新車試乗レポート
更新日:2024.06.25 / 掲載日:2024.06.25
美しさに見惚れるSUV【ランドローバー・レンジローバーヴェラール】【九島辰也】

文●九島辰也 写真●ユニット・コンパス
そもそもデザイン性の高いレンジローバーの名前が付くモデル群だが、その中で一際目立っているのがヴェラールである。発表は2017年3月、ロンドンにあるデザイン・ミュージアムでワールドプレミアされた。場所からしてデザインにかなりこだわっているのがわかる。流れるようなフォルムは同カテゴリーのSUVとは一線を画すだろう。イヴォークのローンチの時もそうだったが、このクルマもまた相当話題となった。
見るものを圧倒するヴェラールの世界観

そのヴェラールの2025年モデルに試乗した。最新のラインナップは3種類のパワーソースで構成される。2リッター直4ディーゼルターボのマイルドハイブリッド(D200)、2リッター直4ガソリンターボ(P250)、それと2リッター直4ガソリンターボをベースにしたプラグインハイブリッド(P400e)だ。試乗車はそのプラグインハイブリッドモデル。ダイナミックHSE P400eだった。
ヴェラールの特徴は前述したデザインに他ならない。レンジローバー然としたスタイリングは見る者を圧倒するし、押し出しの強いマスクとエアロダイナミクスを考慮したボディパネルがその系統であることをアピールする。フロントフェンダー後方からドアまで伸びるアクセントもそんな味付け。このあたりにアクセントを入れるのはもはやレンジローバー系列のアイコンとも言えるだろう。フロントグリル上のRANGE ROVERのロゴもそう。この手法を取り入れているブランドはまだ少ない。
驚くほどすっくりとまとめられたインテリア

インテリアもこのクラスでは標準以上の高級感とクオリティを持つ。メータークラスターをフルデジタルにしたり、センターモニターを大型化したりすることで先進性を高めている。ギアのセレクトレバー以外スイッチ類がないセンターコンソールには驚くであろう。ある種ミニマムなデザインがそこにある。それにステアリングホイールに使われるピアノブラックの高級感はさすがだ。こういった素材を使うことで上質感をドライバーに与える。
とはいえ、センターモニターの使い勝手はいいとは思えない。デザイン優先で見た目はいいのだが、直感的にスッとは動かせない。この辺はデザイン優先の功罪があるかもしれない。今後デジタルプラットフォームがさらに進化すれば解消されることだろう。



加速は格上のレンジスポーツ並み

では実際の走りだが、走り出してすぐに思ったのは外から見ているより扱いやすいこと。全長4820mm、全幅1930mmは決してコンパクトではないが、エクステリアのボリューム感はそれ以上。レンジローバーまでとは言わないが、レンジローバースポーツくらいの存在感はある。が、実際はひと回り以上サイズダウンしている。これはちょっと得した気分だ。
走りに関しても同じ印象。加速時の105kW電動モーターアシストがかなり力強いので大きなエンジンを搭載しているように思える。3リッターV6ターボかそれ以上。シグナル青からの初速もそうだし、高速道路での追越しもそうだ。グイッとモーターがアシストする。が、現実には2リッターユニット。これはドライバーにとって燃費の面からも都合がいい。
それじゃドライバーはモーターを強く感じるかといえばそうではない。テストドライブとしてそこに意識を持っていくのとフツーに走るのでは違う。その意味ではモーターのセッティングがよくできていて、自然なフィーリングに仕上がっている。
乗り心地は精緻にダンパーの減衰圧をコントロールしているのか、かなりいい。ここにもしっかり高級感がある。もちろんレンジローバーのエアサスまでは届かないが、何が高級感で、どうセッティングすれば上質な乗り味になるかを知っているのが大きい。その意味ではトップレンジにウルトララグジュアリーカーを持っているブランドは強いだろう。目指す指標が明確だからだ。装着されていたタイヤサイズは前後265/45R21。銘柄はミシュランのLATITUDEツアーHPだった。この辺のチョイスもまた素晴らしい。乗り心地の快適性に振ったいいタイヤだ。
それにしてもスタイリッシュなヴェラールだが、これを成立させているのはドライブトレインのレイアウトであることを付け加えておこう。通常インバーターやリチウムイオンバッテリーを床下に積むパターンが多い中、このクルマはインバーターをフロントギアボックス下に、バッテリーをリアタイヤ後部に設置している。要するに床下が上がって全高が高くなるのを防ぐためだ。そんな工夫があるのもヴァラールの特徴。このデザインの影にいろいろな苦労があったようだ。