新車試乗レポート
更新日:2022.06.17 / 掲載日:2022.06.17

【アルピーヌ】新型A110を箱根で楽しむ【九島辰也】

文●九島辰也 写真●アルピーヌ

 世界最高峰レースF1に詳しい方はご承知でしょうが、昨年からルノーF1チームはその名称を改め、アルピーヌF1チームとして参加しています。それまでルノースポールが中心となって活動してきたモータースポーツ部門をアルピーヌに統合したからです。

 それじゃアルピーヌって何者?てことになりますよね。市販車はA110だけだし、そんなにすごい技術を持っているの?と疑問が湧きます。

 ただ、その生い立ちを知ると納得することでしょう。スタートは1955年、ルノーの市販車をレースバージョンに改造するところから始まりました。有名なのは初代A110。1970年代初頭、モンテカルロラリーで好成績を上げ話題を呼んだモデルです。ミニやランチアフルビア、911ナローの次の世代あたり。ちなみに、ルノーの傘下に入ったのは1973年。株式の譲渡で正式な子会社になりました。アルピーヌV6ターボが誕生したのはそこから10年後くらいかな。ですが、1995年には一旦アルピーヌは途絶えることになります。

 でもって2017年、新生A110が姿を現しました。初代をモチーフに見事に復活させた感じです。初代A110はクラシックカー業界でも何度か見たことがありますが、うまい具合にオマージュしています。事実、初代オーナーの友人も興味津々でした。

そして今回さらに進化し、それとともにグレード変更が行われました。

 これまでは252psのA110ピュアとA110リネージ、292psのA110Sでしたが、新型は252psのスタンダードと300psのA110GT、A110Sとなります。1.8リッター直4ターボはコンピューターチューンでパワーアップが図られました。

 そんなA110GTとA110Sを箱根ターンパイクでテストドライブしたのですからたまりません。終始ニコニコ。世界的なテーマパークへ行くよりも断然楽しい時間です。走りが楽しいクルマは格別ですね。

 何がそんなに素晴らしいかというと、軽快な走りに尽きます。新型はアルミパネルをふんだんに使い軽量ボディを維持しています。A110GTで1130kg、A110Sで1120kgですから立派。で、そのメリットは大きく、クルマは連続するコーナーをヒラリヒラリと軽快に向きを変えます。ステアリングはどんな状況でもニュートラルステアでナチュラル。パワステの反力がステアリグフィールを邪魔したり、下りのブレーキングで大きな質量がリアから襲ってきてステアリングをブレさせることはありません。

 A110GTとA110Sは乗り味を変えているのもユニークなポイントです。ダンパーの減衰圧、バネレート、アンチロールバーの剛性を変えて個性を出しています。具体的には、フレンチテイストを残すA110GT、かなりレーシーに降ったA110Sといったところでしょう。よって、前者は少しのロールを許しますが、後者はピタッとロールを抑えます。ともに箱根ターンパイクを走るのには文句なしですが、個人的にはA110GTのフランス車らしい足捌きが好みでした。コーナーを駆け抜ける楽しさが止まりません。

A110 ヴェール サンドルメタリック

 クルマのデザインもやはりいいです。このスタイリングをカッコ悪いという人はほとんどいないでしょう。完成度の高いデザインはモデルチェンジできないのが難点ですが、無理にする必要はないですよね。ボディカラーやホイール、ブレーキキャリパーの色で自分らしさをアピールすればオーケー。オプションカタログの“ヘリテージカラー”は見飽きません。ヴェール サンドルメタリックに惚れ込みました。1960年代の雰囲気がプンプンします。ホイールは黒、いやゴールドですかね。キャリパーはライトグレイかな……。

 それはともかく、日本はアルピーヌにとって大事な国なのは確かです 母国フランス、ドイツ、英国に続く世界で4番目に売れている国ですから。販売店も今年19ヶ所に増える予定で、世界で2番目の多さになるそうです。となると、今後ますます台数は増えるかも。ドイツ車に散々乗ってきたらたまには趣向を変えてアルピーヌなんてのもいいですよね。まぁ、値段はそれなりですが、クルマ好きの皆さまでしたら、一生に一度所有したいクルマリストに入る気がします。

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九島辰也(くしま たつや)

ライタープロフィール

九島辰也(くしま たつや)

外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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