新車試乗レポート
更新日:2022.11.10 / 掲載日:2022.10.27

ホンダ「新型ZR-V」日本発売直前の試乗レポート!個性派SUVのスポーティな走りを体験

9月から事前商談が始まった新型ZR-V。
正式デリバリーを前にしてプロトタイプの先行試乗会が開催された。
その走りは予想どおりホンダらしいスポーティなもの。
実力モデルが揃うミドルSUVの中でも十分戦えることを確認できた!

●文:川島茂夫 ●写真:本田技研工業

HONDA 新型ZR-V 先行試乗インプレッション

その走り、ズバリ期待以上!

電動に動的質感をプラス
e:HEVの実力は一枚上手
 CR-Vの後継モデルと目されているが、予想以上にスポーティに感じる。車体寸法はCR-Vより僅かに小さい程度なのだが、見た目は一回り以上コンパクト。スタイリングも引き締まった印象が強い。
 走らせればその印象はさらに強くなる。ひとつはe:HEVの加速性能の良さ。タイムラグをほぼゼロにできることが電動駆動の利点だが、ペダルコントロールに正直過ぎれば、その扱いは神経質になってしまう。その点、ZR-Vのe:HEVは過渡域の制御がとても巧み。俊敏に力強く反応しても滑らかさを失わず、その繋ぎの特性がアクセルの踏み込み量の予測を容易にしてくれる。頭で考えるのではなく、条件反射的に操作しているので、無意識下でクルマと対話しているようにも感じられるのだ。
 そこにエンジン稼働の手応えが加わる。加速時は発電機としてしか機能していないはずなのに、あたかもエンジンパワーで走らせているように回転数等を制御。回転数上昇とともに加速度も高まる高性能エンジンの伸びの良さも再現してくれる。制御の仕組みからして演出になるのだが、これが心地よい昂揚感を生み出す。これもZR-Vの対話感のひとつだ。
スポーティなサスチューン
走り重視の個性派SUV

 繊細なコントロールを神経質にならずに行え、高性能の昂揚感も楽しめる。この特性に安心感をプラスしてくれるのが、ZR-Vのフットワークだ。
 前後左右の急激な負荷変動を抑え、加減速Gや横Gあるいは路面のうねりの変化でも4輪の接地感が大きく変化しない。コーナリングラインの制御や維持に必要な分だけ穏やかに負荷が移動する印象が強い。旋回制動も大きな横Gを受けた状態でもかなり強い制動が可能なため、減速しながらラインを絞っていくのも簡単。挙動を抑えるための修正操舵はほとんど必要としなかった。SUVとしてはトップクラスのラインコントロール性と安定性が両立されている。
 だからといってガチガチに硬めたチューニングではない。柔らかいとも言い難いが、しなやかさと腰を併せ持つ。しっとりした硬さと言い換えてもいいだろう。
 こういった走りの味わいはFFも4WDも大きく変わらない。段差を乗り越えた際の揺らぎ具合は4WD車の方が洗練された印象を受けるが、運転感覚や快適性で大きな隔たりはない。
 ただガソリン(4WD)車はe:HEV車に比べると走りの質が少し低下する。走りの基本特性はe:HEV車と等しく、内燃機車としては優等生といった印象だが、どうしてもパワートレーンの力感に物足りなさを感じてしまう。トルクの立ち上げやダウンシフトによる加速のタイムラグに加え、アクセル踏み込み量に対するトルクも細く、乗り心地でも細かな振動がやや目立つ。e:HEV車の出来栄えが良いだけにどうしても粗が目立ってしまう。
 とはいえ、安心感があり操り心地のよい運転感覚はワインディングや高速道路でのストレス減にも効果的。優れた走りの資質を持つことはファントゥドライブを好むユーザーにも好感を持って迎えられる可能性が高い。
 SUVでもスポーツ&ツーリングの走りにこだわるユーザーにとって見逃せない注目のモデルだ。

HONDA 新型ZR-V 車両紹介

流嶺なスタイルと実用性を
両立させた新感覚パッケージ

 ZR-Vの寸法諸元は未発表だが、カナダ仕様(現地名HR-V)の2ℓ車と現行CR-Vを比較してみると、全長が35㎜、全幅が20㎜、全高が60㎜小さく、ホイールベースは共通。ほぼCR-Vと同サイズだが、フロントマスクやキャビン周りを絞り込んでいるせいか、実車は一回りコンパクトに見える。また、フロントマスクは2017年1月に生産が終了したコンパクトクーペのCR-Zを彷彿させるものであり、ここもスポーティSUVの感を一層強めている。
 しかし、スポーツ性を強化したとはいえ、SUVとしての機能を蔑ろにしたわけではない。キャビンスペースはCR-Vとほぼ同等。ホンダにはヴェゼルというスペース効率の優等生がいるため、サイズのわりに狭い印象もするが、4名乗車時の居住空間はミドルSUVの標準である。
 荷室の平面寸法も同様で、しっかりと実用スペースを確保。加えて、後席格納は左右分割でバックレスト前倒しできる。後席格納時はラゲッジ床面とフラットになるため大きな荷物も十分に積み込める。積載性への配慮も利いている。
 インパネ周りはベルトラインにメッシュの加飾を使用しているせいか、シビックと共通した印象を受ける。計器盤、中央モニター、空調パネルのレイアウトも共通している。ただ、シビックと比べると見下ろし感が強めのデザインであり、視角的な開放感が高まっている。また、フロアコンソールの造形も高さ方向の余裕を活かしたユニークなブリッジ型を採用。フロアコンソール周りはシビックよりも先進的かつ実用的な設計で上質感も高い。オンロードのスポーティカーとSUVの居心地を融合させたコックピットと言えよう。
 スポーティなキャラで選んでも実用性でハンデを負わせないキャビン設計。こんなところにもZR-Vのコンセプトがよく表れている。

ZR-V e:HEV Z(AWD)

パーチカル(垂直)形状のグリルなど個性的なフロントマスクが目を引く。海外仕様とは異なる、日本国内専用デザインが採用されている。
ディフューザー内に配置されるエキゾースドエンドは左右2本出し。クーペスタイルを強調することでスポーティさを巧みに演出している。
撮影車のe:HEV Zのアルミホイールはベルリナブラック+切削加工の18インチ、タイヤはヨコハマ・アドバンデシベルの225/55R18が組み合わされていた。
e:HEV車は、多彩な情報をリアルタイムで表示できる10.2インチ液晶タイプのグラフィックメーターを採用。
コンソールは下部に収納ポケットを備えるブリッジ型。シフトセレクターはスイッチ式、その後端にはドライブモードスイッチが配置される。

ZR-V X(FF)

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内外出版/月刊自家用車

ライタープロフィール

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オーナードライバーに密着したクルマとクルマ社会の話題を満載した自動車専門誌として1959年1月に創刊。創刊当時の編集方針である、ユーザー密着型の自動車バイヤーズガイドという立ち位置を変えず現在も刊行を続けている。毎月デビューする数多くの新車を豊富なページ数で紹介し、充実した値引き情報とともに購入指南を行うのも月刊自家用車ならではだ。

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