新車試乗レポート
更新日:2024.10.28 / 掲載日:2024.10.26
大型SUVセグメントに挑む注目の日本勢【CX-80】【九島辰也】

文●九島辰也 写真●マツダ、メルセデス・ベンツ、トヨタ
メルセデスから新しいモデルが発表されました。Gクラス、通称ゲレンデヴァーゲンの電気自動車です。名前はG580 with EQ Technology Edition 1。Edition 1は発売を記念した特別装備車なので、名前が長くなるのはわかりますが、それにしてもちょっと長め。フツーに考えればBEVを意味するサブブランドのEQを使ってEQGになるところですが、今回はあえてそうしなかったようです。

目玉はGターンというその場で回転するモード。前後に切り返すことなくその場ターンができます。きっと本気でオフロード走行する時にはかなり便利でしょう。「この先は道幅がなくて行けない!」と判断した時、すぐに向きを変えられますから。クルマ一台分の道幅で切り返すのは至難の業です。
そんなことができるのは四つのタイヤにそれぞれモーターがついているから。それらを独立して制御できます。そういえば、90年代後半電気自動車はいずれインホイールモーターになる!とGMが豪語していましたが、極めるとそんな感じになるのかもしれません。
それにしても大きなSUVは元気です。ディフェンダーやジープ・ラングラーもそうですし、ポルシェ・カイエンもまだまだ高い人気を保持しています。その上のクラスもそう。ベントレー・ベンテイガやレンジローバー、マイバッハGLSは港区界隈で多く目にします。このクラスは輸入車の独壇場ですね。

ただ、日本車もがんばってはいます。ランクル250はそのひとつでしょう。トヨタブランドなので価格帯は少し下がりますが、存在感はあります。クラシックなのにモダンでカッコイイ。ただ、あいかわらず生産が追いついていないので、まだまだ街で見かける機会は少ない。ランクル300もランクル70もそうですが、その辺は早くクリアにしてもらいたい課題です。そうしないと、中古車までずっと高値維持ですから。悲しいかないつまで待っても手に入りません。

そんな折に、また異なるベクトルから大きめサイズのSUVが登場しました。マツダCX-80です。このクルマは三列シート装着車であったSUV、CX-8の後継者になります。新たに構成されるラージ商品群のひとつで、先にリリースされているCX-60と同じプラットフォームを採用します。つまり、そのまま前後にストレッチし、ボディを長くして3列目のシートを装着しました。シートレイアウトは前から2/2/2と2/3/2。前者は2列目をキャプテンシートにしたVIP仕様で、ミニバンに飽きた方はこんな選択肢もあり!って感じです。
ユニークなのは新型はCX-60とほとんどデザインが変わらないこと。フロントマスクもそうですし、スタイリングもそうです。センターピラーまでの前方を共有しているのだからそうなるでしょう。横から見ると、リアドアの開口位置とリアホイールハウスの位置関係で区別します。それとグリル左側に3つのアクセントを付けているのもそう。ちょっとした遊び心のような工夫です。
パワーソースは3種類で、2.5リッター直4ガソリン+モーターのプラグインハイブリッド、3.3リッター直6ディーゼル+モーターの48Vマイルドハイブリッド、それと3.3リッター直6ディーゼルという内燃機関のみがあります。
今回の試乗では2種類のモーターを積んだモデルを試乗しました。その結論からすると、プラグインハイブリッドの走りはCX-60の延長線上に改良したもので、安定感のある走りを見せました。ロングホイールベースは直進性が高く、長旅に疲れないような仕上がりです。CX-60では違和感のあったハンドリングというか挙動はしっかり煮詰まっていて、自然な走りができていました。3列シートの国産SUVをお探しの方は一度チェックするとよさそうですね。

でもってディーゼルエンジン+モーターは、それとは違う運動性能の高さを感じさせました。言うなればマツダっぽい走り。ステアリング操作は軽快で、ピタッと安定します。パワステのセッティングも別ですね。高級感よりスポーティさが前へ出ています。なので足捌きは軽快。連続するコーナーでフットワークの軽さを感じました。歴代マツダを乗ってきた方はきっとこちらの方がしっくりくるでしょう。クルマから降りてきたとの笑顔が浮かびます。
こうした違いは車両重量やトルクなどパワーソースで現れます。そしてそれに合わせ、操作系や足回りのセッティングを整えるのです。そう考えると、モーターのない直6ディーゼルエンジン車にも乗ってみたくなりました。しかもRWDの2駆。まぁ、その辺を選ぶのはへそ曲がりでしょうがね。とはいえ、昔からその傾向は強いのでご勘弁ください。