新車試乗レポート
更新日:2018.11.30 / 掲載日:2014.12.18
フォルクスワーゲン ポロ 試乗レポート(2014年12月)

最大の関心事である安全と燃費を大幅に改善
一段と端正になった顔つきが印象的な新型ポロだが、より重要なのは中身の進化。とくに、安全メカの進歩は、大きな話題を提供するものだ。
具体的には、ミリ波レーダーを使う自動ブレーキシステムの「フロントアシストプラス」&「シティエマージェンシーブレーキ」を新たに搭載。万が一の事故の際に二次被害を最小限にとどめる「マルチコリジョンブレーキシステム」や、「ドライバー疲労検知システム」とあわせて全車に標準化したのだから、商品力を大幅に向上させたことになる。
加えて、エコの能力も進化させている。そのカギを握るのは、SOHC2バルブからDOHC4バルブにヘッドを一新した新しい1.2L TSI(直噴ターボ)ユニットだ。従来型ブルーモーションのJC08モード燃費値は21.2km/Lだったが、これを22.2km/Lに改善している。
なら、走りの性能はどうだろう。DOHC化というと、ストレートに高性能をイメージする人が多そうだが、じつは性能は105馬力/17.8kgmから90馬力/16.3kgmへと低下した。すかさず「なんで!?」というツッコミの声が入りそうだが、2タイプを設定する1.2L TSIのうち、日本仕様は110馬力のハイパワー型ではなく、90馬力の高効率型をチョイスしたためだ。
気になるのは動力性能の変化だが、たしかに高速道路をハイペースで走行する際などには、パワーダウンを実感させられることになる。しかし、市街地走行を中心とする日常の場面では、まったくと言っていいほど性能低下を意識させない。自然吸気1.6Lに匹敵する16.3kgmのトルクを、1400から3500回転の広い範囲に渡り生み出すのだから、当然のことと言っていい。

これまでより変速やクラッチミートが上手になった7速DSG(いわゆるDCT)との絶妙な連携プレーにより、軽快かつ頼もしい加速フィールを提供してくれる。さらに、スタート/ストップシステムやブレーキエネルギー回生の作動も、よりスムーズさを増した印象がある。
ちなみに、今回の改良では燃費改善を目的として、ステアリングのアシスト機構を電動油圧式から電動式に変更している。一般的な例としては、ステアフィールの悪化を心配するところだが、期待どおりにVWのやることには抜かりがなかった。
滑らかなステアリングの切れ味や、自然な戻りのフィーリング、そしてきれいに据わる中立の落ち着きやナチュラルな反力は、電動パワステとは気づかせないほどの仕上がりだ。「スッ」と動き出して「ピタッ」と収まるレーンチェンジのリニアな挙動や、思いどおりのラインをトレースして、S字の切り返しもきれいに決めるハンドリングの感覚は、電動パワステを採用するコンパクトカーとは思えないほど洗練されている。
加えて、乗り心地も一段と洗練度を高めた印象だ。段差をきれいに吸収し、うねりをきれいにいなすサスのしっとり感は、ひとクラス上のモデルさえ凌ぐレベルにある。長時間や長距離のドライブでも疲労が少ないのは、安心感のあるドライブフィールと快適な乗り心地のおかげ。「コンフォートライン」のネーミングが、見事なまでにはまっている。
スポーティさを求める人には「ブルーGT」という選択があるのだから、「コンフォートライン」はこうしたしっとりテイストがベスト。新たに設定された「アップグレードパッケージ」を選択すれば、装備の充実度も文句なしだ。優等生キャラをより強固にしたポロは、今後もBセグのベンチマークであり続ける。
文●森野恭行 写真●内藤敬仁
問い合せ フォルクスワーゲン カスタマーセンター 0120-993-199
Detail Check

グリルや前後のバンパーに加えて、前後のランプ類の造形も新しくした。でも、相変わらず全長は4m、全幅は1.7m以下に収まる。
コックピット
コックピット
ステアリングはゴルフシリーズのゴルフVIIと共通の新しいデザイン。メーターの造形やナビシステムも一新し、質感と機能性を一段と高めた。アップグレードパッケージは、新採用のリヤビューカメラやオートエアコンを標準で装備する。
インテリア
インテリア
飽きのこないシンプルなデザインと、高いつくり込みのレベルを特徴とする内装は、いかにもVW車らしい。パッケージ効率も優秀で、大人4人が無理なく座れるキャビンスペースを確保する。
ラゲッジスペース
ラゲッジスペース
定員乗車時の容量は280L。6対4分割ダブルフォールディング式の後席をたためば、952Lにまで拡大できる。
エンジン
エンジン
DOHC4バルブヘッドを採用した新しい1.2L TSIユニット。JC08モード燃費値を約5%改善した。
タイヤ
タイヤ
タイヤサイズは185/60R15 84H。アップグレードパッケージはアルミホイールを標準で装備する。
レーダーセンサー
レーダーセンサー
レーダーセンサーを活用したアダプティブクルーズコントロール(ACC)を新たに設定したのも注目点。
マルチコリジョンブレーキシステム
マルチコリジョンブレーキシステム
事故の被害を最小限にとどめるマルチコリジョンブレーキシステムは、エアバッグの作動と連動するもの。
主要諸元:フォルクスワーゲン ポロ TSI コンフォートライン アップグレード・パッケージ(7速AT・DSG)
全長×全幅×全高 | 3995×1685×1460mm |
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ホイールベース | 2470mm |
トレッド前/後 | 1455/1445mm |
車両重量 | 1130kg |
エンジン | 直4DOHCターボ |
総排気量 | 1197cc |
最高出力 | 90ps/4400-5400rpm |
最大トルク | 16.3kg m/1400-3500rpm |
サスペンション前/後 | ストラット/トレーリングアーム |
ブレーキ前/後 | Vディスク/ディスク |
タイヤサイズ前後 | 185/60R15 |
全国メーカー希望小売価格(発売 2014年月8月25日)
TSI コンフォートライン(7速AT・DSG) | 223万9000円 |
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TSI コンフォートライン アップグレードパッケージ(7速AT・DSG) | 249万5000円 |
ブルー GT(7速AT・DSG) | 283万5000円 |
Body Color
■サンセットレッドメタリック ■リフレックスシルバーメタリック ■トフィーブラウンメタリック ■コーンフラワーブルー ■ディープブラックパールエフェクト □ピュアホワイト ※ほか3色。 |
人気のブルーGTもレベルアップを果たした

トップバッターのコンフォートラインに続いて、1.4L TSIを積む「ブルーGT」も新型に切り替わった。パワーを140馬力から150馬力に強化することで、走りのよさをさらに強化したのが見どころだ。しかも、気筒休止のACTを採用することで、JC08モードで21.5km/Lという優秀な燃費値も達成している。