新車試乗レポート
更新日:2023.03.17 / 掲載日:2023.03.14

新型ZR-V長距離試乗!次世代ハイブリッドの実力を徹底検証!

HONDA 新型ZR-V 500㎞ドライブリポート

2023年4月21日の正式発売まで2か月を切ったが、それに先駆けてZR-Vの実力を確かめられる機会がやってきた。1日で500㎞も走ったロングドライブは山あり谷ありのなかなかの長丁場。ここまで走ると下手なクルマだと疲れ果ててしまう危険もあるが、ZR-Vにとってはそんな心配はまったくの杞憂。むしろもっともっと乗りたくなってしまったほどの実力モデルだったのだ。

●文:川島 茂夫 ●写真:澤田 和久

“乗るほどに良さが分かる” 稀有なスポーティSUVの実力に脱帽!

高速適性は期待以上。
本格ツアラーとしても優秀
 ホンダの主力ハイブリッドシステムであるe:HEVは、シリーズ式をベースにエンジン直動機構を備えることで、高速巡航時にはパラレルハイブリッドとなるのが特徴。シリーズ/パラレルの両システムを柔軟に使い分けるシステムを採用している。
 その本領を発揮するのは省燃費性能の向上にあるが、e:HEVは省燃費を最優先とせずに動力性能も重視した特性を持たせており、これがZR-Vの走りに深みをもたらしてくれる。
 今回は500㎞を超える長距離試乗を行ったこともあり、ドライブモードを最も燃費に優しいECONにセットしていたのだが、どの速度域においても、もたつくような印象はなく、アクセルを浅く踏み込んだ程度でも力強く加速してくれる。SUVのサイズ感や重量を意識させないパワーフィールの良さを実感することができる。
 だからといって、微妙な負荷変動がかかるケース、例えば高速巡航時に勾配に差し掛かった時の速度のコントロールが神経質というわけでもない。巡航速度を維持することを目的としたアクセルコントロールも容易で、大して気を使わずに済む。この傾向は一般道や山岳路でも同様であり、必然的に動力性能の余裕としてドライバーに伝わってくる。

運転支援制御も巧み。
余計なストレスは皆無
 高速道路ではACCを積極的に使ってみたが、ACCは設定速度と車間距離に忠実で、前走車がいなくなれば設定速度まで加速するし、前走車に追い付けば減速もする。燃費の面では多少制御が多くなるため不利になるが、一般的なACCと比較すると急な加減速は控え気味で好感を覚える。疲労軽減という面でも積極的に使いたくなるタイプだ。
 それは操舵支援のLKAでも同様で、車線内の位置取りも厳密すぎない。細かな操舵補正は抑え気味で、ふんわりと中央付近を維持するイメージ。位置取りよりも周囲とのバランスを優先した印象で、補正とあまり喧嘩せずにステアリングを保持できる。
 ちなみにACC/LKAの作動状況はメーター内のインジケーターに表示される。あまり凝視するわけにもいかないが、大まかな車間距離や車線内の位置取りも確認しやすい。実利的な部分はないにしても、これもクルマとの信頼を高める要点といえる。

乗る人を選ばない
抜群のフットワーク性能
 フットワークはZR-Vのキャラクターをよく現していると改めて実感できた。硬柔で評価するならスポーティを意識させる硬めのサスチューン。大きめの横Gや高速での旋回の安定とコントロール性を求めるタイプであり、SUVとしてはオンロードの操縦安定性を強く志向している。
 ただ、ドライバーに乗りこなしを求めるようなマニアックさはない。どちらかと言えば誰にでも扱いやすい特性で、操舵に対する追従性よりも、思い通りのラインへの乗せやすさを重視している。操舵の初期から反応遅れは少ないが回頭や横Gの立ち上がりは滑らか。挙動の収束性も良好で、挙動を抑えるための修正舵はほとんど必要としない。この傾向はタイトターンや高速コーナリングでも同様で、操縦特性が大きく変化しない。どんな状況でも、いつもの感覚で同じように扱える。
 冬期ということで試乗車にはスタッドレスタイヤが装着されていた。スタッドレスは操縦安定性と乗り心地の面ではマイナス要因になるのだが、以前試乗したノーマルタイヤを装着した車両と比べると、初期反応が若干ダル気味になる程度。ほとんど同じと考えていい。許容度が高いというかタイヤの特性に依存しないというか、ここでも懐深さを感じられる。
 ちなみに硬めの乗り心地も不快な印象を感じさせないタイプ。短いサスストロークの中に腰があり、しなやかな動き出しで収束はスムーズ。路面の段差乗り越えも「ダンッ」ではなく「グイッ」という感じでストレスを感じにくい。良質な硬さはロングツアラーに求められる重要な資質のひとつだろう。
 ちなみに今回の長距離試乗で、裏テーマとして気にしていたのは実燃費がどれほどになるのか、という部分。一般路/高速/山岳路、さらに渋滞や撮影のための非効率的な走りも含めて500㎞強を走破したが、実燃費は16.76㎞/ℓだった。WLTC総合モード燃費は21.5㎞/ℓなので22%くらい下回っているが、楽して楽しむものがレジャードライブでもあり、そのメリットの対価としてこの燃費は十分にお得な結果と思う。
 動力性能も、フットワークも、実用燃費も、高いレベルでまとめられていることがZR-Vの魅力。ミドルSUV選びの主役になりうる1台であることを再確認できた。

HONDA ZR-V e:HEV Z(4WD)

価格:411万9500円
■主要諸元(ZR-V e:HEV Z 4WD) ●全長×全幅×全高(㎜):4570×1840×1620 ●ホイールベース(㎜):2655 ●車両重量(㎏):1630 ●パワーユニット:1993㏄直4DOHC(141PS/18.6㎏・m)+モーター(135kW/315Nm) ●トランスミッション:電気式無段変速機 ●WLTCモード総合燃費:21.5㎞/ℓ ●ブレーキ:ベンチレーテッドディスク(F)/ディスク(R) ●サスペンション:マクファーソン式(F)マルチリンク式(R) ●タイヤ:225/55R18
市街路や山岳路では電動がメイン。モーター駆動ならではの分厚いトルクを素早くコントロールできることもe:HEV車の強みのひとつ。ターボ車も悪くないが、負荷の強まる路面状況ではe:HEV車の方が扱いやすい。
サスペンションは硬めだが、路面当たりがガツンと来る印象はなく、衝撃をサスの動きでいなしてくれる味付けが強い。全体的にスポーティ寄りの走りだが、乗員快適性も考慮したロングドライブを苦にしないタイプになる。
2ℓのe:HEVは現行シビックから採用された第2世代がベース。ZR-VではSUVボディの車重増に対応すべく、低中速域の力強さを意識した制御が施されている。
上級グレードのZ系はパネルなどの加飾処理がなかなか巧み。さらにソフトパッドを多用するなど、高級感の演出も抜かりなく注がれる。純正ナビシステムのホンダコネクトディスプレイは標準装着されるなど、価格に見合った装備水準を持つことも美点のひとつ。
荷室床面と開口部の段差を抑えることで積載性を高めていることも、日常生活で便利に感じる部分。6:4分割式の後席シートは格納時はフラットになるなど、実用性能にも配慮した一面も併せ持っている。

新型ZR-V 最終結論

スペシャリティと実用性のバランスが絶妙。
ミドルSUV選びの中心になりうるモデル

 ゆとり十分の後席設計や、容量の拡大とフラットフロア化を狙ったワンタッチダイブダウンを後席格納に採用するなど、居住性や実用性能もしっかり煮詰めらている。スポーティなスタイリングゆえにスペシャリティ志向のSUVと見られてしまうが、その本質はウエルバランスを意識したモデルだ。
 ZR-Vの“スペシャリティ”と“実用性”の按配の付け方は、走行特性においても同じ。パワートレーンやフットワークは走り自慢とするに十分でありながら、一般ユーザーの実利も考慮している。運転支援機能も同様で、ロングドライブにおいてドライバーの負担を大幅に軽減してくれる。
 ハイブリッドゆえに、欲を言ってしまえばもう少し燃費を上げて欲しいとも思うが、その代わりに安心感や楽しさが目減りするのはもったいない。そういったバランスの取り方も巧みに思える。
 オフロード性能も重視したアウトドア向けのSUVとは言い難いが、ロングツーリングが多いユーザーにとっては最適な一台。ミドルSUV選びにおいて、選択肢から外せないモデルといっていい。

新型ZR-V ベストグレードは?

e:HEV X(2WD)
●329万8900円

 1.5ℓターボ車の良好な加速フィールは捨てがたいが、e:HEV車は扱いやすさと反応の良さで一枚上手。力感も含めてe:HEV車が優位なことは間違いない。1.5ℓターボとe:HEVの価格差はおおよそ30万円ほどであることを考えれば、e:HEVが第一の選択肢になるのは自然だ。
 XとZの差は主に内装加飾や利便装備の違い。全部入り仕様のZは価格に見合った満足度を得られるが、Xでもナビ以外の実用装備はカバーできている。Xにナビを付けるのがコスパ面からオススメだ。

新型ZR-V 主要諸元&装備比較

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内外出版/月刊自家用車

ライタープロフィール

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オーナードライバーに密着したクルマとクルマ社会の話題を満載した自動車専門誌として1959年1月に創刊。創刊当時の編集方針である、ユーザー密着型の自動車バイヤーズガイドという立ち位置を変えず現在も刊行を続けている。毎月デビューする数多くの新車を豊富なページ数で紹介し、充実した値引き情報とともに購入指南を行うのも月刊自家用車ならではだ。

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