ操作を実現している。
これまた新世代となった自然吸気1Lユニットの性能は71馬力/9.3kg mと平均的だが、940kgのスモールカーには十分なもの。スポーツモードを選べば、エンジンはより活気づき、変速のキレも増すから、元気な走りを楽しむこともできる。また、回転フィールが上質になり、静粛性が高まったのも見逃せない点で、走り味はグッと上質に変身した。
そして操安性。要点はトレッド拡大にある。2代目もワイド化の効果は大だったが、新型のレベルアップ度はそれに勝る。極端なショートホイールベースのため、まだヒョコヒョコした上下動が残るが、高速走行の安定性はワンランク以上高まり、ハンドリングも峠道でスポーティな走りを楽しめるレベルに向上した。
あとは、高速域で中立を人工的に締める電動パワステと、荒れた路面で接地感がやや荒っぽくなるリヤサスの改良が進めば、走りの能力と質感は「スモール」の領域を超えたものとなる。全長約2.75mの極小サイズで、「十分に快適」と表現できる乗り心地を含めて、ハイバランスな走りを実現した手腕が光っている。
じつは、新型の主役はforfourで、fortwoは限定車(2つのボディ色をあわせて440台)としての投入。でも、これほどの仕上がりなら・・・ラブコールに応えて再登場する日も近いと想像している。
文●森野恭行 写真●GooWORLD
問い合わせ スマート・コール TEL:0120-656-256
Detail Check

全幅は105mm、トレッドは前が85mm、後ろが45mmも拡大。タイヤ大径化とあわせて、全体に土台をしっかりとさせている。
コックピット
コックピット
シンプルな1眼式メーターを踏襲しつつ、おしゃれ度や質感を高めたのが見どころ。ダッシュボードはメッシュファブリック張りで、ボディ色とコーディネートされている。
インテリア
インテリア
車室は見た目からの想像よりも広く、快適。大柄な男性でも快適に過ごせる。シートはヘッドレスト一体型。ブルー/ホワイトのボディ色の場合はブラック内装となる。
エンジン
エンジン
リヤエンジンのため、ボンネットは冷却液やブレーキ液の点検を行うためのリッドとして機能。バッテリーもここに積む。
ラゲッジスペース
ラゲッジスペース
テールゲートは上下分割タイプ。通常は上のハッチの開閉でこと足りるはずだ。荷室容量は260Lと意外なほど大きい。
主要諸元:スマート フォーツー エディション1
全長×全幅×全高 | 2755×1665×1545mm |
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ホイールベース | 1875mm |
トレッド前/後 | 1470/1430mm |
車両重量 | 940kg |
エンジン | 直3DOHC |
総排気量 | 998cc |
最高出力 | 71ps/6000rpm |
最大トルク | 9.3kg m/2850rpm |
サスペンション前/後 | ストラット/ド・ディオン |
ブレーキ前/後 | ディスク/ドラム |
タイヤサイズ前・後 | 165/65R15・185/60R15 |
全国メーカー希望小売価格(発売 2015年8月)
フォーツー エディション1(ラバオレンジ×ブラック) | 199万円 |
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フォーツー エディション1(ミッドナイトブルー×ホワイト) | 204万円 |
Body Color
■■ラバオレンジ×ブラック ■□ミッドナイトブルー×ホワイト |
先代モデルをさらに上まわる小まわり性能を実現
取りまわし性のよさはスマートの最大のウリだが、なんと新型は3.3mの最小回転半径を実現!「狭い道もスイスイ」と評判の先代が4.1mだったのだから、進化は驚くほどだ。全幅の拡大を活かして前輪切れ角を大きくするだけでなく、外輪の切れ角をより大きくする工夫も加えている。Uターンもお手の物だ。