新車試乗レポート
更新日:2024.11.18 / 掲載日:2024.11.18
この走り、BMWファンに試してもらいたい【BMW 1シリーズ】【石井昌道】

文●石井昌道 写真●BMW
2004年に初代が発売された1シリーズは、BMWのラインアップのなかでもっともコンパクトなCセグメントで新たなエントリーモデルとして登場した。
当初は3シリーズのプラットフォームを活用したFRだったが、2019年登場の3代目からはFFとなった。熱心なBMWファンからはコンパクトなFRが消滅したことを嘆く声も聞かれたが人気は上昇を続け、この20年の累計販売台数は300万台を突破するというBMWの大黒柱の一つにまで成長している。
走りのメカニズムを磨き上げた

4代目となる新型はプラットフォームはキャリーオーバーながら、シャシーに大幅に手を入れ、48V電源のMHVE(マイルドハイブリッド)を取り入れたパワートレーンで走りの進化を図るとともに、最新のOS9の採用などでデジタライズを推し進めた。
フロントアクスルではまずキャスタートレールが20%増加。直進安定性の向上がおもな目的となるキャスタートレール増加だが、操舵時にキャンバーがネガティブ方向へいってコーナリング性能を強化する効果もある。また、ステアリングフィールの改善も目的とされる。コンポーネントは全面的に新開発され、剛性向上や取り付け剛性の向上、軽量化などが図られている。

リアアクスルはこのクラスでは贅沢な3リンク式(マルチリンク)で、基本構造は従来同様ながら、こちらも各部の剛性が図られたことで横方向の加速度が高い場合でも正確なホイールコントロールが可能となっている。スタビライザーは高プリロードのマウントが採用され、アンチロール効果を高めると同時に、ステアリング操作の精度や乗り心地も向上。ダンパーは周波数感応型のダンパーを新採用したアダプティブMサスペンションは120MスポーツとM135 xDriveに標準装備される。

ちなみにこの世代からガソリン・エンジン搭載車の車名に用いられてきた「i」がなくなる。1シリーズのガソリン1.5L直列3気筒ターボ+MHEVは120、ガソリン2.0L直列4気筒ターボはM135 xDrive。ディーゼルの「d」、PHEV(プラグインハイブリッド)の「e」は残されることになった。



マイルドハイブリッド採用の効果は大きい

最初にステアリングを握ったのはもっともシンプルな「120」。
走り始めてすぐに感じたのはステアリングフィールの変化だ。手応えが増していて、ビシッと真っ直ぐ走る感覚が強い。さらに、コーナーへのターンインでの俊敏性と正確さ、立ち上がりでアクセルを踏み込んだときのトルクステアの少なさなどが感じ取れた。
あいにくの雨のなかだったが、滑りやすい路面をFFで走ってもアンダーステアが極めて低くて楽しさが大いに増していた。アクセルを踏み込むと時折ホイールスピンが起こりそうになって、それをDSC(ダイナミック・スタビリティ・コントロール)が制御で抑え込むのだが、反応が極めて素早いのでフィーリングは自然。従来型から行っていることだが、DSCのECUを介さず、ホイールスピンをエンジンのECUが直接制御するので、反応速度を大幅に短縮できているからだ。
1.5L直列3気筒ターボはエンジン単体で156馬力を発生し、新たに採用されたベルトドライブ式のスタータージェネレーターのMHEVと合わせたシステムトータルでは170馬力を発生。
最高出力が高まったことよりも、エンジンの苦手な低回転域をモーターがアシストすることでドライバビリティが高まっているのがもっとも大きなメリットだ。実際よりも排気量が大きくなったかのように感じる。

「M135 xDrive」はMHEVではない純エンジン車だが2.0L直列4気筒ターボで300馬力とパワフル。
吹き上がりの鋭さ、スムーズな回転上昇感ともにさすが BMWといったところで直列6気筒に近い官能性がある。4WDのxDriveだから安定感が抜群なうえに、フロントタイヤの負担が減るのでウエットのワインディングロードでもアンダーステアを感じることはまずない。ひたすら正確に、ドライバーが思い描いたラインをトレースできるのだ。
BMWファンにも推薦できるスポーティなドライビングフィール

どちらのモデルでも走りの進化は感じられるが、なかでも直進性の良さとステアリングフィールの明確さが際立っていた。これまでもFFなのにスポーティでドライビングが楽しいという定評のあった1シリーズだが、フィーリングはBMWのFRにますます近づいた。BMWファンにも一度乗って確かめてみて欲しいものだ。