新車試乗レポート
更新日:2024.09.20 / 掲載日:2024.09.20

ランクル250・これぞ最強! これぞ万能!〜全方向試乗レポート〜

今年4月の発売直後から、絶大な人気を集めるランドクルーザー250。いま日本で入手しにくいモデルのひとつだが、オンロードでの実力を確かめる機会がいよいよ訪れた。最新ラダーフレーム車ゆえにオフロードが得意なのは分かっているが、アスファルト路がメインとなるオンロードでは、どのような走りを楽しませてくれるのだろうか?

●文:まるも亜希子●写真:奥隅圭之、澤田和久、月刊自家用車編集部

オンロードもすごいぞ! これぞ日本が誇る最強万能モデルだ!

注目NEWモデル魅力大研究! TOYOTA新型LAND CRUISER  250全方向試乗リポート

TOYOTA新型ランドクルーザー250

価格:520万〜785万円 登場年月:2024年4月

問い合わせ:トヨタ自動車お客様相談センター ☎0800-700-7700

リポーターまるも亜希子

自動車編集者を経て、家族の視点からのクルマ選びや、リアルなクルマの魅力などを提案するカーライフ・ジャーナリスト。耐久レースやラリーなどのモータースポーツ経験も豊富だ。

新たな時代を切り拓く新世代ランドクルーザー

951年に誕生して以来、「どこへでも行き、生きて帰ってこられるクルマ」を開発思想に掲げ、今では世界約170の国と地域で多くの人々の命と暮らしを支えているランドクルーザー。

自動車として初めて富士山六号目への登山に成功したり、岡崎市にある階段をジグザグに登ってみせるなど、道なき道を切り拓く姿に魅了される人たちも多い。

初代となったトヨタBJ型には、米軍からの厳しい要求に耐えうるラダーフレーム、前後リーフスプリング式リジッドアクスル、ローレンジなしのパートタイム4WDという軽量四輪駆動車のメカニズムが与えられたが、進化していく過程で3つの系列ができていく。

1つはBJ型の血統を継ぐヘビーデューティ系で、20系、40系、70系と受け継がれる。2つめはステーションワゴン系で、1967年のFJ55型をスタートに、60系、80系、100系、200系と続く。3つめがいちばん新しいライトデューティ系で、1984年に誕生し、のちにプラドというサブネームがつく70系、90系、120系、150系だ。

ただし、21世紀に入ると時代の要求に応えようと、やや高級・豪華指向へとシフトしていた感が否めず、とくに日常的にオフロードを走ることの少ない日本では、その本来の実力を知らずに「高級車」と認識している人も多くなっていた。そんな状況に危機感を抱いた開発陣は、「もう一度ランクルの原点に立ち返り、DNAを継承していかなければならない」と一念発起。ランドクルーザーの中でも世界中で最も多く普及しているプラドを刷新し、ランドクルーザーの中核モデルと位置付けたのが、今回新たに誕生した「250」シリーズだ。

これにより、ランドクルーザーの3系列はそれぞれ新たな役割と使命が与えられることとなった。まず、2021年8月に登場した「300」シリーズはランドクルーザーの「象徴」。常に最新技術を投入し、本格クロカンから高級志向まで幅広いニーズに応え、どんな道でも運転しやすく疲れにくいクルマとしている。次に「70」シリーズは、業務用途や過酷な環境下での使用を主体とし、どんなに過酷な道でも壊れずに帰ってこられるクルマ。そしてもう1つがこの「250」シリーズで、「300」と「70」の中間に位置し、悪路走破性をベースに扱いやすさ、快適性を備えてどんな道でも誰でも運転しやすく楽しいクルマに仕立てられている。従来はこの役割をプラド(150系)が担っていたが、250シリーズはプラドの後継という形を取らず、名称をランドクルーザーに統一してランクル本来の姿に戻すこととなった。

●主要諸元(ZX) 

●全長×全幅×全高(mm):4925×1980×1935 ●ホイールベース(mm):2850 ●車両重量(kg):2410 ●パワーユニット:2754cc直4ディーゼルターボ(204PS/51.0kg・m)  ●WLTCモード総合燃費:11.0km/ℓ ●ブレーキ:ベンチレーテッドディスク(F)ベンチレーテッドディスク(R) ●サスペンション:ダブルウィッシュボーン式(F)トレーリングリンク式(R) ●タイヤ:265/60R20 ●車両価格:735万円

上の300にも負けない本格メカニズムを採用

そんな250はどのようなクルマに仕上がっているのか。まずその骨格には、300シリーズと同様にラダーフレーム構造のGA-Fプラットフォームが与えられた。ボディサイズもプラドに比べてひと回り大きくなり、全長4925mm、全幅1980mm(一部グレードは1940mm)と、300に近いサイズとなっている。ただ、フレーム成形には世界初の技術が採用された。それが、必要な場所に必要な材質、板厚を適用するためにいったんは素材を切断し、曲線レーザー結合ののちにプレス成型するという技術。従来は板を重ね合わせて厚みを確保していたが、これによって250では異なる鋼板が一枚板となり、軽量でありながらも優れた堅牢性と高剛性が確保されることとなった。

シャシーでは、サスペンションは新型用に新たに開発したハイマウント・ダブルウィッシュボーンをフロントに、トレーリングリンク車軸式をリヤに採用。電子制御減衰力可変サスペンション「AVS(アダプティブ・バリアブル・サスペンション)」が進化し、減衰力切り替えの応答性が速く、可変幅が拡大するリニアソレノイド式を採用することによって、ハンドリングと乗り心地の高い次元での両立を目指している。また、スイッチ操作でフロントスタビライザーのロック/フリーを切り替えることができる「SDM」をトヨタ初採用。これにより、オフロードではサスペンションが独立して動けるようにロックをオフにし、より高度な悪路走破性と乗り心地を実現。オンロードではロックすることで、高速域などでの操縦安定性の向上が図られる。モーグルなどで肝となるタイヤの浮きづらさは、プラドに比べて標準で10%アップ、SDM装着車はさらに10%アップとなっている。

4WDシステムは、センターデフにトルセンLSDを採用し、前後のトルク配分をコントロールするフルタイム4WD。オフロード走行時に6つのモードから路面状況に応じた走行支援を行う、最新のマルチテレインセレクトや、低速での安全な一定走行を叶えるクロールコントロールも備えている。

パワートレーンは全体で5機種ある中から、日本向けには2・8ℓの直列4気筒直噴ディーゼルターボエンジンと、2・7ℓの直列4気筒ガソリンエンジンが選択された。以前クローズドのオフロードコースで試乗した時と同様に、今回の舗装された公道での試乗もディーゼルモデルだ。この「1GD-FTV」エンジンは超高圧で燃料を燃焼室に直接噴射する電子制御式コモンレールシステムを採用し、応答性がよくパワフルで信頼性が高いのが特徴だ。組み合わせるトランスミッションは電子制御8速AT+シーケンシャルシフトマチックで、低回転の太いトルクをスムーズに引き出し、高回転ではパワフルさを実感できる伸びやかな加速フィールを引き出してくれる。定期的にアドブルーの補充が必要となるが、低騒音・低振動・低燃費にも定評がある

ラダー車とは思えぬほどの静かなキャビンに驚き

公道ではこのパワートレーンがどんなフィーリングなのかはもちろん、視界や取り回し性能、高速道路を含めた安定性や乗り心地といったところもチェックしたい。まずは市街地から走り出すと、最初こそ大きなモノが動き出す感覚が強めだが、すぐにそれはパワフルさからくる安心感と、どっしりと路面を捉えながら走る悠々とした一体感へと変わる。オフロードコースの時には、同じ条件で300や70と乗り比べたこともあって、250は300と比べると軽快感が際立ってカジュアルな印象を受けたのだが、今回は250単体での試乗ということもあるのか、カジュアルというよりは落ち着きと上質感の方が勝る印象だ。

ただ、300ではまるでクラウンに乗っているかのようなソフトかつフラットな上質感だったが、250はそうではなく路面からのインフォメーションはしっかりと伝わってくる。凹凸があれば振動が入り、ガタガタといった音もわりと大きめに聞こえてくるところがある。でもそれが不快な振動や音かというとそうではなく、「今、こういう路面を走っているのだ」と判別するために必要な振動や音だと感じられるところが、高いオフロード性能を持つクルマでオンロードを走っている特徴であり、魅力でもあるのではないだろうか。そして速度がのってくるとボディ全体で揺れるような、クルマというより海の上でクルーザーに乗っているような錯覚をおぼえることがあるのも、さすが名前の由来である「陸の巡洋艦」を思わせる。

さらに驚いたのは、街中でも大きさが気にならないほどの扱いやすさ。これは開発当初から、ボディサイズが拡大したとしてもプラドより取り回し性能をよくしたいと、フロントサスペンションを作り直したり、ショートオーバーハング化するなどの工夫を重ねた成果だという。

先代のプラドと比べると、車内への音の侵入も減少し、段差の乗り越えのコツコツ感も大きく抑制している。オンロードの快適性が高まったことでプレミアムモデルらしい魅力が大きく増している。
2.8ℓ直噴ディーゼルターボは204PS/51.0kg・mを発揮。1600回転前後からトルクが盛り上がっていく扱いやすい特性もあって、オンロードでもキビキビと走ってくれる。
ディーゼルゆえに回して味があるタイプではないが、アクセル入力に対する反応も良好で、速度コントロールも巧み。ビッグトルクがもたらす余力の恩恵は、高速走行時でも実感できる。
プラットフォームは最新TNGA世代のGA-Fシャシーを採用。防振制振対策が施されたこともあって、操舵感覚はひと昔前のラダー車とは比べものにならないほどしっかり感がある。

オンでもコントロールに優れるすっきりとしたステア感覚

ステアリングフィールも素直で扱いやすいのだが、今回、これまで本格クロカンでは難しいとされてきた電動パワーステアリング(EPS)をランクルとして初採用している。これによって路面の凹凸などから生じるキックバックを低減し、スッキリとしたステアリングフィールを実現。低速時の取り回し性能もアップさせているという。確かにオフロードでも、300や70とは明らかに異なり、モーグルなどでもスイスイと思い通りに操作できることに感心していた。オンロードでもそれは変わらず、交差点やカーブでの操作感がとくに自然で安心感が高い。300は油圧制御でも切り遅れるような感覚は少ないが、70ではちょっとタイトなカーブなどで、あらかじめ予見して切り始めておかないと間に合わなくなりそうなシーンもあり、ステアリング操作が忙しくなることが多い。その点、250はとてもリラックスして操作できる。

また、高速道路ではACCを作動させてみると、加速は控えめで少し物足りなく感じたが、ブレーキングの腕前はかなり高く、急な割り込みをされた際にも自然な減速で怖さをまったく感じなかった。これは300の時にタイムラグが気になるという声が多く、250はEPSにしたこともあって直結感にこだわったのだという。任せておいた方が乗り心地もよく、安心だと思えるACCへの進化を実感した。

今回は試乗できなかったが、ガソリンモデルでは低・中速域でギクシャクしないよう、各種セッティングをやり直したというから、今後の試乗が楽しみだ。250のオフロードでの実力の高さに続き、オンロードでも取り回しの良さ、自然で安心感の高い操作感に魅了されたのだった。

タフさとモダンな雰囲気を融合した新鮮味溢れるスタイリングを採用。全長は4925mmと先代プラド(4760mm〜)よりも大きくなっている。もはや300系(4965mm〜)との差も僅かだ。
物理スイッチも残したキャビン設計は、使いやすさにこだわるりランクルらしい美点のひとつ。サードシートは少し小ぶりだが、最大7名乗車まで対応。低めに位置するインストパネルのおかげで視認性も良好だ。
サードシートは少し座面が沈み込む前倒式で、セカンドシートは前方にタンブルすることも可能。格納時に段差が生じない設計を採用する。リヤドアは小物の積載に便利なバックドアガラスハッチを採用している。
タイヤはオールテレーンのダンロップ・グラントレックPT22(サイズ265/60R20)を装着。マットグレーの20インチアルミホイールと組み合わされる。
ルーフレールはレジャー用品の装着が便利な穴あきタイプ。ZXはスライド式のムーンルーフが標準装備となる。
ステアリング奥のメインメーターは12.3インチカラー液晶。表示タイプは12パターンの中から選択することが可能。
コンソール上のディスプレイは12.3インチ。車載ITは、ナビが内蔵されているディスプレイオーディオプラスとなる。
この記事の画像を見る

この記事はいかがでしたか?

気に入らない気に入った

内外出版/月刊自家用車

ライタープロフィール

内外出版/月刊自家用車

オーナードライバーに密着したクルマとクルマ社会の話題を満載した自動車専門誌として1959年1月に創刊。創刊当時の編集方針である、ユーザー密着型の自動車バイヤーズガイドという立ち位置を変えず現在も刊行を続けている。毎月デビューする数多くの新車を豊富なページ数で紹介し、充実した値引き情報とともに購入指南を行うのも月刊自家用車ならではだ。

この人の記事を読む

オーナードライバーに密着したクルマとクルマ社会の話題を満載した自動車専門誌として1959年1月に創刊。創刊当時の編集方針である、ユーザー密着型の自動車バイヤーズガイドという立ち位置を変えず現在も刊行を続けている。毎月デビューする数多くの新車を豊富なページ数で紹介し、充実した値引き情報とともに購入指南を行うのも月刊自家用車ならではだ。

この人の記事を読む

img_backTop ページトップに戻る

ȥURL򥳥ԡޤ