新車試乗レポート
更新日:2024.11.25 / 掲載日:2024.11.25
【MINI エースマン】新しさがあって、実物は断然いい【九島辰也】
文●九島辰也 写真●MINI
MINIの新しいモデル“エースマン”はBEV(電気自動車)専用でつくられた。つまり、このボディに内燃機関を積んだ仲間は追加されない。
エースマンの正体は5ドアを持つ電気自動車
ベースになったプラットフォームは3ドアハッチバックのエレクトリック車で、クーパーEやクーパーSEと共有する。それにリアドアを付けるため前後にストレッチしたのがエースマンと考えていいだろう。
よって、5ドアハッチバックにはBEVはラインナップされない。お分かりのようにエースマンとカニバってしまうからだ。MINI開発陣は3ドアハッチバックにBEVを設定しておきながら5ドアハッチバックにはそれを置かずに、エースマンを登場させた。
これにはマーケティング上の戦略があると考えられる。
BEV専用車をMINIファミリーに加えることで、新しさを強調したかったからだ。確かにその方がMINIらしさは伝わる。
これまでもペースマンを筆頭に、MINIクーペやMINIロードスターといったモデルの登場で市場を驚かせてきたブランドだ。その意味でこういった突然変異的モデルはファンをざわつかせるだけの魅力がある。
では、エースマンの詳細だが、注目ポイントはサイズにあると思う。全長4080×全幅1755×全高1515mmは実に扱いやすく、日常使いをストレスなくこなせる。それでいてキャビンは広いだけでなく、ハンドリングは軽快でキビキビした走りを楽しめる。言うなれば等身大のサイズなのだ。
そのサイズに収まるデザインもまたグッド。全体的なフォルムはシュッとしていてスポーティでかっこいい。床下にバッテリーを敷き詰めるためボディを厚くしたクロスオーバー車になってはいるが、ボディ下部を縁取るウレタンバンパーやフェンダーが装着されることで、動的要素が色濃くなる。写真だとわかりづらいがそんな感じ。実物の方が断然いいので、気になる方はディーラーで実車を拝むことをお勧めする。ヘッドライトもそう。ハッチバック系の丸型とは異なる個性が強調される。それでいてカントリーマンとも違うのがミソだ。
センスよくまとめられたインテリア
インテリアはセンスよくシンプルにまとめられている。液晶のセンターメーターと少しの物理的スイッチのみで構成される。
センターのモニターでは新型MINIファミリーの醍醐味とも言える“エクスペリエンス”を楽しむことができる。
モニターのビジュアルデザイン、演出されたモーター音、アンビエントライトなどが雰囲気作りをしてくれる。走行中のサウンドの違いを聴き分けるのも悪くない。個人的には“タイムレス”が一番クルマっぽくて好きだ。
運転席に座るとわかるが、ダッシュボードが低いのもBEVの特徴だろう。ボンネットを低く設定できるため目の前に広い空間が広がり、視野が広がった気がする。
実は3ドアハッチバックのBEVでも同じような体験ができる。同モデルの内燃機関車と明らかに高さが違うのだ。また、エースマンはボンネット左右が若干膨らんでいるのも好み。ボンネットの動きが視覚的に感じられる。言うなればクラシックMINIのようだ。
「SE」には2ランク上のパワー感がある
グレードは2つで、エースマンEとエースマンSEとなる。違いはパワーと装備で、前者が最高出力135kW、後者が最高出力160kWを発揮する。
一充電あたりの航続距離はそれぞれ310km、406kmだ。でもってパワーの違いは少しでも走れば感じられる。
エースマンSEはやはり力強く、踏めば踏んだだけもりもりとトルクが発生してクルマを前へ押し出す。2つ上くらいの車格のパワーだ。
それに対しエースマンEはもっと抑えられる。というか、これで十分というのが個人的見解。ガソリン車から乗り換えるのであれば、こちらの方が自然な加速に感じられるだろう。
問題は乗り心地で、MINIらしさを演出してかしっとりしたところはなく、細かいピッチングが感じられた。特に試乗車はそれぞれ標準サイズより1インチ大きなタイヤを履いていたからだろう。標準ではエースマンEは17インチ、エースマンSEは18インチとなる。もちろん、そこがMINIらしさであり、それを求めるのであれば問題なし。が、リアシートに他人を乗せる機会の多い方は要検討だ。
MINIらしい個性を備え、使い勝手も優秀
ということで、新世代MINIの象徴として現れたエースマンが今熱い。充電環境に不都合のない方はショッピングリストに入れてもいいのではないだろうか。