新車試乗レポート
更新日:2023.06.05 / 掲載日:2023.06.05

新型クラウンスポーツ先取り試乗! 大人のプレミアムカジュアルな走りと内装をチェック

シン・CROWN第2章始まる!

話題モデルをいち早くインプレッション

TOYOTA 新型クラウン スポーツ“先取り”魅力研究

昨年2022年7月に4タイプのシリーズ展開を発表し、世界をアッと驚かせた新型クラウンの衝撃は鮮烈だった。その皮切りとなったのが現在大人気のクロスオーバーだが、幸運にもかねてから噂になっていた第2弾「スポーツ」にいち早く試乗できる機会を得た。4月末の富士スピードウェイ、ショートコースでその実力の片鱗を体感した!

●文/川島茂夫 ●写真/奥隅圭之、トヨタ自動車株式会社

クラウン スポーツ
HEV(4WD) 2023年秋頃発売予定
PHEV(4WD) 2023年冬頃発売予定

クラウン スポーツ(プロトタイプ)先行試乗リポート&紹介

今回試乗できたのはPHEVのプロトタイプのみだったが、上質感あふれるスポーティな走りは新時代のスポーツを語るにふさわしいものだった。

未だかつてない新境地のクラウン! 新しいファン層の獲得間違いなし

爽やかな走りが楽しめるカジュアルなクラウンだ
 今回はプロトタイプだったが、注目の「クラウンスポーツ」にいち早く触れる機会を得たことで、新しいクラウンシリーズの狙いが明確に見えてきた。

 懐古趣味の発想と言われてしまいそうだが、六代目のボディ形式は商用仕様を除いても4タイプも用意されていた。時代とともに整理されゼロ・クラウン以降はセダンのみの設定となってしまった。そう考えると新型クラウンシリーズは歴史を振り返ったとも言えるのだが、ユーザーニーズの多様化に即したバリエーション展開は逆にとても今風でもある。

 ならば「スポーツ」は何に相当するか。2ドアHTあたりの後継と捉えてもいいかもしれない。

「クロスオーバー」に対して全長を220㎜、ホイールベースを80㎜短縮。全高は20㎜高く、プレミアムコンパクトに近いプロポーション。要するに小さく見えるパッケージングを採用しているわけだ。しかもクーペ+ワゴンのシューティングブレークのようには見せないスタイリング。上級プレミアムのセオリーを覆すような外観が特徴的だ。

 絶対値としてのサイズは決して小さくないが、わざわざ「2BOX」にする理由を想像してみた。思いつくのは前席優先モデル。この辺りが「2ドアHT」に喩えた理由だ。ならばいっそクーペにすればとも思うが、それでは遊び方が限定される。リヤドアやリヤゲートは2名乗車を基準として色々と遊ぶための可能性だろう。

 外観の印象ではキャビン長が長い「クロスオーバー」のほうがキャビン実用性に勝るように思える。確かに後席のレッグスペースの余裕は「スポーツ」よりもあり、荷室奥行きも多少大きい。しかしそれは「スポーツ」の実用性を否定するほどではない。反対に荷物の積載性は「クロスオーバー」を上回る。3BOXタイプのクロスオーバーは積載荷物の高さが制限され、奥深いところへ積み込む作業性も悪い。「スポーツ」はハッチバックとしては標準的な使い勝手だが、大きい2BOXの余裕でミドルクラスのワゴンくらいの積載性を確保。積み降ろしもしやすい。

 二人でレジャー用品を満載して出掛けるのもよし、気の合う仲間達と悠々ドライブを楽しむにもよし、色々と使い回しが利くのが2BOX。もちろんファントゥドライブも遊びの要素ではあるが、マニアックな走りや高性能をひけらかすタイプではないようだ。

 新型クラウンで高性能と言えばターボ+パラレル式のデュアルブーストだ。「クロスオーバー」にはラインナップされているが、今回は試乗会場にもティザーサイトにも情報は無く、HEV(スプリット式)とPHEV(同)の構成。正式発表時あるいは追加設定のお披露目も可能性はあるが、どうも当初は前記2タイプのパワートレーン設定となりそうだ。

 全車E-Fourとの組み合わせになるが、スペック的にはクラウンシリーズの性能代表にはならないはず。スポーツカジュアル的なスポーツ感覚とすれば納得。気軽に楽しむのが狙いなのだ。

 というわけで試乗に望んだわけだが、試乗車はPHEV。「クロスオーバー」にPHEVの設定はないので、クラウン初のPHEVとなる。ちなみに同系PHEVの重量増をハリアーで見ると約200㎏になり、「スポーツ」も同様だろう。また、HEVとPHEVではモーターの出力が異なり、これも「クロスオーバー」やハリアーのスペックから推測すれば電動系最高出力は50‌kWくらいHEVを上回る計算になる。あるいはエンジンもパワーアップしているレクサスNXに近いスペックとなる可能性もあるが、いずれにしてもPHEVの重量増をカバーして余りある出力が備わっているはずだ。

 実際に試乗した印象でもPHEVの重量ハンデは意識しない。瞬発力よりも滑らかな加速の立ち上がりなのはトヨタのスプリット式の特徴あるいは意図的な制御であり、大負荷域でもアクセルペダルコントロールに従順な加減速反応を示す。微妙なコントロールに気を使わずに済むのはスポーツドライビングでも強味になる。

 フットワークも重さを感じさせない。E-Fourの駆動力配分やAVS、DRSの秀逸な連携プレーの結果と思われるのだが、操舵中心に加減速を加えたラインコントロールが実に素直。余分な挙動なく緩やかな舵角の増減や加減速に応じて滑らかにラインを変えていく。多少荒っぽい操舵やペダルワークでも均して滑らかに繋いでくれるのが頼もしく、その安心感が楽しむ心を盛り上げてくれる。

 ただし、切れ味とか路面を掴むような接地感には乏しい。微妙なルーズさがあるというか、前記した粗い運転も綺麗に纏めてくれる懐深さの裏返しでもある。もちろん細かな挙動まで神経を使っていては精神的な負担が大きい。気軽に楽しくというのが「スポーツ」。熱血系というより爽やか系で色々楽しく使い回せるのがクラウン スポーツというクルマ。こんな楽しみ方のできるクラウンは未だかつてなかった。これは期待大だ!

新型クラウン スポーツ/ドライブインプレッション


クラウン スポーツPHEV(プロトタイプ)
■主要諸元(開発目標値)
●駆動方式:4WD
●全長:4710㎜
●全幅:1880㎜
●全高:1560㎜
●ホイールベース:2770㎜
●タイヤサイズ:21インチ
●定員:5名

これぞプレミアム! 洗練された走りが大人のスポーツにふさわしい
 動力性能については他のトヨタ系PHEVの傾向から想像していた通りで、滑らかでリニアな出力特性で扱いやすい。スペックは未公表だが、ハリアーPHEVと比べると多少加速が伸びやかに感じられた。意外だったのはフットワーク。基本操安性は「クロスオーバー」に準じているが、サスの動き出しや収まりの感覚が向上し、繋がりもより滑らかになっていた。一言でまとめれば「洗練度」のレベルが格段にアップ。微小な揺れ返しや負荷変動が均され、安心感も操りやすさも向上。すっきりとした操り心地の良さが大人の「スポーツ」といった感じだ。

しなやかなフットワークで走りが爽快。品の良いスポーツ性能を楽しめるのが魅力だ。プラグインモデルの重さを感じさせないパワートレーンの味付けもちょうどいい。
富士スピードウェイのショートコースでテストドライブ。回り込むタイトターンやハードブレーキングも多いが、路面からの入力をうまく往なす味付け。懐の深さを感じさせる。

新型クラウン スポーツ/エクステリア&インテリア

クラウン スポーツHEV(プロトタイプ)
■主要諸元(開発目標値)
●駆動方式:4WD
●全長:4710㎜
●全幅:1880㎜
●全高:1560㎜
●ホイールベース:2770㎜
●タイヤサイズ:21インチ
●定員:5名

新感覚デザインの注入で新時代のクラウンをアピール
 八代目クラウンのキャッチコピー「いつかはクラウン」は、クラウンの位置付けを示すだけでなく、クルマが「ステータスシンボル」であること強く示していた。今となってはステータスシンボルという言葉はピンとこないかもしれないが、これを「プレミアム」に置き換えれば納得してもらえるだろう。

 十六代目となるクラウンは、SUVにカテゴライズされるクロスオーバーからスタートしたが、これに続くシリーズ第二弾モデルとして投入されるのが、今回取り上げるスポーツだ。トヨタのカテゴリーとしてはクロスオーバーと同様にSUVであり、彼らは「新しいカタチのスポーツSUV」と主張している。

 実車を見てもサイドシルの高さは、クロスオーバーとほぼ同じ。前後のバンパー下は切り上げられ、ホイールアーチ周りにはクラッディング処理が施される。巧みな艤装と加飾を加えることでよりSUVらしさを演出されており、クロスオーバーと同様に新鮮味のあふれるスタイリングに思える。

 4710㎜の全長に全高は1560㎜。キャビン高を高くしない低全高パッケージを採用している。リヤオーバーハング部のボリューム感を抑えたデザインのおかげもあって、遠目に見ると2BOXにも見えるプロポーションだ。

 デザイン面で印象深いのはフロントマスクの造形。ヘッドランプのように見える細長い「コの字」型のランプは、デイライト兼フラッシャーであり、ヘッドライトはバンパー下方のダミーインテークに開いた丸穴の奧に配置される。パッと見ではフォグランプのようだが、これがヘッドライトだ。

赤を巧みに用いるキャビンカラバリは独自展開の可能性大
 キャビンまわりは、現時点ではプロトタイプということもあって詳細は不明だが、インパネ周りの基本造形はクロスオーバーとほぼ同じに見える。ただしスポーツは、トリムが赤に配色され、特別なモデルであることを主張していた。

 レザートリムはセンターアームレストからドアへと連続する一体感のあるレイアウト。運転席と助手席をくっきりと分けるようなアシンメトリーデザインとなっている。運転席まわりは各種ディスプレイが機能的に配置される最近のトレンドに沿ったもので、ドライバーと同乗者の空間共有が阻害されるイメージもない。ドライバーにも、同乗者にも、それぞれのポジションで寛げるキャビンだ。

インパネまわりの基本造形はクロスオーバーと共通だが、赤黒のアクセントを付けることで、スペシャリティモデルであることを主張。レーシーな雰囲気が強まっている。
ドアトリムやダッシュボードまわりは鮮やかな赤配色を採用。
コンソールのスイッチ類の配置はクラウンクロスオーバーと共通。操作性に優れるエレクトロシフトマチックが引き続き採用される。
ステアリング奥には12.3インチのカラーメーターを配置。多彩な表示が可能なマルチインフォメーション機能も備わっている。
コンソール上端には12.3インチのメインディスプレイが配置。上級グレードには高機能ナビ機能も備えるディスプレイオーディオプラスが用意されるはずだ。
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内外出版/月刊自家用車

ライタープロフィール

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オーナードライバーに密着したクルマとクルマ社会の話題を満載した自動車専門誌として1959年1月に創刊。創刊当時の編集方針である、ユーザー密着型の自動車バイヤーズガイドという立ち位置を変えず現在も刊行を続けている。毎月デビューする数多くの新車を豊富なページ数で紹介し、充実した値引き情報とともに購入指南を行うのも月刊自家用車ならではだ。

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