新車試乗レポート
更新日:2024.03.20 / 掲載日:2024.03.18
ミニマルな感じがクールなボルボの電気自動車専用モデル【ボルボ EX30】

文●九島辰也 写真●ユニット・コンパス
北欧のカーブランド、ボルボは安全性や環境対策に早くから力を入れてきた。厳しい自然環境を有する国土において、人の命の重さや自然と共存する難しさを肌で感じてきたからだ。地球の温暖化が氷河を溶かし生態系が変わるところを目の当たりにしているのだから、そうなるのは当然のことに違いない。
よって電動化への着手は早く、内燃機関を持たないBEVへの移行を積極的に進めている。2030年にすべての新車をBEVにする目標は今なお掲げている。
電気自動車専用として開発されたEX30

そんなボルボのラインナップに新たなBEVが加わったEX30である。これまでのXC40リチャージとC40リチャージに続く3番目のモデルだ。ちなみにXC60リチャージやXC90リチャージに代表される60シリーズと90シリーズの“リチャージ”はエンジンを持つプラグインハイブリッドなので、そこはお間違いなく。同じ呼び名でもパワーソースが異なる。
では“リチャージ”の呼称を持たないEX30はどんなクルマなのかを一言で表現すると、BEV専用設計となる。つまり、今後EX30に内燃機関を搭載したモデルが追加されることはない。
専用設計の利点はご想像の通り。バッテリーパックを効率的かつバランスよく床下に並べられる。ガソリン車の四駆のようなセンタートンネルは必要ないし、エンジン音や振動をブロックするファイアウォールにもそれほど気を使わなくてすむ。

そんなEX30のボディサイズは4235×1835×1550mmとなる。全高は日本からのオーダーで機械式駐車場におさまるようつくられたそうだ。それ以外にもサイズの優位性は高く、街中の移動や駐車場で臆することはない。とても扱いやすい。スタイリングは前後のLEDライトの造形に個性をもたすが、それ以外はシンプル。ミニマルなフォルムで清潔感を出している。アート系、デザイン系、ファッション系の仕事に就いている人にウケそうだ。
驚くほどにシンプルなインテリア

インテリアはさらにシンプルでちょっと驚く。縦型のセンターモニターはガジェットをそのまま置いたようだし、気がつけばメータークラスターがない。「こんなにシンプルでいいの?」って感じだ。ただ、新型MINIカントリーマンもそうだが、この手法は一つのトレンドになると思われる。助手席まで含めてダッシュボード全面をモニターにするか、メータークラスターを無くしてセンターモニターだけのシンプルなつくりにするかどちらかだろう。もちろん、ドライバーの必要な情報はセンターモニター上部に表示されるのでご安心を。





その他ではルームミラーに続いてドラミラーの枠がなくなった。技術的には難しそうだが、この方が見た目がスタイリッシュ。デザインの勝利と言いたい。が、欠点がないわけでもなく、ミラー調整をモニターの階層内に入れたことで操作が複雑になってしまった。この辺は「過渡期あるある」。スイッチ類を減らした結果の産物だ。いずれ誰かがいい解決方法を思いつくであろう。
動力性能は最高出力272ps、最大トルク343Nmを発揮する。ユニークなのはそれをリア駆動で走らせること。高速時のコーナなどクルマの挙動が楽しく感じる。ここはニクイ演出。きっとこの後フロントにモーターを置いたAWDのハイパワー版も追加されるだろうが、FRっぽいこのクルマの存在価値は高そうだ。
EX30の走り、ワクワクするところと、もうちょっとなところ

なので、走った印象もその通りで、駆動しない前輪を操舵するハンドリングは軽快で楽しい。しかも高速コーナーでは駆動輪となるリアが踏ん張っている感じがクルマ好きのハートをワクワクさせるはずだ。パワステのセッティングもグッド。低速で軽くスーッと操舵できる。ただ、街中での中速域はそんな魅力をスポイルする。少しボディの重さが感じられ、軽快さに欠いてしまう。この辺は今後の課題かもしれない。
乗り心地に関しては、このサイズのクルマにしては20インチは大きすぎる気がした。路面の状況にもよるが、細かいピッチングを拾うからだ。もう少しインチダウンした方が、乗り心地が良くなって中速域の動きに軽快さも出るだろう。XC40リチャージのあのすっきりした動きを思い出すと、まだまだ期待はできる。EX30のポテンシャルはもっと高いはずだ。