新車試乗レポート
更新日:2023.08.05 / 掲載日:2023.08.05
【レクサス RCF】いまだからこそ大排気量V8エンジンを味わう【九島辰也】

文●九島辰也 写真●レクサス、フェラーリ
アルファロメオのプレゼンテーションでこんな話を聞きました。「2024年にBEVの発売を開始し、それ以降近未来BEVのフルラインナップを構築します」と。ついにアルファロメオにもピュアEVの波は押し寄せたようです。
すでに完全BEV化を宣言しているのはボルボやベントレーが頭に浮かびます。比較的小規模メーカーの方が柔軟に対応できるのでしょう。彼らは早くからBEV専門メーカーの狼煙を上げました。メルセデスも同じような宣言をしていますが、会社としての規模やマーケットシェアが大きい分いろいろハードルはあるようです。この辺はヨーロッパの社会情勢や各国の政治の動向に注力する必要があります。大規模メーカーが一気にBEV化して消費者がいっせいに充電したら電気が無くなりました、ではすみませんからね。BEV化は電力供給、インフラ設備と一緒に考えなくてはなりません。
とはいえ、かなりの台数がBEVになり、それ以外はプラグインハイブリッドやハイブリッドになる可能性は高いまま。ガソリンエンジンやディーゼルエンジン単体のクルマはほぼ皆無になると思われます。これらのユニットが積まれても何かしろモーターが付随します。

となると、内燃機関単体をパワーソースにするクルマを新車で買えるのは今しかありません。今ならまだほとんどのメーカーがそれらをラインナップしています。こうなりゃいっそ12気筒エンジンなんてのもワルくないかもですね。ベントレーやアストンマーティン、フェラーリあたりがラインナップしてくれています。まぁ、どれもそう易々と買えませんが。

なんて話をするには理由があります。レクサスから久しぶりにRC Fをお借りしたからです。レクサスではLCに次ぐ2番目に好きなモデル。なんたって両者には自然吸気の5リッターV8ガソリンエンジン車がラインナップされます。当然モーターは付いていません。
大排気量自然吸気エンジンには思い入れがあります。そもそもクルマに興味を持ち始めた頃からの憧れで、同世代の多くの若者がいつかは手に入れたいと願っていました。12気筒や8気筒のスーパーカーが頂点だった時代。まさに“雲上クルマ”といっても過言ではありません。
それはともかく、RC Fの走りは楽しさ満点。アクセルを踏み込んだ時のパワーの出方、エンジン音、加速Gに思わず口元がニヤけます。「おー、この感覚しばらく忘れていたなぁ」って感じ。EVの加速とは別物です。ドライブモードは「スポーツ」か「スポーツ+」じゃないとダメ。このクルマの美味しいところを味わえません。メータークラスターに表示される瞬間燃費が1リッターあたり7キロを切りますが、それを上回る楽しさを提供してくれます。そこはお金に代えられませんね。RC Fの醍醐味です。

それに今回のRC Fはパフォーマンスパッケージという嬉しいオマケ付きでした。グラム単位での軽量化や空力特性にこだわったモデルです。目を引くのはカーボン製のボンネットやリアウィング、フロントスポイラー、リアディフューザーなどなど。パッと見で尋常じゃない走りを予感させます。足元もそう。マットブラック塗装の鍛造アルミホイール、カーボンセラミックブレーキとF専用の赤く塗られたブレーキキャリパーは本物の証。レース活動からのフィードバックを強く認識します。
実際に走らせるとまさにそうで、加速の楽しさと共に強力なストッピングパワーに驚かされます。これだけの制動力があれば安心してアクセルを踏めるってこと。それはイコール安全性の高さを表しています。なるほどこうでなきゃ5リッターV8エンジンを隅から隅まで楽しむことはできません。
ただネガティブポイントがないわけではありません。長い間フルモデルチェンジしていないのでインターフェイスは前時代的で、メータークラスターもフルデジタルではないんです。CDを挿入する場所がありますから。1455万円って価格を考えると早くどうにかしないと……。
ということで、内燃機関オンリーのパワーソースにこだわってみてはどうでしょう? ポルシェ911の次期型にもモーターが積まれるようですし。大腕振って楽しめる時間はそうたくさんあるとは限りませんぞ。