新車試乗レポート
更新日:2022.12.13 / 掲載日:2022.12.13

【ジープ グランドチェロキー】ラグジュアリー路線に進化したアメリカンSUV

文●九島辰也 写真●ユニット・コンパス

 1993年にリリースされた初代グランドチェロキーがそろそろ30周年を迎える。91年に生産終了したグランドワゴニアから新世代ジープとしてバトンを授かったのが始まりだ。87年のAMCとの合併から6年後のこととなる。ちなみに、なぜグランドチェロキーという名前だったかというと、「チェロキーのキャビンの狭さをこのクルマは払拭しました!」というメッセージである。1984年からスタートしたXJチェロキーは人気者だったが、キャビンの狭さ、主に天井の低さがネガティブポイントに挙げられていたのだ。

2列シート5人乗りの標準ホイールベース仕様が追加された

グランドチェロキー(標準ボディ2列シート)

 なんて話はともかく、先にリリースされたロングホイールベースの3列シートを有するグランドチェロキーLを追うように標準ホイールベースバージョンが登場した。2列シートの5名乗車モデルとなる。
 グレードは大きく分けて3つで、パワーソースは2種類を用意する。2リッター直4ターボのガソリンエンジンで駆動する“リミテッド”と、それにモーターを組み合わせたプラグインハイブリッドの“リミテッド 4xe”と“サミットリザーブ 4xe”だ。だが、今回行われたメディア向け試乗会はガソリンエンジンのみの“リミテッド”しか用意されなかった。どうやら近年の半導体不足云々の影響でプラグインハイブリッドは来春まで待たなければならないようだ。
 ここで一応グランドチェロキーLを復習しておくと、そちらのグレードは“リミテッド”と“サミットリザーブ”の2種類となる。そしてパワーソースは3.6リッターV6一本。全長5200mmのフルサイズからして直4ガソリンエンジンのみは無理がありそうだ。とはいえ、今後直4+モーターのプラグインハイブリッドの追加はあり得るかもしれない。燃費を鑑みれば魅力的だろう。その辺に興味ある方はこのクルマに関わるニュースをチェックし続けた方が良さそうだ。

モダンで高級感のあるスタイリング

グランドチェロキー(標準ボディ2列シート)

 では今回のグランドチェロキーの魅力はというと、まずはスタイリングだろう。これまでのデザインを正常進化させながらモダンにかつ高級感を持って仕上げた。堂々としたフォルムを含めヨーロッパのラグジュアリーSUVにも引けを取らない存在感だ。ただ、それなりにサイズは大きくなり、全長は4900mm、全幅は1980mmとなる。冒頭に記述した初代ZJ型グランドチェロキーの全長は4500mm、ワイドは1800mmだったことを思えば、かなりのサイズアップだ。もちろん時代が違うといえばそれまでだが、3つくらいクラスが上がっている。

ヨーロッパ車と比べても見劣りしないインテリアのクオリティ

グランドチェロキー(標準ボディ2列シート)

 そしてそれはインテリアでも感じられる。そもそも内装デザインのうまくないアメリカンブランドだが、そこはFCA時代にイタリア人のデザイン力が入りいい意味でこれまでを裏切るクオリティに仕上がった。これならヨーロッパ車からの乗り換えも不満はないだろう。センターの大型モニターとウッドパネルのダッシュボードの組み合わせは大人の味わいである。もちろんキャビンの広さも満足行く出来栄えだ。

上質感のある走りには納得だが注文も少し

グランドチェロキー(標準ボディ2列シート)

 では走りに話を移そう。2リッター直4ターボユニットは、思った以上に力強くクルマを走らせる。特に、回転数が上がりスピードが乗ってくると過給器がグイッとトルクを発生させ、一段ギアが上がったような加速を見せる。この領域に不満はないだろう。さらにいえば、その時の身のこなしもグッド。堅牢なボディがキャビンを揺さぶることなく、コーナーを駆け抜ける。サスペンションの可動域が広いのか、路面からの入力に対し優しくこなしていく。高級車としての素質は十分にありそうだ。
 ただ、気になる部分もある。それは低速域での走りで、下のトルクが細い分アクセルを軽く踏んだだけではイメージ通りに加速しない。ターボが効き始める前の段階だと、この車重はそれなりに重さを感じてしまうのだ。そこでアクセルをガバッと踏み込むとドッカンターボのような走りになってしまう。時としてそんなシーンも必要だが、もう少し低速トルクのあるしなやかな加速が欲しいところだ。外観がラグジュアリーなだけにそう感じてしまうのかもしれないが。
 それを鑑みると、このクルマの本命はプラグインハイブリッドなのかもしれない。発進時や中間加速でモーターのアシストが入れば、かなり余裕の走りができるであろう。アクセル開度の狭いままジェントルな走りができるはずだ。


 というのが新型グランドチェロキー標準ボディのファーストインプレッション。そもそもジープ好きなだけに歴代モデルを全てチェックしている見地からして、このクルマの出来が素晴らしいことはわかった。あのグラチェロがここまで高級路線になるとは驚きである。会社がFCAからステランティスになって、今度はフランス人の意見も入ってくるからもしかしたらその路線はさらに進むのかもしれない。いずれにせよ、悪路を走破できるのがジープ。その部分のパフォーマンスには信頼を持っていいと思う。

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九島辰也(くしま たつや)

ライタープロフィール

九島辰也(くしま たつや)

外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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