新車試乗レポート
更新日:2024.02.25 / 掲載日:2024.02.20

【スズキ スイフト】魅力はそのまま、燃費と運転支援がレベルアップ

文●工藤貴宏 写真●ユニット・コンパス

 何を隠そう、スズキ・スイフトはクルマ好きの間では「走りのよさ」から一目置かれる存在。2004年のデビュー以来、世界で累計900万台も売れた人気モデルです。

 そんなスイフトがフルモデルチェンジで5代目に進化したので試乗してきました。

進化のポイントは燃費性能と運転支援装備の充実

スイフト HYBRID MZ

 まず今回のフルモデルチェンジにおける進化のポイントをお伝えしておきましょう。わかりやすいのは時代の要求による燃費の向上。燃費性能は全体が底上げされたことで一時期のようなユーザーからの過度な要求は減りましたが、かわりに脱炭素の観点からメーカー内の平均燃費を高める必要が生じているのです。新型のマイルドハイブリッドFF車(CVT)のWLTCモード燃費は24.5km/Lで、従来モデルに対して16%もアップしています。1割以上もよくなるって、ちょっと聞き間違いかと思うほどのレベル。そのくらいスゴいんです。

スイフト HYBRID MZ

 そんな燃費アップの切り札は新開発エンジン。1.2Lの排気量はそのままに、さらなる高効率を求めて従来の4気筒から3気筒となりました。一般的に気筒数を減らすとロスが減って効率が良くなる傾向にあります。もちろん、エンジンをアシストして燃費をよくするマイルドハイブリッドも引き続き組み込まれています。

 それから運転補助機能と先進安全機能の進化。

 たとえば最上級グレード「ハイブリッドMZ」は電動式のパーキングブレーキをスズキの小型車としてはじめて採用しました。スズキ車としては「ランディ」が先行し、スズキ生産車としても軽自動車「スペーシア」のほうが一足早く発売されたのですが、小型車ではこのスイフトが同社初です。

 そのメリットは運転操作をサポートしてくれること。まず電動式のパーキングブレーキは、力を必要とせずスイッチ操作で確実にブレーキを作動させられるし、軽い力で解除できる操作上のメリットがあります。また、信号待ちなどでブレーキペダルから足を離しても停止状態を保持できる「ブレーキホールド」を利用できるのも魅力。これ、一度使うと手放せなくなる超便利機能です。

スイフト HYBRID MZ

 それに、高速道路における渋滞も楽になります。理由は、ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール=高速道路でドライバーがアクセルやブレーキを操作することなく前を走るクルマに合わせて速度を自動調整してくれる機能)に渋滞時の停止保持機能が追加されるから。渋滞するとクルマが勝手に停車しドライバーの操作なく停止状態を維持してくれるのだから、これまた便利です。

 電動パーキングブレーキは最上級グレードだけの採用ですが、これが備わったことでスイフトの魅力が大きく高まったと感じているのは筆者だけではないでしょう。

 先進安全機能に関してもシステムが刷新され、レーダーの検知エリアもカメラの画角も拡大。それもあって交差点での出会いがしらの衝突回避支援機能や、交差点右左折時の対向車や曲がった先の横断歩道を渡る歩行者との衝突回避支援機能も追加されています。昨今は多くのクルマに搭載が進んでいますが、バック時に障害物へ接近するとブレーキをかけて接触を防ぐ後方の衝突義骸軽減ブレーキもうれしいですね。これで、バック駐車時の事故を防げる可能性が大きく高まるのです。

小柄なボディによる使いやすさはそのままに、開放感が増した

スイフト HYBRID MZ

 さて、そんな新型スイフトのスタイリングの印象は「ちょっとフランス車的なお洒落ハッチバック」。そう感じるのはきっと、筆者だけではないことでしょう。従来は躍動感を強調したスポーティなテイストでしたが、新型はフロントもサイドのデザインも水平基調を軸としたもの。ヘッドライト上部までバンパーと一体化し、高い位置にボンネットフードの仕切り線があるデザインはけっこう独特の雰囲気を持っています。正直なところ、初見はこの仕切り線に違和感を覚えるかもしれません。何を隠そう筆者もそうでした。でも、すぐに慣れて愛嬌を感じるようになってきたことをお伝えしておきましょう。本当です。

スイフト HYBRID MZ

 インテリアも、先代に比べて開放的になりましたね。たとえばインパネ。ドライバーを取り囲むようなレイアウトや筒形のメーターは「ドライバーのための空間」という感じでした。しかし新型は水平基調デザインとして開放的に。よりリラックスできる空間となっていることは間違いありません。ナビのスペースも高くなり、画面が見やすくなりました。

 となるとなかには「先代の良好だった操作性が……」と心配する先代ユーザーがいるかもしれませんが、そこはご心配なく。エアコン操作パネルは相変わらずドライバーが手を伸ばせば簡単に届く位置にあるし、センター部分をドライバー側へ8度(先代は5度)傾けたことでナビ画面も含めた視認性や操作性は良好。そして驚いたのがインパネ右端にあるエンジンスターターボタンの位置で、多くのクルマのようにハンドルの影に隠れることなく、しっかり見えるのです。細かいことですが、こういうのって大事ですね。ユーザーのことを考えてクルマを作っているなと実感します。

 ちなみに、車体の基本骨格は先代から受け継いでいることもあり、前後席間距離をはじめとする空間的な居住性は先代と同等。同等といえば全長や全幅も先代と変わっていませんが、開発者によると「Bセグメント(大きめのコンパクトカーのクラス)として小さめで、それが『運転しやすい』と好評をいただいています」とのこと。ライバルと比較する際は、そんなことも頭の片隅に置いておくといいかもしれません。ちなみにスイフトは先代に続き新型も、日本向けだけは海外仕様に比べて幅が狭い設計。5ナンバー枠(海外には存在しない)に収まるよう配慮されているのです。

走らせて感じるスイフトらしいしっかり感

スイフト HYBRID MZ

 ところで、走りはどうなのか?

 先代までのスイフトはドイツ車みたいな芯のある走りが特徴でした。そして見た目もそれを表していたのですが、新型は見た目がそうではなくなってしまったから走りも……なんて考えながら走り始めたら……おや?

 しっかりドイツ車っぽいのです。まず、車体が硬い。正確に言えば体感として堅い感じがする。いわゆる「剛性感の高さ」ってやつがなかなか好印象です。

 そのうえサスペンションはちょっと締め気味で、乗り心地は少し硬め(乗り心地が悪いというまでのレベルではなく少し前のドイツ車っぽい芯のある感じ)。それもあって、ハンドリングは素直かつキビキビとスポーティだから、運転していてしっかり楽しいんです。

 高速安定性の高さもドイツ車みたいで、なかなかのもの。というわけで多少見た目のテイストが変わった新型でも、スイフトの走りは嫌いを裏切ることなくやっぱりスイフトでした。

 ちなみに3気筒エンジンは4気筒に比べると振動や音の質感で劣るというのが一般的です。ですが、新たに3気筒を採用したスイフトではそのあたりは気になりませんでした。それも好印象です。

 細かい振動やザラザラとした感触もなく、音もアクセルを踏み込んだ時に「そういえば3気筒だったな」と感じる程度。4気筒から3気筒へのガッカリ感は、よほどのマニア以外は心配しなくていいと断言できます。それよりも、多くの人は燃費向上というメリットを歓迎できるのではないでしょうかね。

 走りでいえばもうひとつ。CVTのフィーリングも高く評価したい部分。CVTにありがちなアクセル操作に対する反応の悪さはなく、「これって本当にCVTだっけ?」と思うほどのダイレクト感。アクセルオンに気持ちよく反応してくれるのが、優れた感触の理由でした。

 そして走り好きにとってうれしいのは、MTの設定。いま、日本におけるMTシェアは1%ほどと言われ、昨今はMTをやめる車種が増えています。しかし新型スイフトは中間グレードの「HYBRID MX」だけとはいえMTも選択可能。新型スイフトが販売される欧州やインドではMTの需要があるとはいえ、日本でも一部の好きモノのために残してくれたのはうれしいところです。

オススメグレードは?

スイフト HYBRID MZ

 そんなスイフトのグレードは、ベーシックな「XG」、中間でトランスミッションはCVTのほかMTも選べる「HYBRID MX」、そして上級グレードの「HYBRID MZ」と3タイプ。「XG」は安い価格設定が魅力ですが、エアコンがマニュアル式だったり内装の仕立てが質素だったりとマイカーとするには少し寂しいところ。ならば中間の「HYBRID MX」……といくのが自然な流れですが、実はそこから25万円弱のアップで装備が充実する「HYBRID MZ」が魅力。ディスプレイオーディオ(スマホを接続すればナビアプリをカーナビとして活用できる)や電動パーキングブレーキ、そして乗車間にスマホ操作でエアコンを作動させられる(=リモコンエンジンスターターと同等の機能)機能を持つスマホ連携機能などが組み込まれることを考えれば、ファーストカーとしてはこのグレードが選びたくなります。

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工藤貴宏(くどう たかひろ)

ライタープロフィール

工藤貴宏(くどう たかひろ)

学生時代のアルバイトから数えると、自動車メディア歴が四半世紀を超えるスポーツカー好きの自動車ライター。2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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