新車試乗レポート
更新日:2024.11.10 / 掲載日:2024.11.09

売れ行き好調のフロンクス、走りはどうか?【九島辰也】

文●九島辰也 写真●ユニット・コンパス

 7月にそのプロトタイプのステアリングを握ったスズキ・フロンクス。10月末になってようやく市販車をテストドライブすることができました。プロトタイプはクローズドエリアでの走行でしたが、かなり気持ちよく走ったので、いい印象を残しています。なので、今回は高い期待値を持って臨みました。なんたってスイフトスポーツを有するメーカーですからね。走りのクオリティは高いはずです。

スズキ フロンクス

 そのフロンクスはインドからの逆輸入車のようなカタチになります。ベースになったのは現地生産のバレーノという小型ハッチバック。現行型は2022年にリリースされた日本未輸入モデルです。バレーノのシャシーはフロントにストラット、リアにトーションビームを採用しますが、その車高を上げてSUVに仕立てたのがこのフロンクスです。つまり、コンパクトサイズの背の高いクルマです。

 それにしても昨今は国産メーカーの逆輸入車がじわじわと増えています。ホンダWR-Vはインドから、三菱トライトンはタイから輸入するカタチで日本で発売されます。東南アジア発信のグローバルカーってところでしょう。何やら新たなトレンドの気配を感じます。

 もちろん、これまでもこうしたパターンはいくつかありました。1990年代後半アメリカから持ってきたホンダ・インスパイアは左ハンドルでしたし、三菱マグナはオーストラリアから80年代後半にやってきました。どちらもどこかバタくさいところが魅力で、他人と違うクルマに乗りたい人にウケました。FJクルーザーはこれらとはちょっと違い、はじめは北米専用車だったのを右ハンドルに変えて日本デビューしました。いずれも個性派揃いです。

 そんな海外生産のフロンクスですが、日本仕様はちゃんと日本向けに仕立てています。サスペンションのセッティングがそうで、日本の道路に合わせました。それと静粛性も高めたとか。商品説明のプレゼンテーションでは、「後席との会話ができます」と解説していました。実際はそれほど静かではなかったですけどね。風切り音は抑えましたが、エンジン音やロードノイズはそれなり。きっと海外の基準値が低いのでそれを高めたといったところでしょう。そこはあまりアピールしない方がいいかも。

スズキ フロンクス

 ただ、乗り心地はすごくいい。路面状況に関わらず、細かいピッチングはうまく消されていました。要因は16インチの肉厚タイヤ。今どきはどのメーカーも大きなホイールを選択しますが、スズキはそこをグッと堪えました。チーフエンジニアにその英断を賞賛すると、社内での戦いだったと話してくれました。交戦の図式は「デザイナー+営業部門」チーム VS 「開発+実験部」チーム。チーフエンジニアさん、よくわかります。ご苦労様でした。16インチで正解です。

 エンジンは1.5リッターDOHC+48Vバッテリーのマイルドハイブリッド。なので、排気量を超えた加速を体感できます。トランスミッションは6ATのトルコンなので、スムーズな走り出しが気持ちいいです。

スズキ フロンクス

 試乗車は最初に2WD、次に4WDを走らせました。聞くところによると、4WDは日本向けに新しく開発したそうです。国内では雪国はもちろんのこと、四駆のニーズは高いとか。でも、年に1、2回しか積雪のない東京に住んでいたらそれは必要ないでしょう。雪山レジャーを楽しむなら別ですが、2WDで十分走ります。スイスイ走る楽しさは四駆よりこちらですね。

スズキ フロンクス

 といったフロンクスですが、最大のウリは価格かもしれません。2WDで254万1000円、4WDで273万9000円です。昨今クルマの価格はどんどん上がっていますから、このくらいの値段を見るとホッとします。しかも二駆と四駆で約20万円しか差がない。専用に開発したのにすごいですよね。スズキの本領発揮といったところでしょう。そればかりではありません。コストカットの恩恵はクルマの軽量化にもつながっています。2WD車は1トン+αしかありません。どおりで走りが軽快なわけだ。さすがです。スイフトスポーツを生んだスズキのクルマつくりは侮れませんね。

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九島辰也(くしま たつや)

ライタープロフィール

九島辰也(くしま たつや)

外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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