新車試乗レポート
更新日:2023.01.20 / 掲載日:2023.01.04

新型トヨタ プリウス先行試乗 乗り味の進化を従来型と比較検証!

スポーティなシルエットを手に入れたことで話題を集める新型プリウスだが、正式発売を前にいち早く2.0ℓと1.8ℓハイブリッド車プロトモデルに試乗する機会が訪れた。従来のエコカー路線から大きく舵を切ったのか? という視点も新型の注目ポイント。詳細なスペックやグレード構成、そして気になる価格などは試乗を行った12月19日の段階ではまだ未公表だが、その走りはどのような進化を遂げたのだろうか?

●文:川島茂夫 ●写真:奥隅圭之

●試乗モデル 2.0ℓハイブリッド(FF) ボディカラー:シルバーメタリック タイヤサイズ:195/50R19

TOYOTA 新型プリウス プロトモデル先行試乗

穏やかで扱いやすい特性は
新型でもしっかりと踏襲

 HEVの強みは省燃費が狙えること。エンジンと電動モーターという異なるパワーユニットを効率よく稼働させて、初めて省燃費が達成される。その象徴的な存在であるのがプリウスだ。
 新型となる5代目は4ドアスペシャリティカーを意識したスタイリングもあって、効率よりも動力性能に軸脚を移したのか? とも思ってしまったが、それは早とちりだった。
 従来型と比べると、急加速時の初期反応の向上とトルクを増やしたことで動力性能の改善が図られたというが、基本的なドライバビリティは大きく変わっていない。
 浅いアクセル開度でのコントロールは良好で入力に対してのタイムラグも少ない。素直かつ穏やかな味付けが強い。ただし、アクセルを深く踏み込んだ急加速時は、最大加速に達するまでにいくらかのタイムラグを感じる。要するに急な踏み込みでの瞬発力は今ひとつ。動力性能に余裕を持たせた2・0ℓ車でもこの傾向は変わらない。
 回転を上げれば上げるほど加速が増していく高性能エンジン車、もしくは間髪入れずの瞬発力が楽しめるBEV、そのどちらかの味を期待していたユーザーにとっては物足りなさを感じてしまうかもしれないが、プリウスとして正常進化した印象だ。

素直なフットワークも健在
乗り心地重視の味付け

 フットワークも見事に「プリウス」だ。フロント周りの横剛性の強化による操舵応答性の改善は、新型のシャシー設計の要点のひとつ。回頭反応や立ち上がりの速さなど切れ味鋭い操縦性を予想していたが、限界前後までコントロールがしやすい、安心感を重視した特性は従来型と変わっていない。
 急減速からのターンインや高速巡航からの急操舵を行っても、後輪はしっかりグリップし、狙ったラインを容易にトレースすることが可能。クルマからの予想外の挙動が少ないこともあって、余裕を持ってドライブすることができる。
 ならば新旧を比較して何処が変わっているのかというと、体幹の強さが相当に進化。高速走行時に強めに操舵を行った際、新型も従来型もほぼ同じようなコーナリングラインを描いていくが、従来型は車体鼻先やロールがそこそこ揺らぐ。しかし、新型は狙ったところにダイレクトに向かう。新型の後に従来型に乗り換えると、従来型は挙動が締まらなく感じてしまう。
 新型はハンドリングの軸が強まった印象。切れ味のような味付けは希薄だが、ドライバーが狙う意図をしっかりと汲み取ってくれる素直さがある。プリウスが積み重ねた走りの味を否定するのではなく、質の部分を継承進化させているといっていい。これまでのプリウスオーナーなら違和感なく馴染めるだろうし、明らかに高まった安心感にホッとするだろう。

E-Four車はパワーアップ
走りの良さで選びたくなる

 さらに4WDのE-Four車の進化も見逃せない。従来型は低速時の発進補助を目的とした、いわゆる生活四駆だったが、新型は高速域まで頻繁に後輪を駆動するタイプに進化している。今回の試乗はタイトコーナーが多いショートサーキットだったこともあって、加速中はほとんど4WDで駆動を行っていたほど。前輪の負担減が利いているのか、加速しながらコーナーから立ち上がる時のラインコントロール性は明らかに良くなっていた。加えて、大きな横Gを受けながらの加速時はリヤサスが程よく沈み込み「4WDはやはり違うな」とも思わせてくれたりする。加減速時のピッチやコーナリングでのロールの収束性もFF車よりも向上していて、走りの質感も上がっている印象。新型のE-Four車は、雪の多い地域のユーザー以外にもオススメできる。
 従来型と比べて乗り心地は硬さで同等、姿勢の抑え方が良くなったことで質感は新型が上という印象。正しい評価はストップ&ゴーが絡んでくる公道試乗を待たなければならないが、乗り味についても従来までのプリウスユーザーが自然に馴染めるタイプといえる。
 見た目は大胆なイメージチェンジを図っても、走りはプリウスのコンセプトを継承。省燃費という美点はそのままにツアラーとしての魅力を高めている。新しいユーザーを積極的に狙っていきたいならば、もっとスポーティに振ってもいいのではと感じるが第一に考えたのは既存のプリウスユーザーなのだろう。従来型で進化した乗り心地や快適性など煮詰める部分はしっかりと煮詰めて、最新モデルにふさわしい良質さを手に入れている。居心地の良いクルマを求めるポストファミリーにとって、魅力的なモデルとなっていた。

こちらは2.0ℓハイブリッドのE-Fourモデル。プリウスは従来型(4代目)でリヤサスがダブルウィッシュボーン式に変わったことで乗り心地が劇的に向上したが、5代目となる新型はその美点を継承進化。荷重がかかった際の微細な振動が少なくなるなど、走りの質が向上している。
新たに追加された2.0ℓハイブリッド車は、熱効率に優れるダイナミックフォースエンジンを採用。エンジン+モーター合算のシステム最高出力は196PSを発揮する。
●試乗モデル 1.8ℓハイブリッド(E-Four) ボディカラー:シルバーメタリック タイヤサイズ:195/60R17
1.8ℓハイブリッド車は従来型を改良したシステムを採用。システム最高出力は140PSを発揮。廉価仕様とはいえない確かな実力と信頼性を持つ。

選ぶべきは1.8ℓハイブリッドか? それとも2.0ℓハイブリッドか?

 両モデルとも詳細スペックは未公表で、エンジン性能からの推測になるが、高熱効率型エンジンを採用する2.0ℓ車は動力性能だけではなく燃費面でも1.8ℓ車を上回る可能性がある。ただ、だからといって2.0ℓ車が買い得とも言い難いのが悩ましいところ。
 仮に価格を1.8ℓ車は従来型と横並びくらいと想定しても、2.0ℓ車は上位設定として相応の価格差が生まれることになる。実用性でのコスパは1.8ℓ車が上回るのは確実だ。試乗した印象でも2.0ℓ車は加速性能の余裕も売りにしているが、1.8ℓ車が物足りないとまでは言い難い。従来型の走り/動力性能で十分満足というならば、2.0ℓ車は割高といえる。価格と性能のコスパを重視するユーザーならば、バランスの良い1.8ℓ車を基本に検討するのが良さそうだ。

2.0ℓハイブリッド車は高効率のダイナミックフォースエンジンを搭載。動力性能でも優位に立つ。0-100㎞/h加速は7.5秒と、下手なスポーティモデル顔負けの速さも手に入れている。
1.8ℓハイブリッド車の0-100㎞/h加速は9.3秒。2.0ℓHEV車のスペックには及ばないが、価格と性能のバランスはこちらの方が上になりそう。発売後しばらくすれば主力モデルになるはずだ。

乗り比べてわかった新旧プリウスの違いは?

プリウス(従来型)

プリウスの美点は新旧で共通
穏やかな魅力がより高まった
 いまやトヨタの乗用車系のほとんどにHEVが設定されるなど、もはやプリウスが燃費世界一でなくても問題がない。従来型はプリウスはどうあるべきかを模索していたモデルだったともいえる。
 もっとも新型も2.0ℓハイブリッドやPHEV車が設定されるとはいえ、1.8ℓハイブリッド車が用意されるなど、明快なコンセプトがあるとも言い切れない。
 ただ新型を試乗して感じたのは、「安堵」という感情。もし見た目どおりのスポーティなクルマになっていたら……、という杞憂もあったのだが、穏やかで誰にでも扱いやすいプリウスの良さがあった。この美点は従来型から受け継がれたもの。だから従来型のプリウスオーナーにも受け入れられる魅力は十分にあるといえる。

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内外出版/月刊自家用車

ライタープロフィール

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オーナードライバーに密着したクルマとクルマ社会の話題を満載した自動車専門誌として1959年1月に創刊。創刊当時の編集方針である、ユーザー密着型の自動車バイヤーズガイドという立ち位置を変えず現在も刊行を続けている。毎月デビューする数多くの新車を豊富なページ数で紹介し、充実した値引き情報とともに購入指南を行うのも月刊自家用車ならではだ。

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