新車試乗レポート
更新日:2025.05.19 / 掲載日:2025.05.19
【ボルボ EX30】ブレイクの可能性は大いにある【石井昌道】

文●石井昌道 写真●澤田和久
2023年に登場したボルボEX30。BEVシフトへ積極的な姿勢をみせるボルボは2022年にXC40リチャージからBEVの展開を始めたが、EX30はボルボ初のBEV専用プラットフォームを採用するとともに、コクピットのメーターを廃止するなどミニマルを極めたデザインやコンセプトなども特徴。新しい時代へ向けて舵を切ったマイルストーン的なモデルとも言えるだろう。
とにかくシンプル! 操作系はちょっと慣れが必要

ボディサイズは全長4235×全幅1835×全高1550mmとコンパクト。日本の都市部でも使いやすいうえに、日本のほとんどの立体駐車場に対応させるため全高を1550mmに収めたというのが嬉しい。エクステリアもミニマルで、デザイン要素を抑えたシンプルな印象であり、それゆえフォルムの美しさが強調される。コンパクトなボディながらタイヤがしっかりと大地に踏ん張っている雰囲気が出ているから存在感は高いのだ。

コクピットに収まってみると前述のように眼前のメーターパネルがないほか、物理的スイッチもごくわずか。パワーウインドーのスイッチはドアではなくセンターに配される。さらにオーディオのスピーカーはダッシュボード上へ。これらによってドアへの配線はなくなり、ハーネスを減らしているのだという。
多くの操作はセンターのディスプレイで行うことになるが、多少の慣れは必要。とくにワンペダルドライブのオン・オフをいちいちディスプレイで操作するのは煩雑なのだが、ショートカットの設定をしておけばステアリングの物理的スイッチで操作することが可能になる。




おしゃれなイメージとは裏腹に走りはスポーティ

先進的で洒落た雰囲気のEX30だが、走りは想像以上に力強くて頼もしい。現在日本に用意されるのはシングルモーターのみで、リアに搭載されるモーターは最高出力272馬力、最大トルク343Nm。BEVとしては比較的に車両重量が軽いこともあって、パワースペック以上に俊敏な加速をみせる。
アクセル操作に対するレスポンスも上々で、活発で元気のいい走りだ。ワンペダルドライブをオンにしておけば、アクセルペダルだけで加速・減速をコントロールできて最終的には停止まで行える。BEVならではの特権で操作もスマートだ。ただし、車庫入れなどで前進・後進を細かく繰り返すときなどは煩わしく感じられるので、そんなときはワンペダルドライブをオフにしたほうがいい。
サスペンションはやや引き締まっている。硬くて不快ということはないのだが、洒落た雰囲気から想像するよりもスポーティなのだ。ワインディングロードでペースをあげていってもちょっとしたスポーツカーのように快活で気持ちいい。BEVがもつ良好な重量配分がいかされて軽快な動きで向きを変え、ノーズが脱出方向へ向くと同時にアクセルオンするとRWDらしく後ろから蹴り上げられるように加速していくのが快感なのだ。
ツインモーターや新型バッテリー搭載車が登場予定

しばらくの間、日本ではワンモデル展開だったEX30だが2025年にはいよいよラインアップが拡充される予定。
前後にモーターをもつツインモーターはシステム最高出力428馬力、最大トルク543Nmと強力。シングルモーターでも十二分な加速を見せているのだから、走りは強烈だろう。もうひとつのバリエーションがリン酸鉄リチウムイオンバッテリー搭載車だ。
現在販売されているのは一般的な三元系のNMCリチウムイオンバッテリーだが、それよりもリーズナブルな価格になる。三元系に比べるとリン酸鉄は、安価だがエネルギー密度が低いゆえBEVには不向きと言われてきたが、熱に対する許容量が広くて安全性が高い。
また、冷却系を三元系ほど大げさにする必要がないので、バッテリーパックトータルでみればエネルギー密度での不利はさほどでもない。それらがメリットとなり、BYDなど中国勢だけではなく、欧州車や日本車でも増えることになりそうなのだ。コンパクトで日本向きでもあるEX30が、さらに身近な価格になればブレークする可能性も大いにあるだろう。