新車試乗レポート
掲載日:2022.09.21 / 更新日:2022.09.22

【試乗レポート トヨタ シエンタ】より使う人にやさしくなったみんなのミニバン

文●工藤貴宏 写真●ユニット・コンパス

 2003年にデビューした初代モデルが大ヒット。2015年に登場した2代目も初代を超える人気を得て、今回登場の3代目も間違いなくヒットするだろう。フルモデルチェンジしたトヨタ「シエンタ」は、見るからに、そして触れても乗ってもそう思わせるクルマです。

新型は車体の大きさを変えずに室内をさらに広くした

トヨタ シエンタ

 そんなシエンタの最大の特徴といえば、3列シートのミニバン(2列車も設定)ながら車体がコンパクトなこと。同じくトヨタのミニバンである「ノア」や「ヴォクシー」の最新モデルに比べると、長さは43.5センチも短いのです。

 狭い道や駐車場でも、運転に苦手な意識がある人でも扱いやすいミニバン。シエンタのキャラクターはそう言い換えてもいいかもしれません。

 「室内は広くした。だけど、車体サイズは変えなかった」という開発のこだわりは、運転のしやすさを求めるシエンタユーザーの気持ちをしっかりと反映したもの。ユーザーの多くは「室内は広いに越したことがない、だけど車体は小さいほうがいい」と考えていることでしょう。

 新型の車体サイズは全長が4260mmで全幅が1695mm。何を隠そう、これは先代と変わっていません。フルモデルチェンジのたびに車体が大きくなるのは自動車の常識ですが、運転しやすさを求めたシエンタはそうではないのです。

 ちなみに、小回りするために重要なホイールベース(前後タイヤの間隔)も先代と同じ。だから最小回転半径は5.0mとノアの5.5mに比べて50センチも小さく、これも扱いやすさに直結しています。

 いっぽうで、全高は20mm高くしたのは室内空間を広くするため。サイドウインドウも含め側面パネルを先代よりも垂直に近づけ、天井の左右方向を平らにするなど、限られた車体サイズの中で室内を広げる工夫が随所に盛り込まれているのです。

 頭上空間にゆとりが増して、先代から乗り比べるとたしかにスッキリ感が増していることを実感できます。

トヨタ シエンタ

さらに使いやすくなった2列目シート

トヨタ シエンタ

 また、スライドドアは開口幅(670mm)やステップの高さ(330mmとトヨタ車で最も低い)はそのまま、天井付近の高さを60mm拡大(天地高1200mm)。従来モデルを超えた乗り降りのしやすさも新型シエンタの魅力です。大人よりも段差を大きく感じる小さな子供、身体が動きにくくなっている年配の人、そして赤ちゃんを抱っこした親……より使う人にやさしいクルマになりました。

 ところで、新型シエンタのセールスポイントのひとつが2列目シートの膝回りスペースを拡大したことです。フロントシートとの間隔は、最大で従来比80mm(設計位置での前後席間距離1m)となりました。

 でもこれはよくよく考えてみると不思議なこと。なぜなら新型シエンタは従来モデルに対して全長もホイールベースも伸びていないのですから。それなのに1列目と2列目の間隔が広がるなんてどんなマジックがあるのでしょうか。

 実は、2列目シートのスライド調整をより後方へ広げたのです。

 もちろん1列目と3列目の位置は変わっていないので、大きくない車体なので3列目に人が座る際は2列目を前に出す必要があります。「2列目前後スライド位置の調整量が増えた」と考えればいいでしょう。

 つねに3列目に人が乗るような使い方のシエンタユーザーはほとんどおらず、多くの人は2列目まで人が座るパターンが多。シエンタはそんなクルマなのでこの考え方が正解でしょう。

 しかしながら、3列目の居住性も「人が座れないほど居心地が悪い」というわけではありません。たしかにひざ回りの“余裕”は皆無ですが、床に対してヒップポイントを高めとしていることで着座姿勢がよく、また開放感も高いことで1時間ほどなら大人も無理なく座っていられます。シエンタの高効率パッケージングには感心させられますね。

ライバルであるフリードと3列目シートの使い勝手を比べると

トヨタ シエンタ

 ところでシエンタのライバルといえばホンダ「フリード」ですが、使い勝手においてもっとも方向性が違うのが3列目の畳み方かもしれません。

 3列目を2列目シート下へ格納するシエンタ(従来同様)に対して、フリードは左右跳ね上げとしているのです。格納/展開作業で2列目を動かさなくて済むのがフリード方式のメリットですが、いっぽうで畳んだ際に荷室を狭くしたり、斜め後方視界の邪魔になるのが欠点。対してシエンタの床下格納は、まるで消え去ったかのように巧みに収まるので、3列目を畳むことが多いユーザーには適しているといえるでしょう。

 シートといえば、シエンタは3列シート仕様のほか、2列シート仕様も選べます。2列シート仕様の2列目はシート自体が3列車と異なる構造で、「ダイブダウン」と呼ばれる座面自体が沈み込む仕掛けとしたことで、畳んだ際に床が低くフラットな状態になるのが特徴。車中泊などを前提とするユーザーなら、2列車を選ぶのもいいでしょう。実は、新型になって2列車の販売比率が高まっているそうです。

 話は変わってメカニズムの説明をすると、車体の一部は同社のコンパクトカーである「ヤリス」や「アクア」と共通の設計を用いられて作られています。しかし共通としているのはエンジンルーム周辺の車体構造だけで、キャビン付近の床は先代の改良版を組み合わせたもの。いっぽうでパワートレインは全面的に新しく、1.5Lの3気筒自然吸気エンジンを積むガソリン車とそこにモーターを組み合わせたハイブリッドを用意。ニーズに合わせて選べます。

 駆動方式はガソリン車がFF、ハイブリッドはFFと4WDが選べ、後者は後輪をモーターのみで駆動する電動4WDを採用。この電動4WDは低速域を中心に後輪モーターを動かすタイプなので、昨今のトレンドとなっている「舗装路でも4WDのメリットを生かすタイプ」というよりは、滑りやすい道での発進性能に特化した雪国性格四駆といえるでしょう。

ガソリン車とハイブリッドどっちが魅力的?

トヨタ シエンタ

 ガソリン車とハイブリッドを比べた場合、モーターの高トルクによる加速の力強さなどドライバビリティ面ではハイブリッド車が魅力で、静かさや滑らかさによる快適性など同乗者にやさしいのもハイブリッドのメリット。そう考えると魅力的なのはハイブリッドとなり、ハイブリッドの魅力は燃費だけではないことを実感します。

 いっぽう車両価格が安いのはガソリン車なのでコストパフォーマンスを考えるとガソリン車に傾く気持ちもわかりますが、満足度が高いのは明らかにハイブリッドでしょう。

 乗り味は、乗員にやさしい乗り心地が印象的。車体が上下にぶれにくいのが特徴で、ドライバーは運転しやすく、いっぽう同乗者は乗り心地がいいだけでなく酔いにくいはず。そのあたりの仕立ての良さは昨今のトヨタ車に共通する美点ですが、シエンタにもしっかり貫かれていることを感じました。

ライタープロフィール

工藤貴宏(くどう たかひろ)

学生時代のアルバイトから数えると、自動車メディア歴が四半世紀を超えるスポーツカー好きの自動車ライター。2021-2022日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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