新車試乗レポート
更新日:2022.09.13 / 掲載日:2022.09.13
【試乗レポート 日産 エクストレイル】期待をうわまわる完成度に驚いた

文●九島辰也 写真●ユニット・コンパス
エクストレイルが4代目に進化した。型式でいうところのT33である。今回の加わったコンセプトは上質感。確かに、見た目のボリュームが増しクラスがひとつ上がったような気がする。それにフロントの迫力はどこかアメリカンなテイストを感じる。北米で売られている日産ブランドのピックアップやSUVに通じる装いだ。具体的にいうならパスファインダーやアルマーダあたりだろう。ちなみにエクストレイルは北米でローグとして売られている。搭載されるパワーソースはVCターボのガソリンエンジン車だ。
4代目はVCターボを採用したe-POWERで低燃費とパフォーマンスの両立をねらう

では日本における新型エクストレイルの特徴はといえば、第2世代のe-POWER+VCターボが挙げられる。ガソリンエンジンを効率よく使ってモーターで駆動させる日産特有のEVシステムだ。そしてそのメリットはさらに力強くなったモーターによる走り。見かけ同様クラスをひとつ飛び越えたパフォーマンスをみせてくれた。アクセルに対する素早い反応と発進が車格のイメージを超えている。これは高速道路での追い越しやワインディングでのコーナー出口の再加速などで威力を発揮してくれる。ドライビンを楽しもうという気概に対し期待通りの走りだ。
そしてそんな楽しい走りをさらに盛り上げてくれるのが発電機として使われるVCターボ。この1.5L直3ガソリンユニットが加速時のアクセルに対し絶妙な吹け上がりをしてくれる。まるでガソリンエンジンで走っているように車速と回転数がマッチするのだ。

はっきり言って、クルマ好きにとっては今回ここが大きなポイントになる。本来発電機の役目をしているガソリンエンジンはアクセル開度と関係なく始動と休止を繰り返して当然だが、それがうまくシンクロしているのだ。個人的にかつてこの部分を指摘したことがあったが、ここまでしっかり仕上げてくるとは思わなかった。日産技術陣のこだわりと成果といえるだろう。お見事である。
それじゃ終始スポーティな走りをするのかといえば、そうではない。ドライブモードをセレクトすればいかようにも使える。デフォルトは「AUTO」で、高速の追い越しやワインディングは「SPORT」でOKだ。でもって燃費を稼ぎたい運転をする時は「ECO」にすれば良いのだが、個人的にはこれがデフォルトでもいいくらいに思えた。シビアなアクセルワークを必要としないマッタリしたこのモードが街中では合いそうだ。
さらにいうと、今回ワインディング部分は路面がウェットだったこともあり、「SNOW」モードを試した。この方が電子デバイスの介入が早くなるので安心してアクセルを踏めるからだ。結果、その読みはズバリ的中。それほど神経質にならずに走れた。特性をよく知って場面でいろいろ使ってみることをオススメする。新たな発見があるかも。
新採用の「e-4ORCE」は緻密な制御でコーナーもスムーズに走れる

乗り心地に関しても新型は期待を上回った。日産が中心となり3社のアライアンスで開発されたボディは剛性が高く、サスペンションを柔らかくセッティングすることを可能にしている。ボディ剛性は従来比40%アップ、サスペンション剛性は55%アップとなる。リアをマルチリンク式にしたことからもお金がかかっていることをおわかりいただけるであろう。
新型エクストレイルの駆動方式はFWDと4WDがあるが、後者も新しくなっている。e-4ORCE(イーフォース)と呼ばれるのがそれで、前後モーターとブレーキを統合制御することで4輪の駆動力を精緻にコントロールすることを可能にする。基本的には直進はフロントメインで駆動するが、コーナーをスムーズに走るのに必要と検知されればリアにトルクが介入する。アンダーステアを消してオーバーステア方向へ持っていく感じだ。最近の4WD車はアクセルを踏んでオーバーステアになる傾向が増えている気がする。
といった新型エクストレイルは総じて好印象だった。エクステリアデザインとインテリアの上質感、それと走りにおいてクラスを超える。特にVCターボの仕上がりはグッド。開発陣のひとりが「エンジンは黒子なんだけど主役なんです!」という意味がよくわかったテストドライブだった。













